ミクは
ミクは
「それじゃこれからもよろしくな」
「はい 有難うございます」
いつの間にか挨拶を終えて俺はバイクの後ろにミクを乗せ駅前へ行きロータリー横にある喫茶店にて先ほどの浮かない顔の理由を聞いてみた。
「なんだ良いお父さんじゃないか」
「どうして直ぐに同棲してくれないの?」
「その後直ぐに子供が出来てミクは仕事は辞めて子育て、俺は就職も決まらないうちに学校を辞めて工場で働く事に、その後10年が経ち俺は工場労働者からは抜けられずいつの間にか子供のために働く毎日って未来か?」
「やなの?」
「逆に聞くが今の状態が何でいやなんだ?」
「だって心配なんだもん」
「それは俺も同じ」
「でしょ、なら良いじゃん」
「アパートの家賃は、電気代は、水道代は、おまけにガス代も電話代も」
「うっ…」
「最低生活費に公共料金だけで10万はかかる、その上食費が必要なんだぞ、親の元に居れば食費と少しお金を入れるだけで済む」
「もし2人だけで住んだとしてそれだけのお金を工面し更に子供の養育を考えてみろ」
「おまえも自由な時間は無くなるぞ、おれはそうならない為の準備が必要だと言っているだけで、それはミクのお父さんも同じ事を言っていただろ」
「頭の良いミクならわかるはず、他に何かあるのか?」
そこからはようやく本音が語られた、実は彼女の友人にすでに結婚して子供が居る女の子が居る。
その子が事あるごとに自分の子を自慢してくる、しかも相手の男は30歳を超えた小父さんだという。
こう見えてプライドの高い彼女はその友人に負けたくないらしい、だがそれはそれ他人は他人だ。
「だって~」
「たぶんそれは今だけだと思うぞ、それに5年後は必ず結婚まで考えているんだからそれでも無理やり進むなら俺は制約を課さないといけなくなる、まず家賃も生活費もミクに払ってもらう」
「え~それはやだ」
「なんだもうギブか」
「自分のわがままを俺に押し付けるならそれ相応の覚悟がないと続かないだろう」
「それに俺との楽しいデートもこぶ付きになる」
「…」
「夏休みは子育てで何処にもいけない、バイクで旅行なんて夢のまた夢」
「あ~もう、分かったよ~」
「どうせならそのおじさんと俺を比べてみれば良い、俺の方が若くてかっこいいんだろ」
「うん」
「じゃあ我慢しなきゃ、それとも俺を諦めて30歳越えの高給取りと付き合うか?」
そう言うとミクが顔を左右に振る。
「わがまま言わずに俺についてきて欲しいな」
そして抱きしめてキスをすれば、すでに彼女のもやもやは消え去ったらしい、ちなみにこの後も数年このやり取りは繰り広げられる。
女の子は相手が何を考えているのか不安になるらしい、男はあまり細かい事を話さないからね。
まあそれも時代と共に変化しつつはあるけど、俺はあまり話は苦手なほうだ。
特にしつこくされるとどんどん気持ちがなえてくる。
「わかった…」
「急がずにゆっくり、今を楽しもうよ」
その後は彼女を又家に送り届けて、家路へとバイクを走らせた。