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異世界アイスクリームおばさん  作者: フクキタル
第1章「アイス、要りませんか?」
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第1章「アイス、要りませんか?」第23話

遅くなって大変申し訳ありません。

この作品は私の気晴らしの一つですがそれを除いてもやはり年初ともなると色々忙しいのであまり手を付けませんでした。

それにただいま新しい仕事をしていてそれの適応のため色々気にしていて毎日忙しい時間を送っていますが皆様の応援に応えるように頑張りますのでこれからも何卒よろしくお願いします。


この作品は前の書いたやつを何個か集めて組み立てた作品です。

なので甘いところも、至らぬところもたくさんあると思いますが何卒ご理解いただければ幸いと存じます。


いつもありがとうございます!

女神「エル」を崇める信仰に基づいて作られた「ルーレンシア」文明。

この地下大墓地もまたその目的で作られていて実際私達がここに着くまで目で確かめてきた全体的な雰囲気もその感じであった。

不気味な墓地という場所にも関わらず宗教的な色彩が濃くてどこへ行ってもあっちこっちが欠けている女神像や彫り物がすぐ見つかってとても牢獄とは思えない。

ここはおそらくあの時の聖職者などの人達が埋まった墓地だとカノンさんはそう説明した。


この世界に勝利と安息、繁栄をもたらすと言われている女神「エル」。

彼女の存在が実在したのか、それともただの人々が作った想像の人物なのかそれは重要ではない。

確かなのは彼女の存在が今までこの世界を、人々の心を何千年も支えているということ。

私はそこまで篤実な信者ではないが自分なりにも彼女に感謝をしている。

もし彼女の存在がいなかったらこの世界はもっと生きづらいところになっていたかも知れないから。


「何…?これ…」


だがあの時、私達に現れたそれに彼女の輝かしい偉業との繋がりは欠片もなくて


「…「ヘイロー」…」


その全く関係ない名前をテラから聞かされた時、


「「魔神」…」


私は自分達の前に立っているこの影のような人影こそ世界に災いをもたらす破壊の兆しということに気がついた。


「「(だいだい)ー氷結」。」


あっという間にあれが振った剣に叩き飛ばされたカノンさん。

だがそのとっさに反撃を仕掛けたカノンさんの能力、「無為」を現象として変換する力「L'Arcー橙」によりその禍々しい人影は一瞬で氷漬けとなって動きを止めるようになった。


ーチリン…


カノンさんが飛ばされた方から鳴り響いたきれいな鈴の音。

壁に弾き返され、何度も繰り返した反響によりこの大きな地下をくまなく埋め尽くしたその音は空気さえ凍らせる冷気となってその一瞬であれの動きを封じ、姿を現せた。


全身をかすめるひんやりとした冷気。

ただ音を鳴らすだけでここまで生々しい冷気が作れるとは。

「オーバークラス」の必殺の虹色魔法、「L'Arc」に触れるのは初めてではないがいつ見てもすごすぎて実感すら湧いてこない。

それだけ「L'Arc」の力は遥かに人知を超えているということであったが


「さて…これ、どうすっかな…」


問題はこの「L'Arc」を食らってもなお蠢いているこの氷の中の人影の方であった。


まるで氷漬けになっているマグロのように動きを止めている黒い人影。

だがその中で未だに感じられる強力な魔力の流れにカノンさんは非常にまずいって顔で氷の中身を見つめていた。


「これ…一応溶岩に叩き込んでも溶けないくらいなんだけど…」


ヤクモさんの力まで借りて全身全霊の力で凍らせたつもりだが未だに中から抜け出そうとしている謎の生命体を見て逆に心が折れそうと少し落ち込み気味のカノンさん。

だがまもなくやがて闇に目が慣れてきて氷の中がはっきり見えてきた頃、私は今の一撃でカノンさんがぶった斬れなかったことに心からほっとするようになってしまった。


ざっと見ても3メートルは超えそうな大きな図体。

全身を包んだ黒い鎧はまるで遠い昔の「帝国」の王が身につけていたもののように威厳が宿っていて実に脅威的に見える。

そして甲の中からひらめいている赤い眼光からは一点の生命力も感じられずただ本能とひたすらの殺意だけが揺らめいている。

その黒い鎧は「騎士」の姿で私達を守るどころか、むしろ凄まじいスピードと勢いで本気で私達を斬り裂くために襲いかかっていた。


その禍々しさには鳥肌が立つほどの恐怖心を感じてしまったが実際カノンさんの魔力の方が勝っているのかその人影は未だに氷の中から抜け出していないが漆黒のようなマントの中から片手で握っているその大きな剣を見つけた時、私はその一瞬でカノンさんの保護呪文が間に合ったことに本当に神様からの慈悲はあるんだなと心から感謝の念を抱くようになった。

