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異世界アイスクリームおばさん  作者: フクキタル
第1章「アイス、要りませんか?」
10/40

第1章「アイス、要りませんか?」第10話

ご評価いただき誠にありがとうございます!

至らぬ作品なのにこのような好評がいただけてとても嬉しいです!

これからもお気に召されるように頑張りますので何卒よろしくお願いします!


書き直すため前回投稿したものは消させていただきました。

ご了承いただけたら幸いと存じます。


いつもありがとうございます!

「ヤヤちゃんは本当に可愛いですねー」

「唐突…」


マリアさんのところから離れてもう数時間も経っているが、私達はそんなに道を進んでいなかった。

理由は3年間もトンネルの中に引きこもっていたせいで落ちて落ちまくった私のなけなしの体力のせい。

毎日、暗いトンネルの中で本ばかり読み尽くしたせいで、体力はびっくりするほど弱くなっていて、私は何度も立ち止まって息を整えなければならなかった。

しかも激しい魔力の枯渇で何度もマミさんから魔力供給を受けなければならなかったので、気がつけばもう真っ暗な夜になっていた。


ちなみに、


「授乳はもういいですから。」

「そんな殺生な…!」


マミさんが欲しがる供給方法は私の方から断固拒否して、二度とやらないことになった。


「クスン…もうこんなに大きくなったんですね、ヤヤちゃん…

でもマミーはやっぱり寂しいです…」

「…別にすだちするわけではありませんから…

というか会ってまだ数日しか経ってませんし…」


って感じですごく寂しがるマミさんのことには、やっぱりちょっと悪いことをしたなって思ったりもするが、


「…お前、いつも大人ぶってるくせによくあんなにがっついてしゃぶれるものだな…」

「…うるさいよ…」


さすがに雇い主からそう言われたらな…


「すみません、マミさん…私のせいで…

泊まるところも見つけなきゃダメなのに…」

「いえいえ。野宿は慣れっこですから。」


っと今日の不甲斐ない自分のことを謝る私に、何も問題はないといつもの笑顔を向けてくれるマミさん。

マミさんは「バージンロード」の頃から道端での野営はしょっちゅうのことですっかり慣れていると、私に言ってくれた。


「立ち上げたばかりの頃は、あまり豊かな生活ではありませんでした。

私は普通な農家の娘で後ろ盾になってくれる人なんて誰もいませんでしたし、一緒に「バージンロード」の旗を揚げてくれたマリアちゃんだって聖王庁から何の支援ももらえなかったんですから。」


神聖部隊「クライシスター」、その暗部の一つである異端審問官だったマリアさんは本庁の反対を押し切ってマミさんの「バージンロード」に合流、世界を救うために世界を飛び回ったそうだが、本庁の命令に背いたせいで活動初期には何のサポートももらえなかったというマミさんからの話。

特に「クライシスター」はあまり外には顔を出さない部隊で、それまで公式に聖王庁は異端審問官の存在を否定していた立場だったため、なおさらマリアさんにはなんの支援もできなかったそうだ。


「偶に教会で泊めてもらったり、雨宿りしたりすることはありましたが、他に金銭的な部分は殆ど自力で解決するしかありませんでした。

やっちゃんだって「皇室」のお兄さんに「バージンロード」の活動のことをすごく反対されて、カノンちゃんの「(ゆずりは)神社」も、サンちゃんの「霧隠れ衆」の誰も「バージンロード」の活動に肩を入れてくれなかったのです。」


