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限定解除2回目

限定解除2回目


それは朝8時、俺は車庫に停めてあるバイクのカバーを上げると中を見てほくそ笑む。

まだ乗れないバイクなのに、だが今日は2回目の限定解除試験の日。

俺は自転車に乗り試験場へと向かう、言っておくが自転車で行くのにブーツやヘルメットを持っていくのはかなり恥ずかしいと言っておく。

だが今は乗るバイクがないのだ、それでも試験にはいかないといけない。

この日の試験ははっきり言って不合格だった。

先日の試験と同じだが、数回Z2に乗り練習したので一本橋は何とかクリアした、問題なのはS字。

1速で入るところ2速に上げてしまい半クラッチを使用したためアウトとなった、他にも細かい場所で失敗したのは自分でも分かったので仕方ないのだが。

結果としてその足で次の予約を入れることに。

次は11月、この頃からはひと月に1回予約を入れていたが2月は2回予約することにした。

秋もすぐ過ぎて行き、バイクに乗るには寒い季節がやってくる。

俺の家に泊めてあるZ2は週一でエンジンをかけてやり私道だけを見つけては少し走る練習をした。

まあ暴走族ではないしそのまま乗って国道へなんて怖くて出れたものじゃない。


「どうだった?」高志

「また落ちたよ」

「笑えるよな建築士の資格より限定解除の方が難しいなんてな」

「本当だよ、ところでそっちはどうだ?」

「一応留年はしなくて済みそうだ」

「それは良かったな」

「ああビビったぜ夏の間はほぼ毎日補修だったよ」


この日高志は俺の家にZ2を見に訪れていた、剛士のバイクを俺が譲り受けたのを知って見に来たのだ。


「それにしても免許ないのに買うって、思い切ったな」

「仕方ないだろうチャンスだったんだ」

「俺は竜ちゃんはZ2にあまり興味ないと思ってたんだが」

「ああ…確かに俺はZ2は嫌いではないけどどちらかと言うと大型バイクに興味があるって感じかも」

「やっぱり」

「でもだからと言って何でもいいわけじゃないぜ、本当はこのバイクの次に出たザッパーが欲しかったんだけどな」


RS650通称ザッパー、この頃は750とは別に650や550と言った排気量のバイクが各社ラインナップされていた。

その中でもKAWANAKIから出た650ccのバイクが乗りやすいのではと思っていたからだ。

価格的にもそちらは新車で5万以上安いと言う、まあ今となってはどうでもいい話だが。


「ああそっちか、確かに650の方が乗りやすそうだよな」

「峠乗りなら扱いやすいバイクを手に入れたいと思うだろ」

「ああ確かに」

「それよりどうする?」

「ツーリングか…」

「当分はお預けかもな」

「剛士がバイク下りちゃったし、俺はこの通りだからな」

「そうか…」

「それよりも冬になったらスキーに行かないか?」

「なんだよいきなりスポーツかよ」

「夏の旅行でスキーの話が出て盛り上がったんだよ」

「なんだそれ?」

「それで冬になったらみんなでスキーに行く話になったんだよ」

「それは良いけど金かかるだろう」

「まあな、でも最初に道具さえ買っておけばそれほどかかんないって話だ」

「車で行くのか?」

「剛士の4WDで行く予定だ」

「あのでかいやつか」

「ふ~ん」

「なんだよ、不満そうだな」

「それ洋子ちゃんも行く予定なんだろ」

「そこまでは分からないけど夏の旅行でかなり盛り上がったから、誘う可能性は高いな」

「それじゃあ俺が彼女連れて行くと6人になるだろ」

「ああ~確かに」


高志はこの頃、新しい彼女と付き合っていた、だが今回は少しヤンキー風だった。


「今の彼女はスキーには興味なさそうか?」

「ああどちらかと言うとバイクのみだな」

「そうかようやくリアシートを温めてくれる子を見つけたんだ」

「なんだよ自分がすでに経験してるからって別に遅いも早いもないだろう」

「いや、俺は喜んでいるんだよ」

「そうかよ、でも冬か行けるとしても1月入ってからになるな」

「もしかして繁忙期か」

「ああ道路工事は10月から11月がピークだからな」


公共工事の繁忙期は年2回決算期になるとやたらと工事が多くなるのはご存じだろう、特に10月と3月の終わりごろは、道路も割とすいてくるのであちこちで工事が行われる。

高志もそれを手伝わされると言う事になり、スキーシーズン前の10月から11月後半までは結構忙しかったりする。

その後は学校のテストもあるので彼はスキーに付き合う事は難しいだろう。


「それに今度の彼女は少しミクや洋子ちゃんとは方向性が違うからな」

「こないだ後ろに乗ってた子だよな」


多分歳はまだ高校生ぐらいなのだろうけど、どう考えても高校には行っていない感じだった。

来ている服はヤートラ。

そうダボっとしたパンツに阿弥陀如来の刺繍が入ったスタジャン、髪の毛は金髪と言ういで立ち。


「どこで見つけて来たんだ彼女?」

「うちの従業員の妹だよ」

「もしかしてまだ16ぐらい?」

「ああ言葉使いは悪いけどかわいい奴なんだ」

「お~高志からおのろけ話を聞くのは初めてかもしんない」

「うるせーよほっとけ」


昔はこのヤンキー系の女子が結構いた、スケ番と言う人種も割と多く。

スケ番から暴走族と言う図式もごく当たり前だった。

今ではほとんどが消滅し田舎に少数残るぐらいだが、中にはとびっきりの美人さんがいたのを覚えている。

ヘルメットをしていたので顔つきはよくわからなかったが、高志の彼女がブスだった時は無いので、多分ミクや洋子ちゃんとは又経路の違うキレイさなのかもしれない。


「でもスキーか…」

「まあまだ何か月かあるから行くなら誘うから考えておいてくれよ」

「ああ分かった」


資格試験は佳境を迎えていた、残る資格試験は少ない、すでに講習で手に入れられる資格は後2つぐらい。

今受けている講習はCG、いわゆるコンピューターグラフィックの前段階なのだが。

覚えている人はかなり年代が上だろう、昔の設計図と言えば青写真、そうあの青いラインで作られた設計図。

印刷技術は今ほどよくない時代、写真の応用で図面を作成する場合青写真と呼ばれた技法で印刷された図面だ。

その作成には始め鉛筆で製図していたのだが、この時代からコンピューターへと変わっていくのでそのための講習を受けなければいけなくなった。

もちろんウィンドウズも民間に出回る前、企業にはすでにほかのタイプのものが導入されてきていた。

製図を行うための専用機や計算機は最初かなりの大きさがあったが、これらはどんどん小型化されいずれ家庭でも使われるようになる。


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