そして当日
そして当日
前日の高志との話で夜もあまり寝れない状態、このとき初めて自分は結構ビビリなのではと考えてしまった。
当然のことながら目覚ましは6時に設定、親にもちゃんと話してあり計画もしっかり伝えてある。
たぶん誰かに言うと馬鹿にされるだろう、ガキじゃ有るまいし一々親に言う必要など無いだろうと。
まあそう言いたいやつには言わせておけばいい、だが俺は万が一の事まで考えた。
それは事故、一応俺達は任意保険に高い金を払いかけてはある。
勿論使う事のない運転を心がけるのだが、いくら注意していても事故は起こるものだ。
道路と言うのは自分だけが使うわけではなく色んな人が様々な乗り物を運転する場所であり、それは常に流れ続けて居るわけで。
時間と共に危険性も変わってきたりする。
この日朝8時に駅前のロータリーで待ち合わせをし、9時前に出発すると言う予定を立てた。
俺の彼女は隣の駅から10分ほど歩いた住宅地に住むが高志の彼女は、結構住んでいる場所が遠く1時間とは言わないが電車で30分以上離れた町に住む。
なので高志は俺より先に起きて迎えに行くということになっていた。
「おはよ~」
「おはよう」
俺は待ち合わせの場所として一番分かりやすい駅前のロータリーを指定した。
彼女の家は住宅街の為バイクの音に対して結構敏感だという事と、その日父親は仕事だという。
すでに俺たちが付き合っているという事がばれていて、何回か母親には会ったこともあるが、彼女の父とは顔を会わせていない為、もし出会えば気分が悪いだろうという事で駅前での待ち合わせとなった。
「高志君きた?」
「いやまだだ、あいつは一度彼女を迎えに行くみたいだから、少し遅くなるかも」
時刻はまだ8時2分、ミクは俺に言われたとおりGパンにTシャツそしてスタジャンと言うルックス。
スタジャンは少しこの季節だと暑めだが、バイクに乗ればそれほど暑くは感じないだろう。
それから30分、後ろから高志の乗るXSが到着。
ヘルメットを脱いでその渋そうな顔を晒す。
「あれ?彼女は?」
「だめだった…」
「えっ来ないの?」
「あいつスカート履いてきたんだよ」
「着替えればよくない?」
「それがさ、持ってないんだと」
「メモは渡したんだよな」
「ああ10日前に渡したはずだ」
「まあ仕方ないか、3人で行こう」
「ああ悪いな」
詳しく聞けば高志は話さないわけに行かなくなるがこの話、この後高志は彼女とは別かれる事になる。
やつの初めての彼女と言うわけではないのだが、高校を卒業して短大に入った彼から見れば、やっとそちらへの一歩と言うべき相手ではなかったのだろうか。
まあそれは後でゆっくりと高志に聞いてみる事にして、俺達は予定通りとまでは行かないが朝9時前に諏訪湖へとツーリングに向かった。