第1章「アイス、要りませんか?」第16話
久々の投稿となって大変申し訳ございません。
色々準備があって少し遅れてしまいました。
最近色々考えさせられたことがあって少し悩んでいる状態です。
この先どうすればいいんだろうとか。
少し自身がなくなって困っている状態ですが私はやっぱり自分の好きな方を選ぶことにしました。
これからまた迷ったりぶれたりすることがあると思いますがこの経験も糧にしてまた乗り越えてみせます。
いつもありがとうございます!
先生。
「娘達がいるんです。生きていればちょうど今のウララちゃんくらいの歳なのでしょう。」
私の大好きな先生。
「でもウララちゃんだって今の私にとってかけがえのない存在ですから。大切で大好きな。」
私のことを大好きと言ってくれた先生。
「だからずっと一緒にいましょうね。私がウララちゃんの家族になってあげます。」
そして魔女である私の家族になりたいと言ってくれた先生。
私はそんな先生のことを家族よりも、自分自身のことよりもずっと愛していた。
誰にも見せない氷のような笑み。
でも私だけにはたまに見せてくれるその顔。
命がけで守った世界から裏切られ、傷ついてしまったあの頃の先生はまさに「鬼神」と呼ぶべきの存在だったが
「おいで、ウララちゃん。」
私だけは心から愛してくれる優しい人であった。
夜の帳のような漆黒の髪を靡かせながら世界を飛び回る「漆黒の魔術師」。
現役の「オーバークラス」として名高い世界一の魔法使い「オーバーマインド」である先生のお名前は「黒江マミ」。
私は魔女でありながら人間の先生に引き取られて一人前の魔術師として生まれ変わった。
泣く子も黙る「ウィッチクラフト」の名門「轟」家に生まれ、魔女として育った自分にとって人間は滅ぼすべきの害悪。
でも私は先生だけは自分がなんとしても守りたくて自ら先生の傍から離れて「ウィッチクラフト」に戻った。
「ウィッチクラフト」による数年に亘る「オーバークラス」狩り。
魔神誕生という無茶苦茶な計画を目指している「ウィッチクラフト」にとって最も厄介な敵は「対魔神兵器」である「オーバークラス」で現「ブラックサバス」、「ブラックマム」、通称「マム」は全面的に「オーバークラス」の排除を全大陸の「ウィッチクラフト」の魔女達に命じるようになった。
その結果、かつて世界救世の目的で活動した5人の「バージンロード」と「十六夜歌劇団」の団長「オーバーチュア」「東雲朧」、最強最悪の「オーバークラス」と言われている「「ジゴクラクサーカス」のピエロ「オーバーパス」「久遠蒼真」、私を除いた4人の「オーバークラス」は殺され、一人は「ウィッチクラフト」に実権素材として拘束されて人間側は未曾有の危機に瀕するようになった。
マムはこう言った。
「我々が「帝国」に対して後手に回されるのはただ常に人手不足という問題を抱えているからに過ぎない。
「烏」級以上は単独でも「帝国」の軍隊と渡り合えるだが「蛇」級以下はまともな統率がないと対処できない。
いいか。恐ろしいのはただ数だけだ。」
魔女には強さによって決められたそれぞれの階級があって「蠅」、「蛙」、「蛇」、「烏」、「梟」の順で分けられ、後ろの方に行くほどより強い存在となっていて捨て駒として「黒猫」というのがある。
ここの責任者である「火火谷紗彩」の場合は一応「蛇」の中間管理職の魔女だがあの人の実力であれば本当は幹部級の「烏」も目指すことができる。
でも彼女は
「幹部になるとさすがに中央に呼ばれることが多いじゃん?
