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異世界アイスクリームおばさん  作者: フクキタル
第2章「バージンロード」
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第2章「バージンロード」第27話

遅くなって大変申し訳ございません。

いつもありがとうございます!

終わりのない戦争、そして人々の苦しみ。

その全てを知った時、私はもっとこの世界を知り、そして世界のために何かがしたかったのです。

私は早速フリーン様に相談をしましたが


「この愚か者。お前ごときでこの世界は何一つ変わらん。」


フリーン様の反応は実に懐疑的だったのです。


「二度と私の前であんなバカなことを言うんじゃない。」


今まで一度も私のことを叱ったことのないがフリーン様に初めて自分の決意を避難された時、私はその場で泣き出してしまったのです。

後から来たマリアちゃんとゆうくんは泣いている私と珍しく怒りに真っ赤な顔になっているフリーン様を交互に見ながら少し戸惑ってしまいましたがなんとかあの時の深刻な空気を読んでゆうくんが私と、そしてマリアちゃんがフリーン様と話し合うことにしました。


私を外へ連れて行ったゆうくんはしばらく私が泣き止むことを待った後、何かあったのかを聞きました。

少し時間が経ち、徐々に落ち着いてきた私はフリーン様に明かした自分の意志をありのままで伝えたのです。


「そうだったね。」


話が終わった後、ようやく状況が分かってきたという顔のゆうくん。

夕焼けに染めていく灰色の髪の毛がとてもきれいに見えるゆうくんはそっと私の手を握ってくれて


「どうしてマミはそんなことを考えたの?」


私によかったらそこまで考えたたどり着いた経緯を聞かせて欲しいと言ったのです。


穏やかで頼もしい声。

その声に今まで何度も励まされてきた私はゆうくんならきっと分かってくれると信じて先と同じく何も付け加えずありのままの話を彼に打ち明けることにしました。


国々の戦い。そして魔族の反撃と苦しまれている人達。

私はフリーン様のおかげで自分の素性について知るようになって「魔術師」として生を受けたことにはきっと何らかの意味があるとそう感じました。

魔術師が「帝国」に弾圧を受けたように今も世界のどこかで誰かが同じ思いをしている。

もし魔術師である私が自ら何らかの足跡を残したら世界はもう一度考えを直してくれるかも知れない。

何より私は


「私は私の子供によりよい世界で暮らして欲しいです!」


将来自分が産む子供に安心して生きられる世界を見せてあげたかったのです。


「偉いね。マミは。」


じっくり私の話を聞いた後、ゆうくんから初めて言ったのは私のことを偉いっていう一言。

この不完全な世界で最も崇高で純粋なその想いを心から尊敬するとゆうくんは私にそう言ってくれました。


「うん。本当に偉い。僕なんかより比にならないほど偉いよ。

僕はマミのこと、心から尊敬する。」


っとその志は誰にでも尊重されるに値すると私の決意に間違いはないと言ってくれるゆうくん。

でもゆうくんは私の意志も尊重しつつ、フリーン様の考えもまた理解できると律儀に彼女のフォローも忘れなかったのです。


「でも彼女はただマミのことが心配になっただけだから。フリーン様はマミのことが大好きで大切すぎて危険な目に遭わせたくなかっただけ。」


客観的で実に現実的な分析。

私自身も決して彼女が私のことが嫌であんなふうに怒ったわけではないということは分かっていましたが当時の私はその異常事態を全部受け入れるにはまだまだ子供だったのです。

でもそんな私と違って子供の頃からずっと大人だったゆうくんはいつでも現実的で冷静な判断ができる人でいつも私を導いてくれて私は幼馴染でありながらずっとそんなゆうくんのことが好きだったのです。


