第34話[学]
俺はピヨに触れる為、防火対策として魔力を纏う修行をしていた。
「体中に魔力を覆う感じで……」
魔力を覆う?
よく分からんが、バラエティー番組で芸人やタレントが全身にローションを被る感じかな?
そう思いながら修行し、やっとピヨに触れられたというのに、コイツは……。
コイツは……。
俺は明日セツコに服を買う約束をしてセツコの服の袖にピヨを近づけた。
ジリジリと焼け、煙を出す袖を見て俺は確信する。
コイツ、火の耐性を持ってやがる。
魔力を覆っていれば服は燃える事は無い。
なのに燃えたという事は……。
きっと他にも色々な耐性があるんだろう。
何でなん……。
何でセツコばかり高待遇なん?
つか、セツコじゃなく俺に能力アップかけろよ。
たまたま、俺担当の天使が休みだったのなら、出勤するまで神力使うなよ。
くそ……。
今すぐにでもセツコと俺の能力を入れ替えろ。
俺がそんな事を考えている時だった。
「あっ、そうだ」
「私ね、ママから数学を習ってるんだ」
「いくよ、一+ニ=三」
いや数学じゃ無くて算数じゃねーか。
「どう?」
「合ってる?」
「あ〜、合ってる合ってる」
「えへへ、タッくんも問題出してみて」
「じゃあ、八+五=?」
「三」
引いてんじゃねーか。
足せよ、五をよぉ。
「合ってる?」
「あ〜、合ってる合ってる」
「えへへ、じゃあ次はセッちゃんの番ね」
「五+五=?」
「十」
「ブッブー、正解は五十五でした」
……は?
「プププ、タッくんはお馬鹿さんだなぁ〜」
……。
いや、俺はこのままで良かったのかも知れない。
力を手にする代わりにお馬鹿さんになるのはちょっと無理かなぁ。
「あはは、セッちゃんは頭良いね」
「えへへ、タッくんも中々だと思うよ」
何が中々なのか?
俺はお馬鹿なセツコを見ながらそう思った。
第34話 完