私、皆のことをここにおいては行けないし何よりツバキちゃんに寂しい思いをさせたくないから。」
私にそう言ってここ南部係の中間管理職に留まることにした。
でもいくら魔女が人間や他の種族よりはるかに強力な存在と言ってもその強力な魔力のせいで人間に比べて生殖機能が低い魔女は常に慢性的な人手不足にもまれている。
そこでマムが思いついたのが我々で5人目の魔神を誕生させること。
ただ魔神を誕生させるだけではなくこちらの言うことに素直に従ってくれる従順な魔神を作り出す。
「大災害」と呼ばれる魔神が出たら今最も厄介な敵である「帝国」は確実に滅亡し、「連合」や西の大陸との交渉の素材にもなりうる。
マムは魔神の誕生こそ今の状況を一気に覆す唯一の方法だと確信していた。
「東雲は過去の戦闘で障害を負ってまともに「オーバークラス」としての機能ができていない。そのうち自ら「オーバークラス」から身を引くことになるだろう。
そしてあの「アスラ」の久遠は他の「オーバークラス」との仲が悪い。うまくすれば内輪もめに誘導できる。」
そして「バージンロード」の5人は論外のハグレモノだとマムは先生と仲間達をそう評価した。
「あの「帝国」の姫がいる限り「バージンロード」は決してまとまらない。
あれはもう完全に皇帝の猟犬に成り下がっただけのからくり人形だ。」
あのクソッタレの脳筋の姫のせいで「バージンロード」は分裂され、今もバラバラの状態。
彼女がいると「連合」の漣は手を貸さなくて「楪神社」の月島も動きづらい。
シスターの阿見は未だに聖王庁から追われていて先生の場合は私がなんとかする。
私に至っては「ウィッチクラフト」所属の「オーバークラス」の魔女として当然動かない。
無論その時点で私は「オーバークラス」から退出されるが先生のためであればそんなものどうなっても構わない。
結局新しく現れた魔神の対して動けるのは精々2,3人しかなくてその数で魔神の前に立ったら結果を見ることもなく全員殺される。
いくら頂点と言われる「オーバークラス」でも魔神が相手になると命がけでかかって大きな犠牲を払わなければならない。
それだけ魔神というのは人知を超えた超越的な存在であった。
一度発生したら秒ごとで地図だけではなく歴史まで更新していく超大型の災い。
一番多くの犠牲者を出したのは今から五百年も前に現れた最後の魔神と呼ばれる4人目の魔神「マックイーン」。
それ以来、魔神は五百年以上もこの星に現れなかったがもし今の「ウィッチクラフト」が人工的に魔神を顕現させることに成功すれば勝利の天秤はあっという間にこっちに傾く。
いくら「帝国」が強力な武器を持っていても天災には敵わないように魔女達が生み出した従順な魔神は災害となって「ウィッチクラフト」の敵を跡も残さず滅ぼしてくれるだろう。
その計画を聞いた時、私は心底先生以外のことはどうでも良かった。
大好きな先生だけは必ず我が一族に迎えて命が尽きるまで二人一緒で幸せに暮す。
それさえできれば「ウィッチクラフト」のことも、魔神や戦争のことも私には関係ない。
一刻も早く人間や他の種族をこの土地から全部消して先生との楽園を築く。
私の望みはただそれだけであった。
「約束しましょう。あなたが我々に協力してしてくれたら一生を彼女、「黒江マミ」さんと共に生きるようにして差し上げましょう。」
だからこの馬鹿げていかれた計画に乗ることにした。
南部基地の魔女達と共同で行われたはずの魔神「テラ」捕獲作戦。
でもその時、私は久しぶりに会った先生への気持ちが抑えられなくて暴走し、術式が破れて弾かされてしまった。
私の落ち度で作戦に参加した本部から派遣された魔女達が全員血と脳みそを吸い込まれて魔神の食事になってしまったが正直に言ってそんなのこれっぽっちも興味もなかった。
「先生…♥大好きな私の先生…♥先生の大切なウララちゃんはまた先生のことを思ってオ○ニーしてるんです…♥
こんないけないウララちゃんを早く叱ってください…♥」
私は先生のことで頭がいっぱいで
「あの糞女…先生の傍にウララちゃん以外の女は必要なのに…」
何より先生の傍にいた魔神の依代のホムンクルスの女に対しる怒りでおかしくなる寸前であった。
3年前、私が本部を留守にしていた隙に魔神と契約して本部から逃げ出した例のホムンクルス。
最初はちょっとだけとっちめて本部に連れて行くつもりだったが
「予定が変わったわ。あんたは今ここで殺してやる。」
正直にあの時の自分にとって魔神のことなんてもうどうでも良かった。
いつだって先生のお傍にいられるのは自分だけ。
でも先生のために私は大好きな先生から離れて本部に戻ってしまった。
それがどれだけ自分を苦しませてしまったのか誰も分からない。
「なのにあんなわけも分からない女に先生のことを取られてしまうなんて…何たる屈辱…」
だからふっ飛ばそうとした。
「L'Arc」なんて本当に久しぶりだったが手加減してあげようなんてこれっぽっちも考えなかった。
ただ湧き上がる怒りと屈辱感に背中を押されてあの眼鏡の依代を時空の挟みに放り込んでぐちゃぐちゃにしてやろうと思っただけだった。
でも先生の術式に撃破され、あそこから弾き飛ばされた時、私は少し冷静を取り戻すことができた。
「先生に破られた…♥これってまるで先生に処○膜を破れた時みたいな気分…♥
まだ全然残っているんだけど…♥」
それから私はもう一度先生のことを思い出して下着の中に手を挟み入れた。
そしてお取り込み中の私に接続してきた後で合流する予定だった南部の魔女。
彼女は私に話したいことがあると基地まで私を連れてきて
