第26話[守り合い]
翌日、俺達は人魚の国に行こうと海に立ち寄っていた。
だが、海に向かって叫んでも、人魚のお姫様が出て来る事は無かった。
「あれ、おっかしいなぁ〜」
「セッちゃんが叫べば一発なのに……」
そういや、前に世界中の海を旅しているとか言って無かったっけ?
何かあったら俺に力を貸す様に頼み回っているって……。
もしかして、まだ旅をしているのかな?
俺はルリ姉達にその事を話す。
「だとしたら、どうしよう?」
この広い海の中、人魚のお姫様を捜す何て不可能に近い。
俺達がそう考え悩む中、魔王が口を開く。
「ルビックに聞いてみたら、この近くの海に魔物の知り合いが居るらしい」
「人魚の国の王の所に行って、事情を説明してくれるみたいだ」
それを聞き俺達は一旦、街へ帰る事に。
ルビックの話しによると、お姫様は此処から大分離れた海に居るらしく、今王様が使いの者を向かわせているらしい。
そして待つ事二日後。
ルビックから人魚のお姫様が帰って来たという知らせを受け、俺達は再び海に向かう事に。
「あなたが魔王ですか?」
痩せた魔王を見て驚く人魚のお姫様だったが……。
「えっ、誰ですか?」
サナ達も美しくなった人魚のお姫様を見て、驚いていた。
「という訳で、街でパーティーを開く事になったんだけど、人魚のお姫様達も来てくれないかな?」
「まあ、素敵なお誘いありがとうございます」
「ですが……」
そう言って、お姫様は悲しげな表情を見せ、俺達に尻尾を見せて来た。
成る程、それじゃ俺達の街まで来れないか……。
もっとよく考えるべきだった。
ちゃんと考えていれば、お姫様が傷付く事は無かったのに。
後悔する俺の隣でサナが錬金術で道具を作り始めた。
「これなら移動できますよ」
そう言って完成したのが台車に乗った水槽だった。
「王様の分を含め、二つ作りました」
成る程、水槽に海水を入れ台車を押せば街まで簡単に移動が出来る……って、誰が台車を街まで押すんだよ。
街までかなりの距離があるぞ。
そう指摘すると、サナはニヤリと笑った。
「居るじゃ無いですか、我が仲間と魔王軍幹部に体力自慢の人達が……」
「成る程、こういう時こそ筋肉馬鹿のセツコが役に立つ訳ですね」
そうジャガルは言うが、皆んなの視線はセツコでは無く、ジャガルに向けられていた。
「えっ……」
確かに力ならセツコが一番強い。
だが、台車がある時点で力は然程重要では無い。
何せ台車を押す力があれば良いのだから。
寧ろ大事なのはスピードだ。
「て事は魔王軍幹部ではキョウギク辺りか?」
「はい、流石はタッくんさんです」
そう言うサナにジャガルが反論する。
「ちょっと待って下さいよ」
「流石の僕でも此処からタッティーナの住む街まで走ってもかなり時間がかかってしまいますよ」
冗談で言ったつもりだったんだけど、完走する自信はあるんだ……。
ジャガルの身体能力の高さに驚きつつも、俺は魔王にルビックの力を借りられないか頼む事にする。
「そうだね、頼んでみるよ」
そう言うと魔王はテレパシーを使い、ルビックに許可を取る。
「魔王様の頼みなら仕方ありません」
「その代わり、帰ったら頭を撫でて下さいよ」
「ああ、良いさ」
「幾らでも撫でてあげる」
「やったあ、キャルディの目の前で撫でて下さいね」
「えっ、何でキャルディの目の前で?」
「あっ、それと人魚達の件で勇者と二人きりで話したい事があるんで、伝えといて下さい」
魔王のテレパシーが終わり、俺達は人魚のお姫様に当日迎えに行く事を伝えて帰る事に。
それにしても、人魚達の件で話しがあるって何だろう?
何時に迎えに行けば良いとかかな?
だったら別に二人きりで話さなくてもいいのに……。
そう思いながら帰宅後、直ぐにルビックに会いに行くと、いきなり壁ドンをされた。
「お前さぁ、あんまり調子に乗んなよな」
「いきなり何だよ」
「魔王様を使えば何でも言う事を聞くと思ってんだろ?」
どうやら、こき使われた事を怒ってらっしゃる様だ。
「俺に何かしたら魔王様に言い付けちゃうぞ」
「言い付ける前に声帯を体内から瞬間移動してやるよ」
「バッカ、字がかけるだろ」
「だったらお前の指を全部切り落としてやる」
「お前自身、弱いんだろ?」
くそぅ、皆んなが俺が弱い事をバラすから、こんな事に……。
くそっ、こうなったら……。
「やだなぁ、調子に何か乗ってませんよ」
「それよりホラッ、ルビックちゃんの可愛いお顔が台無しですよ」
煽ててその場を収めてやる。
「あっ?」
「気持ち悪いんだよ」
そうルビックが怒鳴った時だった。
魔王が現れる。
「あっ、いたいた……、って何をしているの?」
「魔王様、えへへ、ちょっと勇者の顔に付いてあったゴミを取ってあげてたんです」
「フフフ、最近のルビックは本当に良い子だね」
いえ魔王様、この子は悪い子です。
チクったら殺すと言わんばかりの笑顔を向けるルビック。
心配しなくても言わないよ。
言ったら面倒臭い事になるし……。
「それで魔王、用事か?」
「うん、君のお母さんが捜していたよ」
「何でも、御使いを頼みたいとか……」
「そっか、なら急がなきゃだな」
俺は魔王の手を握り、その場を後にした。
「そうだ魔王、これからは俺の側から離れちゃ駄目だぞ」
「どうしたんだい急に?」
「いや、よく考えたら、お前を狙う人間が居るかも知れない」
「もしそういう奴が居たら、俺はそいつらからお前を守らないといけないからな」
そして魔王、どうかお前の子供達から俺を守ってくれ。
俺は人間達から、魔王は子供達から、お互いを守り合って生きて行こうな。
「わかったよ」
「ありがとう勇者」
「絶対だぞ、寝る時は俺の部屋でな」
寝込みを襲われたら堪らないからな。
こうして俺は魔王と片時も離れる事なく、日々を過ごしていこうと決意するのだった。
第26話 完




