第68話[任せてください]
再び領主から手紙が届いた。
そこには金貨二枚に値上げするという内容のものだった。
この時、俺達家族は理解する。
領主はお金が目当て何かじゃない、俺達をこの街から追い出したいんだと。
「明日、領主様の所へ行くよ」
そう言って溜め息を吐く父。
「あなただけに行かせられないわ、私も行くわ」
母さんに続き、ルリ姉も行く事を告げる。
そして俺も……。
「キュッ」
ポチも行く気なのか?
そうだな、家族皆んなで行こうか。
そして翌日、俺達は領主の家に向かう為、馬車へ乗り込んだ。
そんな時だった。
「タッくん何処行くの?」
「セッちゃんも行く」
セツコ……。
セツコには迷惑かけられない。
領主を怒らせてしまえばセツコの家族も街を追い出されてしまう。
だから俺はセツコに連れて行けない事を告げる。
すると……。
「いいじゃないですかタッくんさん、どうしても連れて行かないのなら私がセッちゃんさんを連れて行きますよ」
そう言ってサナが現れた。
結局大きい馬車を借り、セツコとサナを領主の家に連れて行く事に……。
そして……。
「領主様、金貨二枚に値上げする何て酷いです」
そう訴える父を領主は鼻で笑う。
「ならばその魔物を逃がせばいいだけの事」
「それは……、できません」
「この子は私達の家族です」
「だから……」
「ならば金を払って頂こう」
「それが出来ないのならこの街から出て行け」
どんなに頭を下げても聞く耳を持ってくれない。
それでも俺は諦めない。
俺は領主に一生懸命、ポチは悪い魔物では無い事をアピールした。
だけど……。
「悪いが勇者殿、どんなにそのスライムが良い魔物でもお金は払って頂きます」
そんな……。
落ち込む俺を見て、セツコが怒りを露わにする。
「何かセッちゃん、ムカムカする」
「駄目ですよ、セッちゃんさん」
「ここは私が」
そう言ってサナが前に出た。
「あなたは?」
「どうも、お初にお目にかかります私の名前はバルサ・ナントレイ」
「稀代の天才錬金術師でございます」
「あなたがあの……」
えっ、サナってそんなに有名な人だったの?
領主に「あの……」と言わせる何て……。
そう思っていたが、領主の次の言葉を聞いて俺は思わず溜め息を吐いた。
「街で無許可で物を売っている錬金術師のバルサ・ナントレイさんですか」
「……いや、すいません」
サナはそう言って笑いながら謝っていた。
いや、サナよ。
悪名を轟かせてどうする?
「コホン、タッくんさんが姫様の婚約相手の候補だとご存知で?」
サナの言葉を聞いて領主の顔が青くなる。
そしてセツコは笑う。
「プッ、タッくんまたコンニャクって言われてる」
お願いだからセツコはちょっと黙ってて。
「このままだと、王様達から責められる事になりますよ?」
「ぐっ、しかし私は領主としてこの街の人達を守る義務がある」
そう言って領主は何故、俺達を追い出そうとしたのか語り始めた。
ポチは老若男女関係なく街の人気者。
それならそれでいい。
だが、スライムに勝てない程の小さな子供達がポチに慣れ、街の外のスライムと接触すればどうなるか?
最悪、殺されてしまうかも知れない。
幾ら親がポチは特別だと教えても本当に理解できるのか?
言う事を素直に聞くのか?
それら不安要素を取り除かない限り、ポチを街の住人として迎え入れる事はできないと領主は語る。
「成る程、分かりました」
「なら、この私がその不安要素を取り除きましょう」
そう言ってサナは一週間以内に解決する事ができたら、ポチを街の住人として迎え入れる事を領主に約束させた。
第68話 完