特に「帝国」の「皇室」はヤチヨさんの「バージンロード」活動に対してかなり懐疑的な視線だったので、隙があればすぐ彼女を本国に連れて行こうとしたそうだ。


「やっちゃんのお兄さん、つかささんは妹思いの素敵な人でしたからね。

たとえ腹違いの妹でもつかささんにとってやっちゃんはかけがえのない大切な妹だったんです。」


誰よりも妹のヤチヨさんのことを心配してくれたたった一人のお兄さん。

でもそのお兄さんは、長い間、禁じられていた「魔術殺し」を復活させた今は前代未聞の暴君となったことを私はよく知っていた。

それについてマミさんは何も言わなかったので、私もそのまま黙っていることにしたが、


「一体どうして…」


やっぱり彼がそうなってしまったことが気になるのは仕方のないことであった。


結成して世界の色んなところを飛び回ったというマミさんと仲間たち。

その中で一番印象的だった話は、


「アイドル…ですか?」


活動資金を稼ぐためにカノンさんと一緒に急拵えのアイドルのことであった。


「ギルドからの依頼だけでは活動資金どころか、5人分の生活費もギリギリでしたから。

当時の私達は無名の冒険者だったし、それらしき依頼はもらえなかったんです。」

「だからアイドル…」


いくら腕が立つ冒険者だとしても知名度がない限り、それっぽい依頼は入らない。

そこで思いついたのが広報活動も兼ねたアイドルデビュー。

当時、アイデアの発案者は現在、現役のアイドルとして大活躍しているカノンさんだったと、マミさんは当時のことを話してくれた。


「もう少し私達のことを知ってもらうために、5人で歌を歌おうとカノンちゃんがアイデアを出してくれたんです。

カノンちゃん以外は全員素人の付け焼き刃のアイドルユニットでしたけど、それがまたすごく楽しくてー」

「マミさんがアイドル…」


それは確かに人気ありそう。

実際、マミさんって声もきれいで、見た目だってこんなに美人だから。

性格も明るくて、とても30代の人妻には見えないほど若々しいのに、それとなく大人の魅力を感じさせてくる。

胸だってこんなに大きいから、さぞモテたのだろう。

ふくよかな黒髪のムッチムッチの人妻アイドル…


「なにかの企画モノみたい…」

「あれ?ヤヤちゃん、今、普通に辛辣ではありません?」


でも一度見たいかも…


っと当時のカノンさんも今の自分と同じ考えをしていたらしいが、実際、「バージンロード」のアイドル活動の時、一番人気があったのは案外、アイドル活動について誰よりも反対の声を上げたヤチヨさんだったそうだ。


「ギャップがすごいんですよ、やっちゃんってー

いつも強気でアイドルなんて死んでも絶対嫌って言ってたくせに、いざ人前に出たらめいいっぱい歌いましてー」


っとあの時のことを思い出して、懐かしい記憶に随分ごきげんになったようなマミさん。

それほどマミさんにとってかけがえのない大切な思い出であることを、私は今のマミさんの笑顔を見て分かるようになった。


皆の予想と違って思ったよりアイドルに真剣に取り組んでいたというヤチヨさん。

一人でこっそり可愛いポーズの練習をしてみたり、彼女なりに色々工夫をするほどヤチヨさんは割とアイドルに本気だったそうだ。

まあ、金髪碧眼のお姫様なんて人気のない方がむしろおかしいんだけど。


その次に人気があったのは意外とマリアさん。

マリアさんは特に女性側から熱烈な支持を得ていたそうだ。


「マリアちゃんってイケメンだからとにかく女の子達に大人気だったんですよね。

背も高いし、ルックスもよくていつも男っぽい格好をしてましたから。

カノンちゃんはいつも「私より二人が目立ったらどうするんですか!」って激おこぷんぷん丸だったんですけどね。」


あの頃のすねているカノンさんのことを思い出して、気持ちよく笑ってしまうマミさん。

でもマミさんはそんなカノンさんのことが仕方がないほど可愛くて、


「だから母乳を飲ませてやったんです。」

「なんで?」


また授乳をしたそうだ。


「だって可愛い子を見たら母乳が止まらなくなっちゃって。」


だからなんで?


