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原付免許

原付免許


昔の映画やドラマではそんなシーンが多かったのも覚えている。


というわけで夏休みに入りすぐに原付き免許の取得を試みる。

原付き免許は免許を取るときの登竜門と位置付ける人も居るが、お金さえあれば最初に中型免許を教習所で取ることも可能だから、どこから始めても結果は同じ。

そうお金に物を言わせて中型免許から取るやつも当時は結構居た、あれはずるいと思う仲間もいたが。

要は親に出してもらっているわけで、自分で取ったという感じは無いといいたい。

まあそんなのは小さなプライドだが、当時はそんな事にも拘りがあった事を覚えている。


「筆記50問、45問で合格か・・」

「ああ恥ずかしいからちゃんと勉強して受かろうぜ」


俺達は本屋で原付き免許の絶対合格という本を買い猛勉強したが、内容は殆どが知っていることばかり。

そして2択が多いというか、2択のみだ。

だからと言ってそれを馬鹿にすると落ちてしまうことになる。

いわゆる引っかけ問題が多いからなのだが。

だがここはほぼ誰でもクリアできる、クリアできないのは相当頭が悪いか、かなり馬鹿にして何も勉強してこないかだ。


俺達は当然のことならがら2人共に合格、当日免許が発行された。


「やったぜ!」

「おおやったな」

「実はもう俺バイク買ってあんだ」


そうこの時高志はすでにバイクを手に入れていた、要は前にも書いた親という切り札を使用していたのだ。


「おま・・そりゃずりーだろ」

「その代わり親の会社で夏休み中全部バイトだよ」


高志いわく、買ってやるから働けとしかも親の会社で、高志の親は土建業を営んでいた。

そう土木工事のアルバイトだ、そりゃ一番時給の良いバイトの一つ。

誰もがやりたがらない3Kといわれる(きつい)(汚い)(危険)といわれる仕事だ。

その代わりに普通の倍のバイト料が手に入る。

そうすりゃ半月ちょっとで目標額の15万まで稼げる、だが親が言うには夏全部バイトしろと言う話でそうすれば保険料も払えるからと言う。


通常原付きバイクでも強制保険というやつは入らないといけない、それに事故りやすい初心者には任意保険も必要、それをかけないと乗らせてもらえないという話。

そうバイク本体の価格のみを考えていただけでは、いけないという話になってきた。

勿論高志がそうするなら俺もそうするしかない。


「なんだまじかよ」

「お~だってコケるだろ」


自転車でこけるんだからバイクでもコケる、そりゃ誰でもわかる。

当時の道路は半分がアスファルト、半分はまだ砂利か土だった。

国道は確かにアスファルトだったが横道は全て砂利の道。

雨でも降ればどう考えても滑って転ぶ、自転車ならばまだいいが当時のバイクは曲がらない止まらないといわれていた。

ブレーキは原付きの場合、前後輪がドラム式のメカニカルブレーキ。

要するに手の握力で止める、まあディスクブレーキも握力なのだが、その構造がかなり違う。

回るタイヤの内側からテコの応用でパッドをこすり付けるドラムに対して。

円盤を両側から油圧で押さえ込むディスクブレーキ。

この止める機能の問題が片やワイヤー駆動の握力式に対して油圧式というやつの違い。

ワイヤーは伸びるし錆びる、そう雨が降るとさらにパッドがすべり利きも悪くなる


この頃の原付きはそう言う高級な安全装置が追いついていなかった。

当時は大型バイクでようやくディスクブレーキを採用し始めた、そのストップパワーは従来のドラム式ブレーキを軽く越えていたからだ。

だとしても道路の砂利や土には結局勝てないのだが、アスファルトじゃ無ければ使えないストップパワー。

高速道路がどんどん延長されるとバイク乗りは競って大型バイクを手に入れようと必至になった事は言うまでもない。

当時の最高速度がバイクで200k、今なら鼻歌混じりで出せる速度が40年前は必至で出せるかと言うスピードだった。

勿論レーサーならばすぐ出せたが市販車は相当改造しなければ無理だった。


「明日からバイト三昧か・・」

「おお、まあしかたないけどな」

「俺もバイトしないとな」

「工場だっけ」

「近くの工場で朝から夕方までな」

「そうか、当分遊べないな」

「ああ、それよりあまり浮かれて事故んなよ」

「わかってるって」


その日から約ひと月俺たちはアルバイトに励んだ、そして半年が過ぎたころ。


「リョウちゃんあそぼ~」

「ミクおはよ」

「ねえ今度の日曜日どこか行こうよ」

「日曜か・・」

「ねえいいでしょ」

「あ~その日は・・わかったでもどこに行くんだ?」

「買い物に付きあってくれればいいよ」

「普通にデートだな、わかったよ」


その頃はまだ週休2日などという甘い誘惑などはなく土曜日は午前中のみ授業という週休1日制が常識だった。

だから彼女とデートと言えば日曜日なわけで、バイクを手に入れていない俺にとってはデートと言えば電車で出かけるのが一番の移動手段。

まあ最初から彼女が買い物と言っているので、一番近いのが吉祥寺、そして次が新宿、背伸びするなら青山・原宿辺りかな。

免許取得から半年で何故バイクを手に入れていないかというと、その理由は親に反対されたから。

その代わり高校さえ卒業すればOKだそうだ、ここで高志にかなりの差をつけられるとは思いもよらなかった、だがその分女子との親密さは進んで行く。


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