デートは近場
デートは近場
デート当日電車に乗り吉祥寺へ、待ち合わせは駅の前。
「待った?」
「ううん」
なんと俺より先に彼女は待っていた、時間はというとほぼピッタリ。
なので遅れてはいないのだが、時間前に待っていてくれたことに少し恥ずかしさを感じる。
昔のデートと言えば男が先に待っているのが定説だったから。
「行こうか」
「うん」
駅の改札から入ると長い通路を歩いていく、当時は駅ビルなどはごくわずか。
この駅も当時は北と南の改札がかなり離れておりほとんどの人が反対側の改札は使わない場合が多かった。
「吉祥寺?」
「うん」
昔は男女の言葉のやり取りなどは少ない、特に異性だと話すことは極端に少なくなる、まあだからと言って恋愛には差程影響なかったように感じるのだが、それは男子の側のみの考えで女子はもっと男子に意思表示して欲しいと思っていたかもしれない。
電車はゆっくりと発車するが座席はほぼ埋まっており2人が座ることはなかった。
「ねえ、りゅうちゃん」
「なに?」
「竜ちゃんはなんでバイクに乗りたいの?」
「う~んなんでだろう、乗ってた先輩がかっこよかったからかな」
「ふ~ん」
そうバイクという機械にまたがり颯爽と走る姿はまるで現代の騎士、その姿にあこがれないものはその当時あまりいなかったのではないだろうか。
特に大型と言われる750ccに関して言えば憧れだった。
「車の免許はとらないの?」
「車は免許が取れても買うお金がないよ」
「家では誰も車に乗らないの?」
「親父が一応乗ってるけど、ファミリーカーじゃないから」
「ふ~ん」
「美紅んちは?」
「うちは父さんが乗ってるけど軽トラックだから」
彼女の家は工務店、内装工事を主に請け負っている。
彼女の父は昔のヤンキーで奥様はその当時に惚れて付き合っていた美しい女性。
もちろん今もラブラブらしいが、彼女には弟と妹がいてかなりその対応は大変らしい。
だが親の血筋は受け継いでおり早いうちから相手を見つけ物にする、その選択は間違ってはいないのだろう、まあ俺が将来どうなるのかはその当時決まってはいないのだが。
「りゅうちゃん大学には行かないの?」
「俺は専門学校に行こうと思う」
「そうなんだ、私もそうだよ」
「そう言えば美容学校に行くんだっけ」
「りゅうちゃんその話誰から聞いたの?」
「皆知ってるでしょ」
「えへっ!」
そう彼女は皆に言いふらしておりわざわざおれの耳に聞こえるように触れ回っている。
彼女の家では弟と妹の2名がこの後控えているため、自分がいくら大学に行くぐらいの頭があっても進学は金銭的に難しい。
当時美容学校は2年制ではなく1年制のため1年学校にいけば卒業してその後インターンとして働く事になる。
俺はその当時建築デザイン系の専門学校へ行こうと思っていた。
「兄弟が居ると大変だな」
「そうなのかわいそうでしょ私」
「嬉しそうに言ってもね~」
まるで慰めてくれてもいいのよと、待ち構えているような仕草。
まあ彼女は美容師になるというのが今は夢になっている為、大学へ行けるとしても進路は代わらないと思う。
「りゅうちゃんは建築系の専門学校?」
「デザイン系ね」
「そうなんだ・・」
吉祥寺の駅で電車を降りるとその先は中央通りを進んで行く、左右から配られるビラとティッシュはなかなか強引だったが、殆どが美容室のチラシだったのを覚えている。
吉祥寺でのデートはほぼウィンドウショッピング、何処が楽しいのかわからない、この頃の男子の思考はそれぐらい自己中に偏っていた。
まあ俺は女子とデート自体それほど経験が無く、見るもの全てが新鮮に感じていたから美紅の行くところに変な先入観はかったのだが。
それでもお店を2・3軒回ればおのずとつまらなくなっていくのは仕方が無いところ。
「それでミクは何を探しているんだ?」
「着るものよ」
「ふ~ん」
「見てわからない?」
「何が?」
「ほらこことここ」
そう言うと自慢の胸を張って下から押し上げ、さらに腰に手を当てポーズをとる。
クラスメイトのナイスバディを見せ付けられれば、その当時身を九の字に曲げては勝手に盛り上がる欲望を押さえるのが必至だった。
「もうDカップじゃ入らないんだよね」
「オッフ・・」
「なにしてんのよ、私の方が恥ずかしくなるじゃない」
「て言うかそれは反則だろ」