もし一歩間違えてしまったら今頃カノンさんの体は真っ二つになってその辺に転がるようになったかも知れないという嫌な想像をした時はあまりにも気分が悪くなって吐き気まで感じたくらいだった。


初めて遭遇した謎の鎧。

単なる「リビングアーマー」にするにはあまりにもありえないスピードと力だったので私達はその存在にいくつかの疑問を抱いてしまったが


「…これは「魔神」だ…」


意外とすぐ出された答えにそれまでの些細な疑問などは一気に吹き飛ばすことができた。

だがその答えに伴った混乱と衝撃は言うようがないほど大きかったため、


「「魔神」…ですって…?」


私達はしばらくあそこから動けなくなってしまった。


「…心配するな…今のこいつは決してあの氷から抜け出すことはできない…」


でも同じ魔神だからこそ持つことができる確信。

テラは至って冷静で落ち着いて私達はそれに対する警戒を怠らずテラの説明に耳を澄ましてこれの今の危険度に関する話を聞くことにした。


「…これは確かにあの「帝国」の初代皇帝…「鋼鉄の王」「ヘイロー」だ…」

「「鋼鉄の王」…」


「帝国」の歴史上、最も偉大で強力だったが誰よりも不幸な結末を迎えなければならなかった悲運の王「ヘイロー」。

偉大なる王から滅びかけた国と苦しむ民を救うために悪魔に成り果てた彼は初代の「魔神」としてたった一人で東大陸を壊滅させ、12人の「オーバークラス」に討伐されて魔書「痛感の書」になって眠ることになった。

初代魔神として甚大な被害を及ぼした「鋼鉄の王」は大した魔法は使ってなかったらしいがこの世にあるあらゆる武具を使うことができて当時には「オーバークラス」以外の手の打ちようがなかったそうだ。


現在「痛感の書」は「帝国」の「中央保安局」によって厳重に保管されていて皇帝と「保安局長」などの極一部の関係者を除けば見物もできなくて、セキュリティのため毎日保管場所を変えていて一般人には一生一度目にすることすることも叶わないらしい。

