第65話[旅人の話し]
目覚めた俺は両親とルリ姉に抱きしめられていた。
体中にできた赤い斑点、セツコがここまで運んできてくれたのだろう。
今回の件は本当にセツコに助けられた。
俺は素直にセツコにお礼を言った。
「えへへ、タッくんに褒められた〜」
喜ぶセツコを見て、俺も自然と笑顔になる。
ポチもセツコに助けられた事を理解しているのか、セツコの足元に擦り寄って来ている。
やはり、仲間達に攻撃されたのはコレが原因なのかな……。
俺達のせいで……。
落ち込む俺を見て、サナがこんな話しをし始めた。
ある森で遭難してしまった旅人が居た。
だが彼は旅してきた知識を活かして火を起こしたり、食べられる植物を見つけたり、飲み水の確保をしたりして、難なく森での生活を満喫していた。
そんな彼の元に魔物達の群れが現れた。
魔物達の群れは旅人に何かするでも無く、ただ監視するだけ。
特に襲われる事も無い為、安心して森を散策できたのだが……。
ある日、一匹の魔物が彼にちょっかいをかけ始めた。
恐らく群れのボスに自分の強さをアピールして出世する為なのだろう。
その魔物は昼夜問わず、彼に悪戯を仕掛けてきたのだ。
そんなある日、群れのボスがその魔物を袋叩きにしていた。
彼は自分を助けてくれたのだろうと思い群れのボスに感謝し、そして何とか森から抜け出す事が出来た。
「いい話しだね」
そう言って感動するセツコにサナは「実はこの話しにはまだ続きがあるんですよ」と言って続きを話し始めた。
とある王国の学者にこの話しをすると、学者は大笑いしました。
何故笑っているのか理解できない彼に、学者はこう言ったのです。
「君を守ったんじゃ無くて、群れを守ったのだ」
魔物達が皆んな、人間の様に知識があるとは限らない。
旅人が出会った魔物は人間=怖い存在だと考えていたのでしょう。
一人を倒せば複数の人間が現れ、群れを攻撃してしまう。
そう思ったから、ちょっかいをかけていた魔物を袋叩きにしたのだろうと学者は説明しました。
彼が遭難して一人だと理解出来なかったんですね。
彼を監視してたのも、変な事をしない様に見張っていただけだと学者は言いました。
さて、一体どちらが正しいのか……。
「つまりはそう言う事です」
「自分のせいだとか考えるのは無意味ですよ」
「スライム達がポチさんを襲った理由何て分からないんですから」
「でも……」
「それでも自分を責めるのなら、私なりの考えを話して差し上げましょう」
そう言うとサナは自分の考えを語った。
「何故、今日何です?」
「もし私達のせいなら山で山菜を収穫した日か、その翌日くらいが相場でしょう」
「何せ人間の匂いが染み付いているのだから」
「ただ単に他のスライムに出会わなかっただけじゃ……」
「今日まで?」
「一匹もですか?」
うっ、言われてみれば確かにそうだ。
今日まで一匹も出会わない何て可笑しい。
「私が考えるに、誤って別のスライムが新たに縄張りにしている場所に入ったからだと考えてます」
「それじゃあ……」
「私達のせいじゃ無いんじゃないでしょうか」
「まあ、絶対とは言い切れませんがね」
もしそうなら本当に良かった。
俺はポチを抱きしめて涙を流した。
第65話 完




