第45話[偉人]
「タッティーナ、私我慢できなくてその……」
「駄目……かな?」
もちろんエロイベント何かではない。
季節は夏、夏といえば海や川、そして……。
「いいよルリ姉、その水着を着ればいいの?」
「ありがとうタッティーナ」
「愛してる」
俺は女性物の水着を着てルリ姉を喜ばせてあげる。
いや〜、それにしても可愛い水着だなぁ。
カツラでも被れば女の子に見えたりして。
俺がそんな事を考えていると、いきなり部屋の扉が開かれた。
「あっ、タッくんが女の子の水着を着てる」
「へ〜んなの〜、プププ」
セツコテメー、毎回毎回、人の家に勝手に入っては部屋をノックもせずに開けやがって。
見ろ、ルリ姉がこの世の終わりかの様な顔をしてやがる。
「違うのセツコちゃん、これは……」
「いいんだルリ姉、ここは俺に任せてくれ」
「セツコ、一+一=分かるか?」
「プププ、そんなのニに決まってんじゃん」
俺は粘土を二つ用意した。
かの偉人、エジソンは言った。
一+一=ニでは無いと、大きな一であると……。
俺は粘土を二つ混ぜ、大きな一を作りセツコに見せた。
「嘘、一だ……」
「セツコよ、常識に囚われていては人は成長しないぞ」
「この世界にはセツコの知らない事が山程あるんだ」
「男が女性物の水着を着て美を競い合う、美少年コンテストだってあるんだぞ」
まあ、嘘だけど。
「成る程、タッくんさんは美少年コンテストに参加されるんですね」
「私も初めて見た時は刺激が強すぎて大変でした」
「かなりのレベルの美少年が美しい女性物の水着を着てアピールしてましたからね」
「でも開催地はここからかなりの距離がありますので、行くなら覚悟が入りますよ」
えっ、本当にあるの?
つか、サナいつの間に……。
「タッティーナ、美少年コンテストだって」
「フフフ、タッティーナが参加したら優勝間違い無しね」
「何せ私の自慢の弟だもの」
ルリ姉、言い過ぎだよ。
まあ、でも……、ルリ姉がどうしてもって言うなら考えなくも無いけど。
「タッくんなら優勝間違い無しだね」
「タッくんよりカッコいい人いないもん」
おいおいセツコ、褒め過ぎだって。
まあ、セツコも可愛い方だと思うぞ。
「サナはどう思う?」
俺は笑顔でサナに聞いてみた。
一応、美少年コンテストを見て来た人だしな。
率直な感想を聞きたい。
「えっ、いや……、優勝……、できるといいですね……」
「……」
俺はルリ姉とセツコの屈託の無い笑顔を見て思った。
この二人の笑顔が答えなのだろう。
俺は美少年。
でも、美少年コンテストには参加しないでおこうかな。
第45話 完




