9回目の限定解除
9回目の限定解除
スキーブーツを無事買い終えてその日は家に帰ると何度となく履いては脱ぐと言う行為を繰り返す。
やはり真っすぐ立つと靴の外側に力がかかり剛士の言っていた通りだと感じた。
(内側にこのスペーサーを入れるのかフムフム)
説明書にスペーサーの付け方が書かれていたので、それをセッティングしながら来週のスキーを予想していた。
そこにはかっこよく滑り降りる自分の姿を夢に描いていたのだが、それほどスキーが簡単ではないことなどはすぐわかることになる、しかもパラレルやウェーデルンで滑ろうなどと考えるのは100年早いと言う所だろう。
その日の夜はスキー場で楽しく滑る俺とミクの夢で終わった。
次の日は9回目の限定解除の日、この日の予約は午後1時に入れておいた、午前中は専門学校の講習があったためだが、2月に入りこの年は関東でも結構雪の日が多かった。
学校から帰ってくるとすぐに自転車で運転免許試験場へと向かう。
天候は晴れていたのだが、道路にはまだ雪が残り朝晩は少し凍り付く。
昼過ぎに自転車で出るとギリギリの時刻で試験場へ到着した。
「やっべーぎりじゃん」
午後の運転免許試験会場は朝とは少し違う、試験より更新や講習の人が多くなる時間帯。
運転免許試験場には講習会で来る人もかなりいる。
知っている人ならすぐわかるだろう、ここには違反をしていわゆる切符と言う用紙を警察官にもらい、講習を受けに来る人がいる。
当時は6点減点で免許停止を喰らう、一発免停と言う物がある。
通常小さい違反は1点から2点の減点だが、スピード違反ならば30kオーバー、飲酒や酒酔い運転も1発免停だ。
そして講習会は午後が多い、そこには神妙な顔持ちをして老若男女が浮かない顔をしながら各教室へと通される、免許停止には聞いたところによると3種類ある。
免許停止は1か月からだが3か月免停と言うのもあるらしい、その場合試験場に3回講習を受けに来なければ短縮されないと言う話。
免許停止を受けても罰金を払い講習を受ければ短縮されるのだ、まあそれでも短縮することはできるのだが。
短縮しても違反をしたことがチャラになるわけでなく、さらに1年間以内に違反をすれば今度は4点減点で免停となる。
昨今はこの違反点数もかなり厳しく取り締まられる為、かなりびくびくしながら運転しなければならない人も増えているのだが。
そんなことを考えない人もまだわずかにいる、そういう人たちが午後の運転免許講習会へと少なくない数訪れるのだ。
この日の運転免許試験には晴れたこともあって10人近くが参加していた、今回は2番手と言う事もあり前回完走したために結構慣れてきていた。
まあ暇なときは近くの駐車場で練習していることもあり、かなりスムースに運転できていたが9回目の限定解除も結果としては落ちてしまった。
このまま帰るのもつまらないので、今回俺は試験会場内の食堂で遅めの昼食をとることにした。
試験会場内の地下には一般人も使える食堂がある、食券を買えば数種類の定食が食べられる。
もちろん価格はリーズナブルだし味もまあまあだ、昔は午後の試験や更新の時にはよくここを使ったことがある。
落ちた後でとんかつ定職を食べてから二輪の試験会場を金網越しに見ていた。
そこにはまだ受験者が4人ほど残っており、GT750が独特な排気音を出していた。
「早く限定解除して~な~」
金網の向こうでは最後の受験者が試験管に結果を言い渡されしぶしぶ帰る姿が見えた。
彼は原付バイクに乗ってきたのだろうか、ヘルメットはいわゆる半キャップに近い、よくお蕎麦屋さんや新聞配達の人が付けるヘルメットだ。
まあそれでもいいはずなのだが、この頃二輪車免許の受験にはヘルメットはジェットヘルメットが一番良いと言われていた。
フルフェイスは視線が確認できないので試験管に誤認されると言うし、半キャップだとたまに顎ひもをしっかり掛けられないものもあったりと、注意される人も少なからずいたからだ。
もちろん紐靴もNGだし手袋がない場合も減点されることがある。
今回は完走まで至らなかったが短制動までは進めたのでやはり落ちた原因は後輪ロックと思われる。
前に40k以上出さずに短制動をした時も減点だと言われたことがある、まさか40k未満でも駄目だとは。
ちなみに前後輪ロックさせた場合も減点される。
俺は一通りほかの受験者の運転を見て自転車で帰る、もちろん予約は入れたが今回の予約は来週がスキー旅行と言う事もあるので2週間後に予約を入れることにした。