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第24話[強烈なビンタ]

「勇者様、お久しぶりでございます」


王様との話しを終えた後、姫様が声をかけて来た。


「ずっと、お会いしとうございました」


そう言ってくれる姫様に俺は何て返せば良いのか困っていた。

久しぶり過ぎて何か緊張しちゃう。

どうしよう、何か言わないと……。

そう思い、短い時間で考え抜いた結果、発した言葉は「俺もだよ」だった……。


「まあ、勇者様もそう思っていただ何て嬉しいです」


顔を赤くして両手で頬を抑える姫様、そんな中、城中から黄色い声援が巻き起こった。

振り返るとそこにはジャガルとタイシ君の姿が……。


「彼方の方達は勇者様のお仲間さんですよね?」


「はい、大切な仲間です」


「見た所、凄いおモテになる様で安心しました」


んっ?

何でジャガル達がモテると姫様が安心するんだ?

そう思い、姫様に尋ねてみると……。


「いえ、何でもありませんわ」

(お仲間さん達がおモテになれば、勇者様に近寄る異性の方が減るだなんて、勇者様には口が裂けても言えませんわ)


「そっか、それより姫様、ちょっとお願いがあるんですけど」


そう言って俺はソルティナさんを紹介した。

彼女を騎士として雇ってくれないかという俺の頼みを姫様はあっさりと聞いてくれた。


「なっ、本当に良いんですか?」

「自慢じゃ無いですけど、本当に役に立ちませんよ」


ちょっと、ソルティナさん。

何言ってんの?


「構いませんよ」

「勇者様のお仲間ですもの、きっと優れた人格者に違いありませんわ」


姫様……。

ソルティナさんの性格の良さは保証します。

だってシトスフレア王国では人々に愛されていましたから。


「後悔しても知りませんよ」

「私のドジは筋金入りですからね」


……、ソルティナさん、本当に再就職する気あるんですか?

取り敢えず、ソルティナさんの再就職先が決まり、俺は姫様に一週間後に街でパーティーを開く事を伝え、一度家に帰る事に。

そして、ザネンを連れゾルドワーク国を訪れた。

王様に全ての事情を説明し、ザネンを謝らせる事に……。


「ホラ、ザネン謝って」


「サーセンした」


何処のヤンキーだよ。

王様を前にし、態度の悪いザネン。

そんなザネンの横で魔王が王様に頭を下げた。

魔王は魔王で自分の為に頑張るザネンを注意出来なかった事を王様に謝り許しを請う。


「なっ、魔王様、人間何かに頭を下げるのはお止め下さい」


そう言って魔王を止めようとするザネンにタイシ君が言う。


「ザネン、君もちゃんと謝るんだ」

「僕も謝るから」


そう言ってタイシ君が王様に頭を下げた。


「くっ、申し訳ありませんでした」


そう言って謝るザネン、そんなザネン達の姿を見て、ゾルドワーク国の王様は溜め息を吐いた。


「正直、謝られた所で許す事などできん」

「其方の所為で多くの国民達が苦しみ、何人かの人間が死んだ」

「だが、そこに居るタイシ殿のお陰でこの国が救われたのも事実……」


あの時、ネクロマンサーの力を使い、タイシ君は人々を守っていた。

それに、あの時タイシ君がこの国に居なかったら、俺達はザネンに殺されていたかも知れない。

何せ、国民が人質に取られていたからな。

迂闊に手出しなんて出来なかった。


「それに勇者殿のお陰で今や国が豊かになった」

「彼を許す事でその恩に報いる事が出来るのなら致し方ない」

「ただし条件があります」

「もう二度と悪さをしないと誓えるのなら、その者を許す事にしましょう」


そう話す王様にザネンは誓った。

もう二度と悪さはしないと、そして王様は魔物達と共存していける世界を作る事に協力してくれると言ってくれた。


「魔王殿、親睦を深める為に食事でもどうですか?」


「呆れた、そんな事を言って、只お酒が飲みたいだけでしょう」


そう言って現れるお姫様。

セツコが「お姉ちゃん」と言って抱きついていく。


「長旅、お疲れ様」

「それで彼方の方は?」


セツコの頭を撫でながら、尋ねてくるお姫様にセツコは仲間達を紹介していく。


「へぇ、ルタっていうの」

「私はミカリレ、この国の姫であなたのお兄さんとお姉さんの友達よ」


へぇ〜、ミカリレって言うんだ。

知らなかった……、って、えっ?

そういえば、ゾルドワーク国のお姫様の名前、今まで知らなかった。

つか、近所の国の名前も姫様の名前も知らないや。

今までずっと姫様って呼んで来たし、特に調べようともしなかったっけ……。

今更になって、何だか不味い気がしてきた。


「それでね、お姉ちゃん」

「あそこに居るジャガルって奴がセッちゃんをイジメるんだよ」


「まあ、あなたは可愛いからね」

「虐めて気を引きたいのでしょ」


何処の小学生だよ。

俺は怒りで震えるジャガルを宥め、お姫様に挨拶しに向かう。


「お久しぶりですミカリレ姫」


「急に名前で呼んでどうしたのよ」


「いや、その……、付き合い長いし名前で呼んだ方が良いかなと思いまして……」


「とか言って、さっきまで私の名前知らなかったでしょ?」


見抜かれてる……。


「つか、セッちゃんは知ってたの?」


「知らないよ」


知らんのかい。


「だってお姉ちゃんはお姉ちゃんだもん」


そう言ってセツコはゾルドワーク国のお姫様に甘えた。

全く、セツコの奴は幾つになっても変わらないな。


「それでえっと……」


「いつも通りお姫様でいいわよ」

「結婚したら名前で呼んで欲しいけれど……」


んっ?

声が小さくて最後がよく聞こえなかった。

まあ、いいか。

どうせ大した事、言ってないだろう。

そう思って、一週間後に開かれるパーティーにお姫様を誘った。


「へぇ〜、パーティーねぇ〜」

「勿論、伺うわ」


「やったぁ、お姉ちゃんとパーティー」


「良かった」

「それじゃあ、俺は宿を取りに向かいます」


「へっ?」

「もう行くの?」


「はい、今日は馬車に長時間乗って疲れましたんで、宿で体を休めたいと思います」


「だったら、お城で泊まっていけば良いじゃない」


「旅に慣れた所為か、宿の方が落ち着くんでそっちで良いです」


宿によっては室内にお風呂も入れるし……。


「お城ならタダよ」

「それに豪華な料理と大きなお風呂が付いて来るわ」


「豪華な料理、大きなお風呂⁉︎」

「タッくん、お城に泊まろうよ」


「いいよ俺は、豪華な料理よりベッドでのんびりしたい」


それに大きなお風呂つっても、そこまで行くのに長い廊下を歩かなきゃだし、宿屋にある小さなお風呂で十分だよ。


「くっ、コイツ……、分からないの?」

「私はあんたと一緒に居たいって言ってんの」


「えっ?」


「あっ……、この馬鹿」


顔を赤くしたお姫様にビンタされ、俺は気を失う事に……。

目が覚めたら、何処かの宿屋のベッドに寝かされ、側には魔王が立っていた。


第24話 完

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