あっという間
あっという間
時間が過ぎるのは本当に早い、このスキー場へ来る時間が昼近かったので午後のスキーは4時間もすれば辺りは徐々に暗くなってくる。
雪が降っていることもありそれほど暗くは感じないが、問題なのはかなりの雪が降っている事だ。
気温が低いため雪崩が起きることは無いと思われるが、気温が高かった場合は途中で圧接するために滑走を止めることがある。
現に初心者用のゲレンデが順次圧雪作業をするため立ち入り禁止になって行く。
昼めし後に数回中級コースを滑ったあたりでアナウンスがあり、初心者用のゲレンデには整備が入るようになった。
「もしかしたら明日の滑り出しは遅くなるかもな」
「どうして?」
「雪がこのまま降り続くと表面の雪が雪崩を起こしやすくなるんだ、それに見ただろう徐々に初心者用のゲレンデもボコボコになってきてる」
「ああ確かに滑りにくくなってきてたね」
「でこぼこになると滑りにくくなるから圧雪車でなだらかにするんだよ」
俺たちはリフトを20回乗ったところで中腹にある小屋で休むことにした、ゲレンデには数か所休む場所と食事する場所がある。
午前中に滑り倒して疲れたスキーヤーは結構中腹にある食事小屋にて酒を飲んでいる場合が多い。
俺たちは昼からなので彼らより疲れてはいないが、滑り出しが遅かったので初日の疲れはまだ感じられないみたいだ。
明日の朝自分の体がどうなっているのかが恐ろしい…
「わーよく降るね~」
「ああすごいね、この降り方は前に万座スキー場に行った時を思い出すよ」剛士
「万座って?」
「長野と群馬県の県境にあるスキー場だよ、ここより標高が高いから雪質がさらに良いんだけど、大雪になる確率が高いんだ」
「ふ~ん」
万座温泉スキー場はここよりさらに厄介なルートを進む為、中々行くのに苦労する、万座草津ルートは一部有料道路を通行する、その料金は確か千円だったと記憶している。
「そういえば万座にもプランスホテルがあるよあそこも温泉なんだ」
「伊豆と同じグループ?」
「そうだよ」
「行ってみたいね」
「今年はもう難しいけど来年は考えておくよ」
泊りがけのスキー旅行、毎年行けるのはやはり余裕があるものだけだ、剛士の家は親も医師と言う事でそれなりに裕福だが俺とミクにはそこまで余裕はない。
ましてやこれから俺と剛士は就職するので今までのようなお気楽な毎日を過ごすことは無くなる。
すでにミクには分かってきているだろう、社会に出て働くことの大変さが。
最近ミクは俺と一緒に暮らすことをせがむ様なことは無くなった、良いのか悪いのかはわからないが。
思ったより給料が安い事や休みを自由に使えないことなどを考えると、結婚して子供を産んでなんて普通の事をいかに軽く考えていたのかとい言うことを思い出す。
良く結婚は勢いだなんて言うが、勢いと言う事はそういう形でなければ踏ん切りがつかないぐらいの面倒事が待っているからと言う事なのだ。