第54話[大人な対応]
このままじゃ駄目だと思い、俺は家からお金を持ち出しある場所へ向かった。
「ねぇお兄ちゃん、何処行くの?」
「ねぇねぇ」
「ねぇってば」
「五月蝿いなぁ、良い所だよ」
「もしかしてあの世?」
「やっと死ぬ気になった?」
俺は幽霊を無視して突き進む。
そして目的地に到着したので、俺は幽霊の顔を覗いてみた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ここって、もしかして……」
「教会だけど?」
「いや、お兄ちゃん駄目、教会だけは絶対に駄目」
そうだろうそうだろう。
教会だけは絶対に駄目だよなぁ。
強制的に成仏させられちゃうもんなぁ。
俺は幽霊の女の子相手にマウントを取れた事を喜び、ゲスい顔をしていた。
さて、さっさと終わらせるか。
「バイバイ、悪霊ちゃん」
「いや、止めてお兄ちゃん」
「謝るから、もう悪い事しないから」
「だから許して」
フン、絶対に許さない。
第一、子供の悪い事しないはあてにならん。
泣き叫ぶ悪霊を背に、俺は教会の中に入っていった。
「おおっ、タッティーナ」
「また教会を借りたいのかな?」
そう言って手を出し金を要求する神父に事の経緯を説明した。
「なるほど、悪霊を祓いたいと、任せなさい」
「私がどんな悪霊も祓ってみせよう」
「さあ、そこに座って」
俺は言われるがまま席に座った。
そして、神父は聖書を開き、それを読み始める。
ふと、嫌な予感がしたが俺は考え無いようにした。
一時間後。
眠気でウトウトする俺に神父が話しかけてきた。
「眠いかな?」
「それは体内から悪霊が出て行っている証拠だよ」
「悪い気を体から出すのに体力を消耗しちゃうからね」
「……」
それから更に一時間後。
「ふう、終わったよ」
「もう、君から悪い気は感じられないねぇ」
「いやぁ、おじさん頑張っちゃったよぉ」
「せめて銀貨一枚は欲しいなぁ」
「あの、居ます」
「えっ?」
「悪霊居ます、祓えてません」
「つか退屈だったのか、俺の隣で寝ています」
初めから嫌な予感はしてたんだよ。
だって、本当に幽霊が見えてたなら、また教会を借りに来たのか何て言わないだろ。
寧ろ、どうしたんだその子って言うよ。
「さてはゴネて金を払わないつもりだな」
「置いてけ、金を置いてけ」
俺は手持ちの金を渡し、教会を後にした。
「良かった、これでじっくりお兄ちゃんを呪い殺せるね」
「あの、もう悪い事はしないで頂けます?」
「駄目だよ」
「お兄ちゃんは私と二人であの世に行くんだから」
くそ、神父が駄目なら神様に……。
後日、神様にお願いしてみたが駄目だった。
あの世で導く事はできるが現世で彷徨える魂まではどうする事もできないとか……。
「これからもよろしくね」
「おにぃ〜ちゃん♪」
第54話 完




