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真鶴道路

真鶴道路


小田原を過ぎたあたりでバイパスは終わりまた一般道へと変わっていく、その先を進むと今度は真鶴有料道路へと変わりここでも通行料を払う、ここも確か200円ぐらいだった記憶がある、今はところどころ増設された橋により姿は変わったが、熱海まではこの道路を通るのが下田へ行く近道だ、他には山越えの道しかない。


「ずっと海だね」

「向こうの方に島が見えるでしょ」

「うん」

「あれが初島、もう少し行くと大島が見えるよ」

「へ~」


俺は持ってきたカセットを変更する、今度はバラードが多く入っているバージョン。

半分は南スターの曲ばかりだが、この頃の海と言えばこのグループの歌は欠かせない。


「剛士辛かったら運転変わるぞ」

「いやまだ大丈夫だ」


すでに2時間近くが過ぎ疲れが出てくるころ、俺は休憩を取るよう勧めた。


「そろそろ休もう」

「そうだな」


車もそうだが、バイクも約2時間に一度の休憩は入れて旅行の計画はした方が良い。

疲れもあるが、考えてみればわかること、朝出発すれば大抵車で旅行に来ている人は同じように疲れてくる。

周りが全員疲れてくると言う事、そうなれば自分だけでなくほかの車のミスも多くなる。

そのミスが重なることで本来避けられる事故も避けられなくなると言う事。

ましてや剛士は今回初めて車での長距離運転を経験するのだ、外見がいかにごつくて大丈夫そうに見えても精神まではそうじゃない。

車を道沿いにあるPAに入れて、一度車を降りると外の空気を吸う。


「あ~いい気持ち」

「…」

「どうした?」

「あ~ううん何でもない」


幸田さんは先日の雰囲気とは少し違うみたいだ、だがそこは少し黙って様子を見ることにした。

ここでこの時の服装チェックをしてみよう、この時期の服はトラッドやカジュアルが主流で。

女子は夏のお嬢さん風がメイン、ミクはホットパンツにTシャツ、その上からブラウスを羽織っている。

そして幸田さんはワンピース、ウエストには白いベルト、そしてポーチさらに大きめの帽子。

俺はGパンとTシャツ、剛士はアロハに短パンサングラス。

靴は全員がスニーカー。

さすがに風が強く幸田さんは車の中に帽子を置いてきた。


「風が強いわね」ようこ

「一応明日までは晴れ予想だけど明後日は台風が近づいているって話だよ」

「そうなの」みく

「コーヒーと紅茶どっちがいい?」

「あたしこうちゃ」

「私も」


缶コーヒーのプルタブを開けると一服する、俺も剛士もたばこは吸わないが、この年代で煙草を吸わない奴は少ない。

周りのドライバーはほとんどが喫煙者だった。


「もう戻るか?」

「うん車の中で休むわ」

「そうだね」


一度背伸びをするとみんなで車に戻る。


「あ~なんか夢みたい」

「なんで?」

「友人と海までくることなんて考えていなかったから」

「そうなんだ」

「幸田さんは卒業したらどうすんの?」

「どうすんだろう、一応公務員を目指すけど」

「そうなんだ」


一応彼女は法学部の学生、と言う事は弁護士や裁判官などが最高の就職口だが、通常のお役所系も同じように法律に詳しいと就職率は高くなる。

国や都の関係省庁に就職する場合、彼女の通う大学は結構そちら方面への就職率は高いという話だ。


「そういえば真鍋…さん君?」

「君でいいし良ければ剛士君でも構わないよ」

「じゃあ私は洋子ちゃんで」

「OK」

「剛士君はどうするの進路?」

「俺か~、俺は実は全く違う方向に決まっちゃうかもしれない」

「違う方って」

「親の伝手で医療機器の会社へ、専門卒業すれば口利きしてもらえるんだが」

「そうなんだ、でもそれが良いか悪いのかはわからないってことね」

「その通り、俺はデザインをもう少しやりたいなって思うんだけどね」

「でも医療機器もデザイン性は必要だろ」

「ああ 多分その線で行くのが自然なんだろうけど」

「そうか~俺は一応建築設計だな~、まあグラフィック系なら構わないけどな」

「ふ~ん私はもう美容師一択しかないけどね」

「ああそうだそのうちミクに髪切ってもらおう」

「いいよ今練習しているとこだから、でもおかしくなっても怒んないでね」

「いやそこは怒るだろう」

「あはは」


約30分車の中で話し、飲み終わった缶を片付けるとまた車は走り出す。

左手には大きめの島が見えてくる、今度は大島。


「島が見えるね」

「大きいのは大島だよ」

「近くない」

「大島はそれほど遠くないよ、確か伊豆から船も出てるし」

「行けちゃうんだ」

「日帰りできるんじゃないかな」


伊豆からであれば数時間で着くので日帰り可能だが川崎からのフェリーだと5時間以上はかかる。

まあそれぞれに便数も違うので旅行で行くなら川崎からの方が楽だろう。

休憩後、海岸線を走ること1時間と少し今度は左手に宿泊先のホテルが見えてきた。


「もしかしてあそこ?」

「そうだよ」

「でかいね」

「高級ホテルだね」


剛士はホテルの正面まで走らせ車を止めた、するとすぐにボーイが出てきて挨拶をする。


「本日お泊りの真鍋様ですね」

「はいそうです」

「ようこそいらっしゃいました、お荷物お運びします」


もう一人のボーイが来て荷物を運ぶ、2泊三日の荷物はそれほど多くはないが。

それでも女性陣が運こぶにはやや重い、2名共にこの日のために買ったような新品の旅行鞄。

特に幸田さんのは、親が買ってくれたのだろうかブランドのバッグだった。

まあそれでもボーイたちの手際は俺が運ぶより素早く丁寧だった。


「車は?」

「私が駐車場までお運びします」


駐車場専門のボーイだ、剛士から車のカギを預かるとすぐに車に乗り込み移動する。

駐車場は目の前にあるのだがスペースはそれほど空いているわけではない、そこに順番に駐車するから、まあ特に4WDは大きいので端に持ってこないとほかの車の駐車が狭くなりがち。

見ているとやはりスペースの広めな端の駐車場に止めていた。


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