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第9話[裏切り者]

ずっと怒りに身を任せ、破壊衝動に従って生きてきた。

その方が楽だったからだ。

だけど、その所為である事件が起きた。

それは何百年も昔の事だった。

ルビックが僕のオヤツを取ったんだ。

僕はいつもの様に怒りに身を任せ、破壊衝動に従っていく。

そして……。


「ティギル、お願いだティギル、元に戻っておくれ」


気がつくと僕は魔王様の体に手を貫通させていた。

大好きだった魔王様に僕は大怪我を負わせたんだ。

その気になれば僕何か簡単に消し去る事が出来るだろうに、魔王様は僕を傷つけまいと自らが負傷する覚悟で僕を止めてくれた。


「悲しむ必要は無い」

「君が元の優しい子に戻ってくれて僕は嬉しいよ」

「ほらっ、ルビックが食べてしまったから僕の木の実をあげよう」

「だから泣かないでティギル」


その日から僕は部屋から一歩も出ない事を決意した。

ネクロマンサーに頼み、体に鎖を巻いて貰う。

戒めの為に、部屋には魔王様から貰った木の実を置いてある。

もう、ドロドロに腐ってしまったけれど、それでもその木の実を見て、あの日の事を思い出し、誰も傷つけない様に気を引き締めてきた。

それなのに……。


「どうして魔王様を狙う」

「僕は本当は誰も傷つけたく無いんだ」

「なのに君が来て、戦わなければならない」

「そうしなきゃ、魔王様が殺されちゃうから」


いつの間にかティギルのバーサーク状態は解け、彼は涙を流しながらタッティーナを殴っていた。

そしてタッティーナの胸にしがみつきながら、タッティーナに懇願する。


「お願いだよ勇者、魔王様を殺さないでくれ」


「僕からもお願いだ、魔王様を殺さないでくれ」

「あの方は君を二度救っている……」


「ルビック、それ以上は話してはいけないよ」

「そして勇者よ、君一人で僕の所に来てくれないか?」


魔王のその言葉にタッティーナは答える。


「分かった」


しがみつくティギルを優しく引き離し、タッティーナは海賊刀を拾う。

ザネンも魔王の命令通り、タッティーナの体から出ようとした時だった。


「ネクロマンサー、もういいんだ」


振り返るとタイシ君がナイフを持ち、俺の背後に立っていた。


「でも、このままだと魔王様が殺されてしまう」


「大丈夫、覚悟は出来ている」

「それにまた、君に辛い思いをさせたくない」


そう話す魔王、正直何がなんだか分からない。

タイシ君がネクロマンサー?

ずっと、俺達を騙していたっていうのか?

つか、それより……、何で幹部達も驚いた顔をしてんだよ。

お前達、兄妹じゃ無かったのかよ。


「魔王様、何を仰られているのですか?」

「ネクロマンサーがこんな人間な訳無いでしょう」

「奴ならティギルに……」


ザネンの言葉を最後まで聞かずに魔王は答えた。


「あれはネクロマンサーの遺体だ」

「彼は二代目だ」


そう言うと魔王は先代のネクロマンサーについて語り始めるのだった。


第9話 完

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