表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/90

峠道

峠道


東京から諏訪湖へと向かうには当時、2人乗りで高速道路を使う事はできなかった、従って使える道は1本のみ、そう甲州街道だけだ。

国道20号線甲州街道を山梨へ、甲州街道をまっすぐ進めばおのずと諏訪までいける、とても分かりやすい道だ。

地図をあまり見れない人でもこの道だけは簡単に使えるだろう。

まずは駅前の通りをまっすぐに甲州街道へ、そのうち道路標識が見えてくるので標識に従い広い通りを曲がるまずは八王子へ、後は道沿いをまっすぐ行けばよい。

途中日野橋を渡る為に1回曲がるが、その前には又標識があるので、そこはさほど間違える事はないだろう。

2台のバイクは順調に走り始める、八王子まではかなり信号で止まらなければならないが。

それほど苦にはならなかった。

八王子を過ぎ高尾の駅へ近づくとそこからは山道へと進んで行く。

大垂水峠へ差し掛かると一気に山道へと景色は変わって行く、そしてこの時代ならではの決まり事がある、それは行きかうライダーがお互いの無事を祈りピースサインを交わすのだ。

お互いの無事を祈る、確か外国から伝わったと記憶している、黄色いピースマークも流行っていた。

まあそれにあまり気を取られているとカーブでふらつくので要注意だ。


そして最初の停車場所である中上屋のドライブイン、今は何も無くなってしまったが当時はこのドライブインを使用してUターン族などというライダーも流行っていた。


「やっぱり多いな」

「まあな」

「それより宿はどうするんだ?」

「諏訪に着いたらすぐに観光案内所に行って聞いてみる、3人だから一部屋で良いよな」

「え~やだよ~りゅうちゃんと二人っきりになれないジャン」

「おいおいそうでなくても、混んでる可能性が高いんだから、2部屋は取れないだろう」

「ミクちゃんそりゃ無いよ、俺の気持ちも考えてよ」

「え~りゅうちゃんはそれでいいんだ?」

「なにが?」

「チャンスだったのに?」

「そりゃ考えなくも無いけど、それは二人っきりで別な日に取って置くでしょ普通」

「我慢できるんだ、ふ~ん」


そういいながら体を摺り寄せてくる、一応回りには他のライダーや車で来ている家族連れも居るのでなんだか恥ずかしい。

販売機で缶コーヒーを買い一気に飲み干す、さすがに晴れの日だ段々暑くなってきた。

走っている間は良いのだが信号で止まればかなり暑い、バイクのエンジンの上はかなりの温度になっているだろう。

後ろに居るミクも安全のためとはいえスタジャンを着ているので、かなり暑そうだ。


「ねえりゅうちゃんこれ脱いじゃだめ?」

「もう少しがまんしてくれ甲府を過ぎればかなり涼しくなると思うから」


その判断は全く外れるのだが、ツーリングと言うのはそう言うものだ。

山梨の甲府といえば甲府盆地であり夏にはかなり気温が上がる、涼しいのはトンネルの手前まで。

トンネルを抜けるとその先は進むほど暑くなる、まあその先へ進めばバイクや車の数も減る事を予想していたのだが、それさえも裏切られる結果となり。

ついにミクはスタジャンを脱いでしまう。

流れに乗って大月を過ぎ、トンネルを抜け甲府へとバイクを進めるがあまりの暑さに道路わきの駐車スペースへと俺達はバイクを停めた。


「あつーい」

「ごめん読み間違った」

「脱いじゃおっと」


スタジャンを脱ぐとタンクトップにGパン、ブラはしているがそのスタイルはやはり抜群だった。


「高志君見とれすぎ」

「えっ仕方ないだろ」

「H!」


汗のせいで薄手のタンクトップからは下着のブラが透けて見える、その迫力は眼に毒だった。

それを知っていたからこそ脱がせたくは無かった、彼女は俺の考えている事など気にしてはいないだろうけど、俺は出来るだけ誰にも見せたくは無かった。


「ミク俺のTシャツ、リュックから出して」

「どうするの?」

「ミクが着るんだよ」

「え~せっかくのプロポーションが…」

「おまえは少し自重しろよ、そのうち襲われるぞ」

「りゅうちゃんにならいつでも良いよ」

「おまえな~ならいまやってやる!」

「あ~うそうそ~今はやめ~」


この暑い中、2人はしばしじゃらけあい、ミクはむっとしながらもしぶしぶTシャツを頭からかぶり、その少し大きいTシャツの匂いをかぎだす。


「りゅうちゃんの匂いがする」

「ちゃんと洗ってあるやつだぞ」

「じょうだんで~す」

「おまえら見てるとあきね~な」

「そうか?」

「ああ」

「さてそろそろ先へ進みますか」


後はほぼまっすぐ北へ進めばよい、途中のドライブインで食事を取ろうとしたが、そこはかなり混んでいた。


「どうする?」

「先へ進もう」


小休止を取りながらも、中々昼食を摂る為のお店が決まらない俺に、ミクが後ろで叫んでいる。


『あそこ!あそこで良いよ!』

『えーなんだって?』


バイクのヘルメット越しに会話をしようとしても風音とエンジン音に遮られ話し声は殆ど聞こえない。

この頃からインカムのような商品はあったが、当時はまだ高いため購入できるのは熟年ライダーが殆ど。

まだETCも無かった頃、手に入れたのはせいぜいハンドルヒーターが関の山だった事を覚えている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