「僕だってマミには危ないことはしないでもらいたい。魔術師は今でも皆に避けられているし魔族だって皆がマリアさんみたいに話が通じる相手ではないから。

人間側に反感を抱えている魔族はいくらでもいるし。実際父さんの商会だって何度も襲われたことがあるし事実上死者も出ている。」


だからできればこのままゆったり、平和的に生きることを選んで欲しい。

ゆうくんだって本当は私に世界のためなんてそんな大層なことはしないで欲しかったのです。


無論ゆうくんの気持ちも、フリーン様の心配も分からないものではありません。

豊かではなくても不足なしの穏やかな田舎での暮らし。

皆で笑い合える素朴な生き方を私に選んで欲しい。

二人が言いたかったのはつまりそういうこと。

でも私はただ私だけのための人生を選ぶわけにはいかなかったのです。


なぜなら私には魔術師という血筋があって将来自分の子供はその血を必ず継ぐことになるから。

もしそうなったらかつて「帝国」による魔術殺しに巻き込まれてしまうかも知れない。

ひいてはその子達のようにこの星に住んでいる皆が世界が産んだ誤解によって傷ついて何度も悲劇を繰り返してしまうかも知れない。

そう思ったら私はようやく自分のやることが見えたような気がしました。


そして私にそう思わせたのが今自分の手を握ってくれている灰色の髪を持った自分の幼馴染であることに気がついた時、


「あ…」


私は顔が真っ赤になってなぜかゆうくんのことをまともに見られなかったのです。


その翌年、ゆうくんの「帝国」行きが決まっていましたがあの頃までなかなか自分の気持ちに素直になれなかった自分。

地味な普通の農家の娘である私と違って大手商会のお坊ちゃんのゆうくんはどこへ行っても大人気。

もし向こうで好きな人でもできたら私なんかはすぐ忘れてしまうと私はずっと落ち込んでいました。

どうせ告白する勇気なんてなくてもしそのままお別れになってしまったら私の夢は、決心はどうなるのか。

そう思ったら急に頭がごちゃごちゃになって涙まで出そうでしたが


「あのね、マミ。」


そんな私の考えが丸見えになっていたのか静かに私の名前を呼んでくれるゆうくん。


「僕がマミに危ないことをやって欲しくないのは全部マミのことが大切だからなんだ。

僕の傍からいなくならないで欲しい。ずっと傍にいて欲しい。

そう思ってしまうくらいマミのことが大切だから。」


そして繰り返して私のことを「大切」と言い続けるゆうくん。

その辺でさすがの私でもそれくらいは気づくことができたのです。


「ゆうくん…!もしかしてこれって…!」


これはまさしく告白の流れであることを。


そして私の予感が確かったということをその次の言葉で確信した自分。

どうしてこんなことになってしまったんだろうっと考える暇もなく取り合った私の手を力を入れてぐっと握りしめるゆうくんは視線を私に合わせてかつて見たこともない真剣な顔でこう言いました。


「でも僕はマミがどんな道を選んでも最後まで一緒にするから。

だから僕と結婚を前提に付き合って欲しい。」


自分の彼女になって欲しいと。


あの時、自分がどんな顔をしたのかあまり覚えていません。

ただゆうくんの一世一代の告白に自分はただ顔が見えないようにうつむいて短く首を縦に振りながら


「はい…」


っと小さな声でそう答えたことだけはなんとなく覚えています。


本当なら自分の方から先に好きって言ってあげたかった。

でもそんなことなんてどうでもいいと思われるくらい嬉しかった自分。

ずっと好きだったのは私一人だけではなかった。

悲しい片思いで済んでなくて良かった。

そう思ってまた泣き出してしまう私のことをゆうくんはしばらくそっと自分の中に抱き込んでくれたのです。


結局ゆうくんは私の肩を持ってくれました。


「マミがそうしたければ僕は全力でマミをサポートする。マリアさんだってきっとそう思っているだろうし私達でフリーン様を説得するよ。」


っとマリアちゃんと一緒にフリーン様を説得することに協力すると約束してくれたゆうくん。


でも


「ダメだ。絶対にな。」


フリーン様は私とゆうくん、後から加わったマリアちゃんの懇願にもびくともしなかったです。


「言ったはずだ。世界のためになんてバカなことは言うなと。

どうしてもやりたいのならこの家から出て勝手にしろ。

その代わりお前がその敷居を跨いた時、お前と私は赤の他人。もうお前に何も教えてやらん。

無論私もこの町から出て二度とお前達の前には現れねぇぞ。」


っと頑なに自分の意志を通すフリーン様。

そのあまりにも固い意志に結局フリーン様との別れだけは選ぶなかった私は二度とその話をしないと約束して彼女の傍にいさせてもらいました。

彼女は私にとってかけがえのない大切な先生だから。

先生との別れを選ぶわけにはいかなかった私は結局自分の意志を曲げるしかありませんでした。


その翌年、ゆうくんが本格的にテニスに打ち込むために「帝国」へ行き、回復できたマリアちゃんも「聖王庁」に一時戻るようになって私も進学のため都会に行くことになりました。

保護者としてフリーン様が同行になってフリーン様のお知り合いの錬金術師の家を借りてやっと初めての都会暮らしを開始することになった私。

何もかもが田舎とは全く違ってまるで遊園地に来ているような感覚でした。

フリーン様も


「マミは料理も上手で一緒にいると色々便利でいいね。凪はもう少しマミの彼氏であることに感謝した方がいいと思うぞ。」

「えへへ…」


私との二人暮らしをそこそこ楽しんでいて随分ご機嫌でした。


それから私が大学に行くまでなんの変哲もない平和な日々が続いていました。


「魔族…?」


その事件が起きる前までは…

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