第67話[姉の強さ]
婚約書を破いてからのルリ姉は凄まじかった。
ストーカー女の攻撃を最も簡単に交わし、そして攻撃を仕掛ける。
だが、相手の力を利用しダメージを与える彼女に対し、無闇矢鱈に攻撃を仕掛けるのは愚策では無いのか?
ルリ姉はその事を理解しているのだろうか?
そう思っていた。
だが……。
「なっ、倒せない……」
ルリ姉の手首を掴み、そう呟くストーカー女の顎めがけ、ルリ姉は掌底を喰らわせた。
彼女の脳が揺さぶられ、一瞬だけ白目を剥き気を失い、持っていたナイフと掴んでいたルリ姉の手首を離すが、執念なのか彼女は直様意識を取り戻し、ルリ姉に攻撃を仕掛けて来た。
その攻撃を交わし、ルリ姉は彼女の鳩尾に掌底を喰らわせる。
両膝を地面につき、胃の中の物を吐き出す彼女を見下ろしてルリ姉は呟いた。
「勝負着いたわね」
何も答えず、吐き続ける彼女を背に、ルリ姉は俺に笑顔を向ける。
「タッティーナ、終わったわよ」
そう言って俺の所に向かって来るルリ姉。
そんな時だった。
ストーカー女は落ちているナイフを拾うと一直線にルリ姉めがけ突進していく。
「ルリ姉、危ない」
俺の叫びを聞いて、ルリ姉は「大丈夫」と言うとストーカー女の腕を掴み、綺麗な一本背負いを決めるのだった。
第67話 完




