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第39話[名探偵]

お茶会から一週間。

俺は平和な生活を送っていた。

何が平和だったのか、セツコが来るまでは気がつかなかった。


「タッくん、遊びに来たよ」


「セッちゃん、久しぶりだね」


ここ一週間、セツコの顔を見ていないから平和だと感じていたのか。

出来ればこのまま来なくても良かったのに……。


「セッちゃんはここ一週間、何してたの?」


「えっ、旅行だけど……」


プッ、嘘ついてる。

もしセツコが旅行に行くのなら大分前からその話しばかりしていただろう、それが無いって事は旅行に行って無いって事だ。

まあいい、少し話しに乗ってやるか。


「へ〜、何処に行ったの?」


「えっ、砂漠だけど……」


えっ、砂漠?

嘘にしても砂漠は無いだろう。


「何しに行ったの?」


「トゲのある植物を食べに行ったの」


えっ、トゲのある植物ってサボテンの事かな?

サボテンステーキとか聞いた事あるけど……。

あんなの本当にあるのかな?

実物を見た事が無い。

つかサボテン食いに砂漠って……。


「セッちゃん、本当は?」

「どうせ悪さして外出禁止になったんでしょ?」


「ぢぃっがうもん、セッちゃんはただ大きな丸いケーキを晩御飯の前に食べただけだもん」


なるほどな。

それはセツコのお母さんもブチ切れるわな。


「全部食べたの?」


「うん」


やっぱりか……。

大きな丸いケーキは恐らくホールケーキだろう。

この際、それを食べきった事には突っ込まない。

問題なのは何故、セツコの家にホールケーキがあったのかだ。

ホールケーキなんて季節イベントか誕生日以外、用意しないだろう。

季節イベントは今の時期無い、なら誕生日か……。

セツコの誕生日なら、しつこくプレゼントを要求してくるのでそれは無い。

セツコのお母さんの誕生日ならセツコのお父さんが仕事帰りに買ってくる筈だから家に隠し置いている事も無いだろう。

なら……。


「セッちゃん、最近お父さんの誕生日ってあった?」


「知らない」


えっ、何か可哀想。

でも、親の誕生日って以外と覚えていないものなのかな?

そういや、俺も両親の誕生日は知らないや。


「セッちゃんのお母さん、お父さんにプレゼントとかあげてなかった?」


「ん〜、何かあげてたかも……」

「あっ、でも二人共仲は良かったよ」


結婚記念日とか……じゃないよね。

俺の家ではそういった日はご飯が豪華になるだけで、ケーキは無かったし……。

やはり誕生日か……。


「でっ、ケーキを全部食べてお母さんに怒られたと」


「うん、すごく怒られちゃった」

「晩御飯抜きだって言われちゃった」


まあ、ホールケーキ食べたんだから仕方ないか……。

晩御飯もどうせ食べられなかっただろうし。


「でもね、パパがこっそりパンとスープを持ってきてくれたの」


へぇ、パパ優しいな。

んっ?

待てよこれって……。


「でもセッちゃん、お腹いっぱいだから要らないって言っちゃった」


やっぱり、まあホールケーキ食ったしね。

そりゃ、食べられないわな。

パパ可哀想だけど……。


「それでね、夜お腹空いたからパパを起こしたの」


いや、ママを起こそうよ。

きっとパパの方が優しいからセツコの奴、パパを起こしたんだろうけど……。


「パパ、笑顔でご飯を作ってくれたんだ」


セツコのお父さん、きっとセツコが可愛くて甘やかしちゃうんだろうな。


「でも不味かったの」


えっ?


「不味くて食べられなかった」


ヤダッ、パパすっごく可哀想。

でも不味いなら仕方がないのかもしれないなぁ。

いや〜、子供って素直だから時に残酷だよな。


「結局ママを起こしてご飯を作ってもらったんだ」


俺はその話しを聞いて、今度パパに何かプレゼントをすると良いよとセツコにアドバイスをした。

後日、セツコがお母さんに聞いてみたらしく、その日はセツコのお父さんの誕生日だったらしい。

誕生日なのに、ちょっと可哀想だな。


第39話 完

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[一言] 親の心子知らずか…
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