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第18話[差し出される手、拒む爪]

「へっ?」


「いや、へっ?じゃないでしょ」


これから自分を殺すかも知れない相手に家族の事とかペラペラと話しやがって、殺せる訳無いじゃないか。

まあ、元々殺す気は無かったけど……。

だって、あんなに幹部達に殺さないでくれと頼まれ、タイシ君には泣きつかれ、更には僧侶の格好をしてまで、俺達を助けてくれた魔王を殺せる訳無いじゃないか。

その事を魔王に話すと直様、反論して来た。


「なっ、魔王を倒し、世界を救うのが君の役目だろ」


「いや、だってお前何もしてないじゃん」


「ぐっ、人を……、殺している」


「タイシ君の村の人達の事を言っているのか?」


「ああ、そうだ」

「どうだ、僕は殺すに値する程の悪党だろ?」


確かに前の世界じゃ、犯罪者だけど……。

悪党かと言われるとどうなんだ?

正直、何が正しいか何て俺には分からないよ……。

ただ分かる事は俺がコイツを殺したく無いって事だけだ。


「元々、冤罪なんだ……」


「へっ?」

「何を言って……」


そうだよ。

冤罪を晴らす為に何で俺は殺したくも無い奴を殺さなきゃいけないんだ?

コイツが、もっと魔王らしく残酷で冷徹な奴なら躊躇なく殺せたが、そうじゃ無い。

確かに人に迷惑はかけているだろう。

幹部達がして来た事、そして人間界で悪さをする魔物達。

俺もスライムに殺されかけた事がある。

それでも……。


「なあ、知ってるか」

「俺の家にはポチって名前のスライムが居るんだ」


それだけじゃ無い。

俺と絆を深めたゴブリン達や村で人と共存していたミノタウロスのモー助君だって居る。

それに先代の魔王の子供のメデューサだって、ジュウベイさんと一緒に暮らしていたじゃないか。

俺はその事を話し、魔王に手を差し伸べた。


「一緒に生きて行こう」


人を殺すつもりが無いのなら、その事を王様達に話して回ろう。

何も殺し合う必要なんて無い。

勇者の俺が言うんだ。

必ず王様達を説得し、魔王を殺さなくて済む世界を作って見せる。

そう話す俺の手を魔王は爪を尖らせて引っ掻くのだった。



第18話 完

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