「私達にはあなたの力が必要です。」
突然協力を求めてきた。
「私達は戦争狂でも、マムのような抹殺主義者でもありません。
私達はただ誰からも邪魔されることなく穏やかな魔女としての一生を送りたいだけです。」
「吉良椿」。
黒髪のポニテールと眼鏡の掛けたこの魔女は「炎の魔女」の異名を持った「火火谷紗彩」の副官であって能力は多少しょぼいが頭の出来がよくて作戦を練るのが得意である頭脳派として本部にもそれなりに知られている人物だった。
「…まさか火火谷さんのことを次の「ブラックサバス」にしようとするとはな…」
でも彼女は地味な見た目と違って思ったより大胆なことを企んでいてそんな彼女のことに私はそれなりに結構驚かされるようになってしまった。
「火火谷さんは自分のことをあまり上に立つものとしてふさわしくないと思っていますが彼女は誰よりも争いが嫌な人です。
彼女ならきっとより正しい方向で私達を導いてくれると私はそう信じています。」
マムの強硬策とは違ったまた別の路線のリーダー。
地元の人間とうまくやっている彼女の存在は本部の魔女達に異端とされていたがもしそれが組織で行われるようになった大きな変化を成し遂げられるかも知れないと私はそう感じた。
…ーがそれが実現できるかどうかは別の問題。
実際大半の魔女達は人間は駆除するべきの害悪と認識していて「御三家」と呼ばれる魔女名門の二人「轟」、「寺坂」は今のマムの方針を積極的に支持している。
傍観勢力の「此花」家のことを含めてそれら全員が火火谷のことを「ブラックサバス」として認めてくれるかは私ですら保証できない。
それより多分無理だと思う。
「だからあなたが必要なんです、轟さん。
「ウィッチクラフト」唯一の「オーバークラス」であるあなたの力こそこの組織を変える鍵となるのです。」
っと多少懐疑的な立場だった私の気持ちを一変させたその一言はあまりにも確信に満ちた強い発言だったので私は思わず彼女の思い描く世界を自分の頭の中に思い浮かばせるようになってしまった。
「彼女のことを「御三家」に認めさせるためには確実な成果がなんとしても必要。
そして今の組織が最も欲しいのが何なのかを考えると答えはすぐ出せます。」
「…あんた、まさか…」
その辺で私はそろそろ気づくようになった。
この女が私に求めるのが何なのか、本部の魔女達に認めてもらうために必要なものは何なのか。
そこまで想到することができた私は
「吉良さんって思ったよりめちゃくちゃ人なのね…まさかこの私を顎で使う気?」
っと少し呆れてそう聞いたが
「ええ。火火谷さんの夢を叶えてあげられば私は手段は選ばないとそう心を決めましたから。」
あまりにも頑なに言い切ってしまう彼女に一瞬口がきけなくなってしまった。
でもそういうの、決して嫌いじゃない。
「気に入ったわ。乗ってやるよ、それ。」
きっぱり過ぎてむしろ清々しいくらいの彼女の言葉に私は彼女の計画に加わることを約束した。
何より
「でも約束してよね?私と先生だけの生活ってやつ。」
あんな条件で私に協力を求めてきた彼女の度胸が結構気に入ったから喜んで自分も彼女達の側に付くことにした。
「でもこれ、バレたら絶対消されると思うよ?だってこれ、どう見ても反逆にしか見えないもの。」
っと言う私に
「それで結構です。もしもの時は全部自分が被って切腹でもしますから。」
迷いもせずそう答える彼女のことに私はもしかすると今の彼女は自分よりも揺るがない覚悟でこのことに臨んでいるのではないかとそう感じるようになった。
その決意表明になんと反応したらいいのか少し迷った自分だったがやることは一つも変わってない。
「じゃあ、先にこちらが集めればいいわよね?」
「物分りが早くて助かります。」
っと自分のやることを確かめる私に彼女は今日初めての笑みで私の質問に答えた。
そうやって私達の「ウィッチクラフト」上層部に向けた危なっかしい共闘はその幕を開けるようになったわけだが
「ちなみに火火谷さんはこのことを知ってるのかしら。」
「いいえ。これはあくまで私と一部の子達が企てたことですから。」
「んー…悪いけどもう一回考え直させてくれないかしら…?」
「ダメです。」
正直にそう言われた時は焦ってしまった。
魔神が生まれるに必要なのはいくつかあるが一番手っ取り早いのは古代の魔神の片鱗に触れること。
つまり
「分かったわ。私達が「ウィッチクラフト」や他の組織より「魔書」を見つけること、その一択しかないってことでしょ?やってやるわよ。」
魔神が命より大切にしていた魔神の至宝、「魔書」を集めてそれを成果として上層部に認めさせる。
それこそ最も確実な近道であることを彼女は心のそこから確信していて私もここは一応彼女の選択を信じてみることにした。
もしうまくいかなくても私は通常の任務に復帰して今までのやり方で先生との二人だけの生活を図ればいい。
これは明らかにマムの方針に楯突くあるまじき行為でもしこのことがバレたら全員処刑を免れられないが私だけはなんとかやり過ごすことができる。
誰が死んでも私には関係ないことで私はいつだって自分と先生のことしか考えてないから。
「改めてよろしくね?吉良さん。」
「こちらこそよろしくお願いいたします。轟さん。」
だから今目の前でこの女の頭が爆発してくたばってもびくともしない自身がある。
そうはずだったのに
「やあー♥お疲れだったわ♥私の可愛い子孫よ♥」
「…吉良さん…!」
「…逃げて…ください…轟さん…この女は…危険です…」
その日、私は初めて他人の死に憤ってしまった。




