第91話[海の英雄]
人魚の国に着いた俺達は早速、王様の所へと向かった。
人魚の国の王様に頭を下げるゾルドワーク国の王。
人魚のお姫様から事情を聞いた人魚の国の王は眉を顰め、目を閉じて考え事をしていた。
「お父様、どうかゾルドワーク国の王様を許してあげて下さい」
「彼は悪くないのです」
「うむ、分かっておる」
「それに人間である勇者殿にも多大なる恩もあるしな」
そう言って人魚の国の王様は俺を見つめてきた。
別に恩を感じる様な事は何もしていない。
そう王様に伝えると「何を仰る」と言って返されてしまった。
「仲間を想い、その幼き命をかけ我が国を救おうとした勇気、我は感動致しました」
「ゾルドワーク国の王も頭をお上げ下さい」
そう言うと王様は人魚の国の国民を集め、事の経緯を説明した。
そして……。
「我が国はこれより中立の立場を止め、人間側につく事にした」
「皆、海で魔王派の魔物が人間を襲っていれば無条件で人間を助けるのじゃ」
地鳴りの様な歓声が王国内に響き、皆んなが俺を海の英雄と称し讃えてくれた。
「セッちゃん難しい事わかんない」
「これはこれは、申し訳ない事をしましたな」
「それではこれから英雄誕生の記念会を開きましょうぞ」
えっ、いいよ。
そんな恥ずかしい事しなくて。
コミュ症の俺にとって、そんなのされたら地獄そのもの、出来る事なら止めて抱きたいのだが……。
「うわーい、美味しい物が食べられる」
「ああ、愛しの弟が英雄だなんて……」
「お姉ちゃん、嬉しい」
「ふむ、これはこの国を観察するチャンスなのでは?」
ちょっと、三人がそんなんじゃ、断れないじゃん。
結局、パーティは開かれて俺は海の国の国民達に、手を振り応えるパレードに参加させられた。
そして……。
「勇者殿、いや勇者様」
「我が娘が話したい事があるそうで」
何だろう。
世間話しではないよな、多分……。
相談事かな?
人魚のお姫様には今回かなり世話になったしな。
俺が暴言を吐いた後、俺の事を庇ってくれたり、今回だってゾルドワーク国の王様が襲われない様に頑張ってくれた。
俺も出来る事なら姫様の助けがしたい。
そんな事を考えていると、お姫様はとんでもない事を言い始めた。
「私、勇者殿との卵を産みたいです」
「おお、それはいい」
「海の英雄と姫との子か、きっと可愛いじゃろうな」
「義息子に玉座を明け渡す日も近そうじゃな」
いえ、そんな日は絶対に来ません。
つか、お姫様も顔を赤くして目を合わせてくれないし、どうしよう。
恩がある分、傷つけられない。
そんな中、ルリ姉が俺を抱き寄せてくれた。
「人魚のお姫様、申し訳ないけどタッティーナはまだ子供なの、だからそう言う話しは大人になってからね」
流石ルリ姉。
いつも困った時に助けてくれる。
「まあ、私ったらお恥ずかしい」
「勇者殿、また大人になったら考えて頂けますか?」
「えっ、まあ……」
そう言って話しをしていると、ゾルドワーク国の王様も混ざってきた。
「ハッハッハ、私の所のジャジャ馬も嫁として貰って欲しいものだな」
いや、お姫様はもうじゅう……ぶん。
俺は忘れていた。
姫様に手紙を送っていた事を……。
「ルリ姉、急いで帰らないと」
俺はルリ姉に事情を説明し、それを聞いたルリ姉の顔が青くなっていく。
このままじゃ、ゾルドワーク国と戦争にならないか?
不安に駆られながら俺達は陸に上がり、チョコの上に乗って、姫様の所へ急いで向かった。
第91話 完




