第66話[糖質OFF]
俺はポチを抱きしめながら、両親に家で飼えないか相談してみた。
またスライムに襲われる可能性もある。
だから家で……。
反対覚悟で相談したつもりだったのだが……。
「よーし父さん、もっと仕事頑張っちゃうぞ」
「コレから新たに家族が増えるんだからな」
そう言って、父さんは俺の頭を撫でてくれた。
「母さんもお隣さんとの長話を止めて何か仕事を探すわ」
母さん……。
「私もクエスト受けて貢献する」
ルリ姉……。
「セッちゃんもお菓子の盗み食い止めるね」
うん、それは本当に止めた方がいいよ。
セツコん家のおばさんも母さんに愚痴ってたし、叱られて泣いてる声、俺の部屋まで届いてたからね。
「ポチさん、良かったですね」
「いい家族が出来て」
「それでは私は帰ります」
そう言ってサナは帰っていく。
「良かったなポチ」
「コレからはずっと一緒だぞ」
「キュッ」
笑った顔が何とも可愛い。
こうしてポチは新たに家の家族となった。
そして数日後。
「あっ、ポッちゃんだ」
「可愛い」
セツコの呼び名が浸透したのか、周りからポッちゃんと呼ばれ、ポチは街の人達から可愛がられていた。
「おっ、ポッちゃん」
「野菜の切れ端食うか?」
「まあ、ポッちゃんじゃないか」
「ほれ、お菓子じゃぞ……」
散歩させる度に食べ物を与えられ、何だか太ってきた気がする。
なので、コレからは断る事に……。
「あっ、タッくん」
「ポッちゃんのお散歩に行くの?」
「セッちゃんも行く」
そう言ってセツコがポチの散歩について来る。
そんな中、セツコが最近ポチが太ってきたんじゃないかと指摘してきた。
「そうなんだよ」
「まあ、太っていても可愛いんだけど健康面が心配で、だから街の人達から貰える食べ物を断ろうかなって思ってるんだ」
「セッちゃんも協力するね」
それはありがたい。
あんまり人と話すの得意じゃ無いからな。
そんな事を思いながら散歩をしていると……。
「おや、ポッちゃん」
「ほれ、今日もお菓子を……」
「お婆ちゃん駄目」
「ポッちゃんは今太り気味だから駄目なの」
「代わりにセッちゃんが食べてあげるね」
えっ?
セツコが食うの?
「どうだいセッちゃん、美味しいかえ?」
「うん、すっごく美味しい」
「そうかい、ならもっとお食べ」
お婆ちゃんからお菓子を受け取り、幸せそうに食べるセツコ。
コレってポチの為に用意したんじゃ……。
まあ、お婆ちゃんが喜んでいるならいいんだけど……。
「おお、ポッちゃん」
「野菜の切れ端食うか?」
「セッちゃん、野菜きら〜い」
「えっ……?」
セツコ、目的変わってるぞ。
八百屋のおじさんも戸惑っているじゃないか。
俺は経緯をおじさんに伝えた。
そして野菜なら大丈夫だろうと思い、おじさんから切れ端を貰う事に……。
「セッちゃんがあげる〜」
そう言って野菜の切れ端をポチに与えるセツコ。
まあ、たまにはこんな日も悪くはない……かな?
第66話 完




