第70話[伝説の武具]
全てが終わった。
これでやっと魔界に行ける。
そう思ったのだが、城が広く笛を吹く場所が何処にあるのか分からない。
あちこち行ったり来たりしているとエレザさんが話しかけて来た。
「何やってんだ?」
「いや、えっと……、魔界の入り口を……」
取り敢えず詳しい話しをサナがしてくれた。
それで俺達がウロウロしている理由が分かったエレザさんは部下達に命令して一緒に入り口を探してくれる事に、そして一時間が経過し、一人の部下が地下通路を発見した。
「ありがとうございます」
俺は海賊達にお礼を言うと、地下へ降りて行く。
そこに何故だかソヒィアさんとエレザさんがついて来る。
何故?
そう思いながらも進む事数分。
俺達は分かれ道に直面していた。
「此処は右だな」
そう自信あり気に言うとエレザさんは右に向かって行った。
「どうする?」
「此処はエレザさんについて行ってみましょう」
「なぁに、なにかあっても先頭のエレザさんが大変な目に遭うだけですよ」
そう言ってゲスい顔をしてエレザさんの後を追うサナ。
本当に大丈夫なのかよ。
そう思いながらも後に続くと、そこにはお宝が置いてあった。
素人目でも分かる一級品の装備品達。
白と銀の色合いの鎧と兜、そして剣と盾。
それらが俺には輝いて見えた。
何だよコレ、ラストダンジョンによくある伝説級のアイテムか。
ウッシッシ、海賊だからお宝に対しての嗅覚が半端ないのかな?
何はともあれ、エレザさんについて行って良かったぜ。
そう思い、早速装備してみたのだが……。
「重くて動けない」
何だよコレ、期待だけさせて置いて装備出来ないじゃないかよ。
つか……。
「臭え」
何だよこの鎧と兜、滅茶苦茶臭いじゃないか。
セツコもあまりの臭さに鼻を摘んでいるよ。
「んっ、何か紙があるぞ」
そう言うとエレザさんは紙に書かれた文字を読み始めた。
「汗っかき中年男の伝説の武具、此処に納める、尚臭い為持ち出し厳禁だってさ」
「馬鹿じゃないの、こんなもん捨てろよ」
俺はそう怒鳴ると鎧と兜を脱ぎ捨てた。
「たく、何の嫌がらせだよ」
くそっ、服に臭いが染み付いてやがる。
「んっ、何セッちゃん?」
「いや、何でも……」
何かセツコの様子が変だ。
一体、どうしたんだろ?
そう思い、セツコに近づいてみると……。
「いや〜、来ないで」
「えっ……」
何だろう、凄く傷ついたんだけど……。
「ハハハッ、一体どうしたんだろうな、ジャガル……」
「すみません、シンプルに臭いです」
「……」
やばい、泣けてきた。
「ゴホッゴホッ、お兄ちゃん臭いよ」
「ルタ、お姉ちゃんの所に来なさい」
あれ、皆んなどうしちゃったの?
涙目になる俺にサナがトドメを刺して来た。
「うっ、タッくんさんが歩く度に臭いが風に乗り、その……、吐きそうなので動かないでくれます?」
もういいや。
お前達何て知らない。
ストーカー女……、いやソヒィアさんなら俺を受け入れてくれる筈、今なら婚約書にだってサインしちゃうよ。
そう思って近寄ったのだが、泣きながら拒絶された。
「ごめんなさい、あなたの全てを受け入れられ無くて本当にごめんなさい」
そんな……。
茫然とする俺にエレザさんが声をかけて来た。
「取り敢えず、シャワー浴びて来い」
「そうします」
第70話 完




