第61話[報告]
ロキとチェロが起こした事件はタッティーナの心に深い傷として残っていた。
王国の救護班の診察を受け、異常無しと診断されたものの、様子見として一日間、入院する事に。
ご飯を食べに行く位なら外出をしても良いと診断されたのだが……。
「絶対に行かない」
そう言って頑なに病室から出ようとしなかった。
「音楽を聴きながら飯が食えるか」
「もう芸術何て真っ平ごめんだよ」
「セッちゃんも音楽はもういいかも……」
この事件で救われた人は少ない。
タッティーナとセツコに回復魔法をかけた後、ルリは負傷者を捜しに街を回ったが、手遅れな人が多く、少人数しか救えなかった。
そんな三人に少しでも元気になって貰おうと食事に誘ったサナだったが……。
「そうですよね、音楽を聴きながら食事何て出来ないですよね」
「無神経でした」
「ごめんなさい」
落ち込むサナを見て罪悪感を抱くタッティーナ、仕方がないのでタッティーナ達はサナが探してくれたお店に行く事にする。
「そう言えば、ルリ姉はどうして元に戻ったんだ?」
アニソンにしか興味無い俺と音楽を分かっていないセツコ、俺達二人は最初から踊らなかったけど、ルリ姉は違う。
それなのにどうして?
そう疑問に思う俺にルリ姉はあの時の状況を説明してくれた。
セツコの叫びで目を覚ましたルリは薄暗い場所にいた。
此処は何処?
そう思うルリの前にボヤけた映像が映り出す。
そこにはボロボロの姿のタッティーナが横になっていた。
「とても辛くて悲しくて、気がついたら動ける様になっていたの」
俺の事が心配で音楽の呪縛から解き放たれたのかな?
「ごめんねお兄ちゃん、私は元に戻らなかった」
「でも、お兄ちゃんの事は大好きだよ」
涙ながらにそう訴えて来るルタの頭を俺は撫でた。
「大丈夫、ちゃんと分かっているから」
ルリ姉はああ言っていたけど、あの音楽の呪縛を解くのはそう簡単な事では無いのだろう。
サナ達も俺とセツコの事を想ってくれている筈だ。
それなのに踊りから解放される事は無かった。
かつて魔王軍幹部のシャルディがルリ姉の存在を消した様にあの音楽に一度でも囚われてしまっては、それを解くのは困難なのだろう。
「そう言えばジャガル達は?」
「ああ、ジャガルさん達は事件について王様に報告しに行って貰っています」
ジャガル達を置いて俺達は外食か。
本当にいいのだろうか……。
がっ、予想よりも報告に時間がかかり、ジャガル達が帰って来たのは夜更けになった。
王様から食事を振る舞われたのはいいが、未だに犯人は見つかって居らず、俺は一人で寝るのが怖くて、ジャガルとタイシ君と一緒に寝る事にした。
第61話 完




