第1章「アイス、要りませんか?」第20話
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カノンさんに取り憑いているというその「神様」は魔神のテラとは違ったとても不思議な姿であった。
金色の長い髪の毛。体中には神秘的な光彩が漂っていていかにも「神様」という風貌が感じられる。
「楪神社」の巫女服を着て現れたその神様はなんと狐のお耳と9本の尻尾を持っていたが見た目だけなら私とそう変わらなかったのでそこが余計に奇妙だと私はそう思った。
「楪神社」に祀られる3人の神様の一人であり「神楽」と農業と穀物を司る「稲荷神」で現在カノンさんの協力者として偶に顔を出すという彼女の名前は「稲荷八雲」。
テラとは経緯を異にする歴とした本物の神様。
彼女のことを神と判断できる根拠はカノンさんの話しかなかったが私は彼女のことを疑いようのない神様と心のどこかでそう感じている。
神というのが本当に実存しているもので実際見るのは初めてだがとにかく私は何故か彼女の正体についてなんの疑問の抱いていない。
これはきっと私だけではなく私の体の中にいるテラも同じだと私はそう思った。
「「これはまた珍しいメンツではないか。」
彼女はここに集まった変わったメンバーの中で真っ先にマミさんに声をかけて来た。
「久しぶりだな、マミ。」
なんと不思議な音声。
声からでもこことは別の世界、人の領域を遥かに超えた全能を感じてしまうほど彼女の声はとても神秘的で和やかなものであった。
でも私は何故かあの暗いトンネルで初めて私に声をかけてくれたマミさんの方がずっと温かくてグッと来たといつの間にかそう感じていたのであった。
「お久しぶりですーヤクモさんー」
神様に対しても相変わらず通常運転で接するマミさん。
そののんびりさには毎回驚かされるが向こうは特に気にしていないように
「相変わらず慈愛に満ちた胸だな。さすが「豊穣の女神」だ。」
自然と神様の視線からでもありえない大きさのマミさんのでかい胸の話題を取り出してきた。
「楪神社」に祀られる3人の神様「白面金毛九尾の狐」「酒呑童子」「大嶽丸」。
その中で演舞と大地の豊穣を祈る神様である彼女は他の二人の神様よりありがたい存在として奉られている。
現在顕現できるのは彼女だけでそんな彼女のことを依代として呼び寄せることができるカノンさんは千年に一度の逸材らしい。
カノンさんを置いて3人の神様が言い争ったことがあったくらい彼女の存在は神側にとっても規格外だったそうだ。
でも私はまもなく自分もまた彼女と同じくらいの規格外の依代であることをマミさんと楽しく話していたヤクモさんの言葉から察することができた。
「お前はいつも不思議な連れと一緒なんだな、マミ。」
っといつの間にか私に移されている神からの視線に私は自分のことがたった今話題になったことに気づくようになった。
「なるほど。お前の中にはあの「深淵」がいるということか。」
ただ一度見ただけなのにもう私の中にいるテラの存在に勘づき、その上その正体まで完璧に判別した金色の神様。
「大体分かったぞ、カノン。お前が私を呼んだ理由。」
そしてその短い間に自分を呼び出したカノンさんの意図まで読み取った彼女は
「よかろう。教えてやろう。依代としてどうすれば生き残れるかをな。」
まず生きるために必要な最低限の知識を私に伝授することにした。
私達は現在街の外にある遺跡の中を歩いている。
ここは「連合」の管轄で学問的な価値が高い遺跡の調査のためには彼らの許可が必要だが
「知ってる通りうちのサンゴがあそこの関係者でとっくに許可は取ってるの。」
「ムーンライトアイランド」とは協力関係である「連合」は彼女の遺跡調査の件をあっさりと許したそうだ。
その中でも私達がこれから向かう場所である「地下大墓地」は特に厳重に立ち入りが禁じられた場所で常に見張り番がいてよほどのことではない限り足を踏み入れることすら許されないところだが
「「オーバークラス」にはあらゆる特権が与えられているからね。もしもの事態に対応するための「オーバークラス」が一々手続きや掟に縛られるわけにかいかないでしょ?