それには非常に興味が湧いてくるがいざ実物を見たらそんなに嬉しくもないかも…


「…いや…これは極めて本物に似て作った人形だ…」


っとよくできているが決して本物ではないと私に教えてくれるテラ。


「…本物だったら今頃ここの全員はとっくに殺されたはずだ…マミ以外はな…」


テラはもし本物が出たら「オーバークラス」の中でとりわけ強いマミさん以外は全員死んだと言いながら今こうやって全員が無事であることに感謝するようにしろと言った。


「…こいつはしばらく外には出られない…魔神にしては弱くて魔力も微弱…腕力だけならいざしらず今の「オーバークラス」に到底敵いそうには見えん…

手頃なおもちゃと言ったところか…」

「これのどこが弱いっていうのよ…」


っと魔神のテラはこの鎧のことを少しかるんじていたが実際カノンさんはこのおもちゃに殺されかけた。

それが私の機嫌を随分損ねるトリガーになってしまったが


「大丈夫よ、ヤヤちゃん。私、こう見えても結構強いからこれくらいいくらでも対応できるの。」


そんな私のことを安心させるためにカノンさんは自分はこれくらいでやられたりはしないとそう言ってくれた。


「確かにこれのスピードは早かったけどそちらの魔神が話した通り腕力も、魔力もそんなに大したものではない。

私の術式の方がずっと早いし、一応ヤクモ様も付いてるから。」

「カノンにとってこれくらい敵でもなんでもないということだ。だからそんなに心配するな、娘よ。」


依代のカノンさんだけは何があっても必ず守り抜いてみせるというヤクモさん。

そしてれっきとした「オーバークラス」としてその強さを改めて確かめさせるカノンさん。

お二人はもはや単なる体の貸し借りだけをする雇用関係ではないということを私は今の言葉で確認することができたのであった。


「…だがおもちゃとはいえ確かに独特な魔力が感じられる…とするとこれを操っているやつは十中八九「痛感の書」に何らかの繋がりを持っているやつだ…」

「それってもしかして保安局にスパイでもいるってことですか?」


だが並の方法ではここまで完璧な偽物は作れないというテラの話に早速「痛感の書」の保管を委ねられている保安局のスパイの存在にまで考えが至るマミさん。

そこでテラからは何も付け加えなかったがもし本当にそうだったら大事件ということには間違いない。


「…知っている通り魔神は特別な魔力波長を持っていて何らかの関係を持った対象でなければその存在を感知することはできない…

…だがもしそれが解読できてしかもこんな人形まで作れたとすれば…」


っと言い掛けたテラの言いたいことがそろそろ分かってきた私達。

そしてようやくたどり着いたその結論は


「…「ウィッチクラフト」は既に魔神の魔力波長を読み取ることに成功している…]


やがて今の状況で最も絶望的な現実を私達に突きつけたのであった。


人工的な儀式で魔神を生み出そうという計画を目論んでいる「ウィッチクラフト」。

その計画に当たって最も厄介なのは「帝国」と「聖王庁」などの組織も、魔書を集めることでもなく魔神固有の魔力波長の解読であったが


「…よもやここまで計画が進んでいたとはな…少し侮っていたようだ…」


まさかその一大の難題を突破してしまうことにはさすがにテラにも予想外だったようだ。


「…おそらく「御三家」…その中でも「轟」家が秘し隠していた秘密兵器だったんだろう…」

「「轟」…」


「ウィッチクラフト」の要の一つである魔女名門「御三家」。

その中で一番厄介なのは当然あの「(とどろき)ウララ」がいる「轟」家でまともに戦ったらいくら「オーバークラス」がいても全滅されてしまう。

それだけ「轟」の魔女達と普通の魔女の間には格の違いが存在した。

今まではあのイカれたクレイジーサイコレズのウララだけを気をつければいいと思ったがそれはとんでもない誤算であったことに私は今のテラの言葉でやっと気づいてしまった。


「こりゃ思ったより厄介な方向に事が進んでいるね…」


っともはや自分一人で判断するには手に負えないとカノンさんは一旦神社に戻って上司の楠さんに相談する必要があるとここはひとまず引くことにした。


「予想外の異常事態…私はこの仕事が終わったらまず楠さんとサンゴにこのことについて説明します。」

「分かりました。となれば今やることはー…」


テキパキと今の状況を冷静に分析、そして対策まで立てて現在氷の中で動いていないあの黒い鎧の人形を見つめるマミさん。

普段なら絶対見せないマミさんのあの真剣で真面目そうな目は一瞬私の意識を奪い、その場の空気を圧倒した。


「これが本気を出したマミさん…」


触れるだけで潰されそうな威圧感。

いつの間にかマミさんの手に持たれている星の杖、「ミルキーウェイ」を中心にどんどん光が集まってきたことを目にした私は


「きれい…」


気が遠くなってしまうその美しさにしばらくあそこから一歩も動けなくほど見とれていたが


「こっちよ、ヤヤちゃん。」


っと私の手を引くカノンさんの声にやっと気がついたのであった。


「あの人って手加減ないから巻き込まれたら大変よ。」

「手加減って…」


っと彼女の手に引っ張られて壊れた大きな棺の後に隠れた私は


「よく見てて、ヤヤちゃん。あれが歴代「オーバークラス」の中で最強、「オーバーマインド」の力よ。」


今から見るその全てをしっかり見届けなさいというカノンさんの話に自分の全神経をマミさんの方に凝らした。


「よくも私の大切なカノンちゃんのことを傷つけてくれましたね、鎧さん。」


っとカノンさんを傷つけた先のことに憤っているマミさんの声。

そしてその直後に続いた目が潰れそうな強い光の連続爆発に私は今自分の目の前で何が起きるのか確かめることができなくなってしまった。


「「藍ー噴出」。」


耳を切り裂くような破裂音。そして全身が引きちぎれそうな風圧とかすかに聞こえるマミさんの声。

マミさんの黄金の杖、「ミルキーウェイ」の水晶の中に星屑のようなエネルギー結晶が溜まってきてやがて必要量に到達した瞬間、一気に放たれた雷のような大きな光の爆発は高密度、高エネルギーの魔力爆発になってその鎧にぶつかり、


「ウソ…」


気がついた時、あそこにはもう鎧も、チリ一つも残っていなかった。

その光景をただ呆然と見ていた私は


「マミさん…」


初めて自分の目で確かめたマミさんの力に言葉すら失ってしばらくそこから動けなかったのであった。

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