雨脚はさらに
雨脚はさらに
食事をしている最中も雨は降り続く、時折窓をたたくように降る雨、食事処で流れるラジオからのニュースでは、台風は四国に上陸し被害が出ていると言う。
「うわ~傘無いのに…」
「上着を傘代わりにするしかないね」
食事が終わりお会計を済ませて窓の外を見ると音を立てて降る雨に少し躊躇する。
「それでも駐車場まではそんなに距離無いから行くしかない」
「俺の上着貸すよ、頭の上にかざしていけばそこまで濡れないだろう」
「じゃあミクは俺の上着」
「ありがとう」
「じゃあ行くよ」
店のドアを開けると駐車場まで小走りで移動する、距離は100メートルぐらいだが、それでもかなり濡れてしまうのは仕方のないところだ。
慌てて車のドアを開け、4人が乗り込む、すると少しの違和感が。
「あれ洋子ちゃん助手席じゃないの?」
「え?この状態で?」
見ると確かに俺たちの上着を傘代わりに移動してきたが、彼女のブラウスもミクのTシャツも見事に濡れて下着が透けて見えている。
「あ~タオル出すから待ってて」ミク
後部荷台に乗せた荷物の中からバスタオルを出してそれぞれに渡す、車のフロントガラスには先ほどよりも強まった雨が音を立てて降り続けていた。
「うわ~本降りになってきたね」ミク
「ああ少しまずいかもしれないな」
「ああもう出た方がよさそうだ」剛士
午後1時を過ぎもうすぐ2時になる、何故まずいと言い出したのかはその後でわかるのだが。
伊豆もそうだが山道は雨量により通行止めになる場合がある、問題なのはがけ崩れ。
今でも大雨の後にがけ崩れになるニュースはよくあるが昔も良くあった、ましてやこれから帰る方向には片側が山の部分が多くトンネルも何か所か通らないといけない。
剛士は頭の濡れ具合も気にせずシートベルトを締めるとそのまま車を走らせた。
もちろんナビシートには俺が座っている、この状況下で又洋子ちゃんにナビを押しつけるとかなり引かれるだろう、まあそれよりこの雨が降り続くならば本当に帰り道が危なくなることも考えないといけない。
俺もシートベルトを締めるとミクからタオルを受け取り自分の頭と体を拭く。
車は国道の海沿いを進んでいくが時折強まる風と雨に大きな車体でも少しふらつくときがある。
帰りは道路のことも心配なのでカセットでは無くラジオのスイッチを入れて聞くことにした。
【台風19号は本日7時に四国へと上陸しましたその後進路を北東に取り時速40kで進んでいます、進路にお住いの方はご注意ください】
【次に各自動車道の状況をお知らせします…】
この先に通る真鶴自動車道や西湘バイパスの通行止めと言うニュースは無かったが、刻々と台風が近づいていることは分かっており、雨の量によって今後通行止めになる可能性も出てくるだろう。
出来れば4時には西湘バイパスを抜けたいところだが、なんせ安全運転で走行しているので速さを求めるのは難しい。