もちろん犯罪や違法行為は話が別だけど。」
「なるほど…」
大抵のことにおいて優先権を持つ「オーバークラス」は簡単な確認作業を済ませるだけであそこに入ることができるらしい。
特に「オーバークラス」を目指しているってわけではないがそういう特別扱いという特典は確かにちょっと欲しいかも。
「そういえば今日のテラってなんかやけに静かだね。なんかあった?」
ふと先からずっと黙っているテラのことに気づいてテラの様子を聞くことにした自分。
最初にマミさんに出会った時と違ってカノンさんや謎だらけの神様であるヤクモさんに会った時すらテラは余計に喋ったり警戒しなくてふとそれが気になった私はそろそろテラもこういう出会いに慣れてきたのかそう思うようになったが
「…いや…なんだか変な気がするな、ここは…」
それはあくまで自分の浅はかの勘違いに過ぎなくて決してテラが感じている違和感までには気づくことができなかった。
入り口で身分確認を済ませて地下墓地に入るようになったが
「こんな風にできてるんだ…」
正直に言って私は怖いというよりむしろ興味津々だったかも知れないと思う。
特にホラージャンルとか物怖じしない性格というわけではないが私は本以外に自分の目で確かめてきた世界が少ないから自分の知らないことに触れるのはやっぱり楽しいことだと思う。
知識だけではその全てを知ることはできないといういつの日にテラが私に言ってた通りに私は今日また自分の知らない世界を知ることができて広めることができた。
それにおばけって言っても私の方だって半分は死んだも同然だし特に怖いとは思わない。
「ゆ…勇敢ですね…ヤヤちゃんは…」
「なんで先輩の方がずっとビビってるんですか…」
っと自分の後ろにピッタリくっついてオドオドしているマミさんにもうちょっとしっかりしてくださいとけんつくを食わせるカノンさん。
彼女は手伝いに来たはずのマミさんが私より怖がっていることをあまり気に食わないようだが人それぞれ苦手なものはあるから私はやっぱりそこまでする必要はないと思う。
「甘やかすのは良くないよ?ヤヤちゃん。この人、ヤヤちゃんが思っているよりずっとバカだから。」
「えへへ…カノンちゃん…髪からいい匂いがします…」
「怖がりながら匂い嗅がないでくださいよ、もう…」
そんな私にカノンさんはマミさんのことはもうちょっと厳しく扱った方がいいとアドバイスしたが私の方こそマミさんにはいつもお世話になりっぱなしだからむしろ私の方がマミさんに迷惑をかけなくために頑張らなきゃ。
それより本当はマミさんにも苦手なものがあるってことにほっとしたくらいだからむしろマミさんの知らないところが知ることができてちょっと嬉しい。
「もう本当いい子じゃない…なんでこんな胸だけでっかいアホっぽい人が好きなわけ?
私ならこんな人絶対無理なんだけど。」
「ま…まあ…カノンちゃんにはヤッちゃんのことしかないんですもんね…」
「ちょっ…ちょっと…!またさり気なく人のことをばらまいて…!」
っとまたヤチヨさんの話がマミさんの口から出た時、今まで以上の勢いでマミさんの口を封じ込むカノンさん。
カノンさんはマミさんのそういうところを悪い癖と言ったが私は多分マミさんは二人のことを応援したいだけだったと思う。
マミさんから見たら二人は今も応援すべきの可愛い後輩さんだから。
私はマミさんのそういう優しいところが本当に好きだった。
「だからそんな可愛いもんじゃないって…」
そして結局マミさんのことを甘やかしてしまうカノンさんもまた優しくていい人であることを私はよく知っていたのであった。