第14話[魔王]
遂に魔王が……。
固唾を飲み込み、俺は魔王の部屋の扉に手をかけた。
ギイィと響き渡る音と共に俺の前に現れる廊下。
その廊下を見つめ、俺はボソリと呟いた。
「まだ続くのかよ」
廊下に敷かれたレッドカーペットを歩き、俺は不安を抱きながらも、目の前の扉を開く。
(階段とか出てこないよな?)
「待っていたよ勇者」
扉を開けた途端に聞こえて来る声。
そしてベッドには魔王が座っていた。
「やはり、君が魔王だったんだな」
「僧侶様」
先代のネクロマンサーの話しを聞いて何となく理解していた。
僧侶が魔王だって事を、でもならどうして俺を助けたんだ?
俺を助けても良い事なんて何も無い筈なのに……。
その質問に魔王は答えてくれた。
「君には借りが二つあるからね」
「借りって……、俺は何もしていないけど?」
「そんな事は無いさ、君はネクロマンサーをあの村から解放してくれた」
「そして、先代の魔王の遺産であるメデューサを助け様としてくれた」
「どれも僕が原因で僕が出来なかった事をしてくれたんだ」
そう言って魔王は語る。
タイシ君を生き返らせた後の事を……。
今ではタイシと名乗っているが、彼には名前が無かった。
そんな彼がした事と言えば、村人全員を生き返らせた……、いや、ゾンビとして蘇らせたの方が正しいのかな?
「話しを聞いて分かっていたけど、あの時出会った村人達は……」
「皆んな死んでいる」
だろうな。
考えてみれば俺が大人と殴り合える訳ないしな。
そんな事を考えながらも、俺は魔王の話しに耳を傾ける事に……。
「すまない、僕は命を奪う事でしか人を救う事は出来なかった」
そう謝る僕に対し、ネクロマンサーはこう話してくれた。
「いえ、疫病に効く薬を作りたいから蘇らせただけです」
それが嘘なのは直ぐに分かった。
魔王城でネクロマンサーの能力意外に他の能力を彼に与えた。
そしてそれが終えると彼は人間界に降り、あの村でいつも通りの生活を送っていたからだ。
きっと彼は待っていたのかも知れない。
僕が彼に手を差し伸べるのを……。
だけど僕には手を差し伸べる事が出来なかった。
僕は誰も救う事が出来ないから……。
「君がネクロマンサーに手を差し伸べてくれたお陰で彼は前に進む事が出来た」
「その時に彼の父親の事も話す事が出来たよ」
「父親って……、タイシ君の?」
「そう、彼は最後までネクロマンサーの事を想っていたよ」
勇者にそう言うと僕はあの時の事を思い出すのだった。
第14話 完




