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第41話[変人]

洞窟内に連れてこられた俺はある異変に気づく。

洞窟内が妙に暑い。

低体温症の症状じゃなく、本当に暑いのだ。

俺は厚着していた服をその場で脱いだ。


「キャッ、タッくんのエッチ」


俺はおバカなセツコを置いて洞窟内の奥へ進む事にする。


「何かいつもの洞窟だね」

「つまんないから帰ろうか?」


「いや、もしかしたら魔王軍の幹部が雪を降らしているのかも知れない」

「原因を確かめなくちゃ」


まだ子供だからスローライフを送っているが、俺だって早く魔王を倒したい。

セツコに魔王軍幹部を倒させれば、お供の俺にも経験値が手に入るだろう。

それでそこら辺の魔物を狩りまくればレベルも上がり、一人旅に出られるってもんだ。


「本当に魔王軍幹部がいるの?」


「ばっか、こんな吹雪、雑魚が降らせられる訳ないだろう」


「そっか、流石タッくん」

「頭良いね」


俺は無駄な会話を止め、そっと洞窟の奥へ進んだ。

セツコが負ける展開は出来るだけ阻止したい。

不意打ちを決め楽に勝利し、俺は街の英雄になる。

そんな野心を抱きながら進む事、一時間。

俺は魔王軍幹部よりヤバい奴を発見してしまった。


「どうしましょう」

「カキ氷が食べたくて洞窟内の水を凍らせたのは良いのですが、氷を取る手段がありません」

「うーむ、一体どうしたものか?」

「この天才を悩ませるとか氷さん、あなたも中々やりますね」


大きな声で叫びながら高笑いする少女。

コイツが原因か。


「タッくん、変な人がいる」


「セッちゃんも気付いたか、アレは変人っていう人種なんだよ」

「本来なら関わらない方がいいんだが、街の事もある」

「行って話してくるか」


「うん」


俺とセツコは変人に会いに向かう。


「おや、こんな所に子供が……」


オメーも子供だろうが。


「一緒にカキ氷食べますか?」


「カキ氷?」

「何か分からないけど美味しいのなら食べる」


全くセツコは、変人に関わるなと言ったばかりだと言うのに……。

とりあえず現状を把握しとくか。


俺は幾つか彼女に質問をした。

まず彼女は何者なのか。


「私ですか?」

「私は稀代の天才錬金術師、バルサ・ナントレイです」

「皆んなからはサナと呼ばれています」


俺達も自己紹介をして次の質問をする。


「えっ、何故洞窟が暑いかですって?」

「それは最高の状態でカキ氷を食べる為ですよ」

「洞窟内は猛暑、湖は氷点下」

「これがなせるのは私が錬金術で作ったポッカポッカのお陰です」

「どうです?」

「お一つ如何です?」


セツコが物凄く欲しがっていたが、俺はそれを止め次の質問をした。

何故、外が吹雪いているのか?


「いやー、この地域の夏が暑すぎましてですねぇ……」


彼女の暑苦しそうな服装を見て俺は思った。

薄着しろバカ。


「カキ氷が食べたくなったんですよ」


まあ、そこに関しては気持ちは分かるが……。


「そこで自分だけカキ氷を食べて涼んではいけないと思いまして、街の皆さんにもお裾分けしようと考えたんです」

「そう、涼しさのお裾分けです」


凍え死ぬはバカ。

コイツの話しを聞いていてよく分かった。

コイツは絶対にセツコ以上にヤバい奴だ。

俺は吹雪の原因であろう機械を壊すようセツコに指示を出した。

すると奴は……。


「良いんですか?」

「カキ氷、食べられなくなりますよ?」


「えー、セッちゃんカキ氷食べたい」


そう言ってセツコはあっち側の位置に着く。

そうか、敵対する意思を俺に示しているんだな。

なら……。


「良いのかセッちゃん?」

「このままだとパパもママもルリ姉も死んじゃうよ」


「えっ?」

「セッちゃん、それは嫌」


「俺もセッちゃんと口を聞かなくなるし、セッちゃんの顔も見たくない位に嫌いになっちゃうぞ」


「それもヤッ」


「だったら分かるよね?」


「うん、セッちゃん機械壊す」


「良くできました」


「うん」


セツコは機械に向かって歩いて行く。

すると……。


「させませんよ」

「この稀代の天才錬金術師の私がカキ氷を食べるまで全力で阻止します」


どれだけカキ氷が食べたいんだよ。


「セッちゃん、殺さない程度にゲンコツしてあげて」


「うん、わかった」


セツコのゲンコツで稀代の天才錬金術師サナ様は気を失われ、無事に機械を破壊する事ができた。

俺達は稀代の天才錬金術師サナ様を放置し、カキ氷のシロップを強奪し、街へ帰りルリ姉に氷を作って貰い、それを削り、この世界に来て初めてカキ氷を食べたのだった。


第41話 完

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[一言] 何だろう?この世界の強い奴は変な奴しか居ないのか?
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