まあ、マミさんの特異体質のことは置いといて、また話を戻すと、「バージンロード」の末っ子である、忍のサンゴさんは意外とアイドル活動に結構協調的だったらしい。

私はてっきり忍者はそういうことはご法度だと、勝手にそう決めつけていたが、どうやらそうでもなかったようだ。


「サンちゃんもクールビューティーで意外と歌が上手なんです。

特にその歌声がすっごくきれいで、なんというか天使の歌声みたいでー…」


っと少し目を閉じて当時の彼女の歌声を思い出したマミさんは、


「だから母乳を飲ませてやったんです。」

「授乳はもういいですから。」


そこにまた自分の特異体質を挟み込んできた。


娯楽施設が殆どない山奥の村。

そこには「霧隠れ衆」という集落があって、サンゴさんはそこで忍として育った。

彼女はあるきっかけを堺に、外の世界に出ることを決めて、色んなことに触れて見聞を広めた。

そして当時のアイドル活動も、経験したことのない未知の世界だと、割とすんなりと一緒にしてくれたそうだ。

また彼女には歴史ある「楪神社」の神楽の経験が豊富なカノンさんのように、村の神社で巫女として歌を歌った経験があって、意外と歌が得意らしい。


他に学生時代合唱部で活躍したというマミさんと聖歌隊で歌ったことがあるマリアさんも歌にはそれぞれ自身があって、ヤチヨさんに至っては皇室で専門の音楽教育を受けたエリートだったそうだ。

音楽のレベルだけならちゃんとしたアイドルにも負けないくらいの「バージンロード」は結成1周年の記念ライブを無事に終え、卒業までギルドからの依頼もこなしつつ、ステージの上で一生懸命歌を続けた。

そしてアイドル活動の効果で、マミさんたちはた依頼をくさん受けられるようになって、その時に稼いだお金は後に活動資金に結構役立ったそうだ。


アイドル、そのものにも興味があるが、


「なんかいいですね。皆で何かのために頑張るってのは。」


私はやっぱりあの時のマミさんの仲間たちが築き上げたその友情への憧れこそ一番素敵なものだと感じた。


いつも一人ぼっちで、本以外に友達を持ったことのない私にとって誰かとの絆なんて夢のまた夢の存在。

だからこそ憧れてしまうこの仕方のない本能に私は逆らうことができなかった。


「大丈夫ですよ、ヤヤちゃん。」


でもマミさんはそんな私にこう言ってくれた。


「今は私が付いてますから。」


これからは自分と一緒に楽しい思い出をいっぱい作ろうと。


私はしばらくマミさんと一緒に行動する。

私の中にあるテラの「悲哀の書」を「ウィッチクラフト」や他の勢力に奪われないために、これからはマミさんが私のことを守っくれる予定となっている。

でも私は、マミさんが私との同行を決めてくれたのが全部魔書のためとは思えない。

もし本当に本だけが目当てだったら、


「だから何も心配しないで。」


この人は私にこんな愛情が詰まった温かい目を私に向けてくれたんだろう。


馬車も、車も通らない道。

その上を見上げた時、頭の上から降り注ぐ燦然と輝く星の光。

まるで時間が止まったような静かで粛としたその空間で、私とマミさんはお互いのことを見つめ合っていた。


「そういえば先なんで私のことを可愛いって言ってたのか聞いてもいいですか?」


そうしている間、ふと思い出した先のこと。

特に嫌ってわけではないが、さすがにいきなり可愛いって言われたら誰でもキョトンと感じると思う。

それについてマミさんは、


「えへへ…特に理由があるわけではないんですけど、偶にこう言ってあげたくなったりするんです。」


ただ無邪気な笑みで無性にそうしたくなっただけだと答えるだけであった。

でも、それにはマミさんの未練という心残りがあることを、


「あの子達にもいつも言ってあげたんです。

「ルビーちゃんも、ダイヤちゃんも本当に可愛い。ママは二人のことを愛している」と。」


私はその時のマミさんの寂しさと悔いの表情から気づくようになった。


「「愛」には表現も大事です。

人というものは意外と言葉で言ってあげなければ気づかない生き物ですから。」


大切なほどそれに対する愛の告白を惜しまないこと。

マミさんは愛の実践はそういう簡単なものから始まることだと、私にそう教えてくれた。

そして私はそれが自然とできるマミさんこそ、本当に勇敢ですごい人だと、心からそう思ってしまった。


「ヤヤちゃんもアイドルになったらいいのにー」

「いや…絶対無理ですから…」


更け行く夜。

何も聞こえない静寂の夜の中、私達はそうやって星空の下で笑い合っていた。

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