第2話[私はこの子のお姉ちゃんだから]
突然のタッティーナの絶叫にその場に居た誰もが驚く。
タッティーナは両膝を地面につけ、涙を流しながら、ピクリとも動かない。
「ヤダな、タッティーナ」
「さっきのは冗談よ」
そう優しく声をかけるルリだったが、タッティーナにその言葉が通じる事は無かった。
そんな中、キャルディが笑う。
「やった、成功だ」
「奴に幻術をかけてやった」
「後は自らの手で死ぬのを待つのみだ」
キャルディの叫びを聞いたルリ達は自分達の所為でタッティーナが傷付いたんじゃない事を理解する。
「出来したぞキャルディ」
そう叫ぶザネン。
だが、タッティーナの様子が何処か可笑しい事に気づく。
涙を流すだけで、一切動こうとしないのだ。
「どういう事だ?」
「全く動こうとしないぞ」
過去のトラウマの原因の人物と対峙し、タッティーナが廃人になっている事を皆んなは気付いていない。
それでも、動かないんだ。
殺そうと思えば簡単に殺せる。
そう思い、タッティーナを殺そうと動くシグラとザネンをネクロマンサーが止めた。
「これ以上は戦う必要が無い」
「魔王様を狙わないと誓い、魔王城から撤退するのなら、勇者は元に戻し、其方に返す」
「だから誓ってくれ、魔王様を狙わないと……」
そのネクロマンサーの言葉にザネン達が反対する。
そんな中、キョウギクはネクロマンサーの隣に行き、ザネン達に「約束した筈だ」と声をかけた。
「ならばどうする?」
「約束を破っただけで兄弟を斬ると言うのか?」
「魔王様が居るこの城で」
ザネンのその言葉にキョウギクは動揺する。
「フヒヒ、誰が何と言おうと勇者を元に戻すつもりは無い」
「私が死んでも勇者の苦しみは続く、もう勇者を元に戻す方法何て無いのさ」
そう叫ぶキャルディ。
そんな中、ルリがタッティーナの元へ走る。
「させるか」
そう言って動き出すザネンとシグラ。
そんな二人をルリは「邪魔しないで」と叫び、一瞬で凍らせた。
「タッティーナを苦しめる奴は誰であろうと許さない」
「私が絶対に許さない」
「だって私はこの子のお姉ちゃんだから」
そう涙を流すルリを見て、サナ達は円を描き、タッティーナとルリを囲んだ。
「かつてタッくんさんだけが、シャルディの術を破りました」
「その姉であるあなたなら、キャルディの術を破る事が出来るでしょう」
「失敗しても大丈夫だよ」
「皆んなでタッくんにキスすれば、いつかは元に戻るかも知れないから」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんをよろしくね」
仲間達がそれぞれ、ルリに声援を送る。
「安心して下さい」
「私がお二人を守ります」
「我が友、タッティーナをよろしくお願いします」
「役に立たないかもしれないですが、僕も頑張って戦います」
「ですからルリさんも、タッティーナをよろしくお願いします」
皆んなに囲まれながらルリはタッティーナを抱きしめるのだった。
第2話 完




