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第59話[復讐]

あの火事の一件から生き延びたロキは皮肉にも両親を殺した強盗達から生きる術を学んでいた。

高い身体能力に加え、全身大火傷にも関わらず、生きて歩いて行ける程の治癒能力。

それらに恵まれ、彼は民家に忍び込んではその住人達を殺し、食べ物を食い漁っていた。


ふと鏡に映る自分の顔を見て、ロキは苦痛の叫びを上げる。

「醜い」や「化け物」と言った言葉が彼の頭に再生される。

そんな中、彼は民家にあったお面を手にした。

これで醜く無い。

彼はそう思い、ペルーア王国の殺人鬼として街の住人達を恐怖のどん底へと落としていったのだった。

そんな彼に初めて向けられる「美しい」と言う言葉。

チェロを殺すつもりだった彼は、手に持っていた包丁を思わず床に落としてしまう。


「何て素晴らしいんだ」

「小さな子供には痛みを与えず綺麗に殺し、大人には残虐無慈悲の滅多刺し……」

「ああ、こんな美しい殺し何て見た事がない」


当然、チェロは人が死んだ所を見た事が無いのだが、この時の彼は興奮して、自分でも何を言っているのか理解していなかった。

そんな彼にロキは仮面を外し、素顔を見せる。

ロキの手は震えていた。

自分の顔を見て、彼がどう思うのか?

気持ち悪いと言って自分を馬鹿にするのか、将又この醜い顔を見ても彼は自分を褒めてくれるのだろうか?

それが知りたくてロキは仮面を外したのだ。

月明かりに照らされたロキの顔を見て、チェロは興奮しながら彼に話しかける。


「殺しは誰から習ったんだ?」

「もしかして、独学かい?」


思っていた回答とは違う返事が返ってきて、ロキは困惑しながらも首を横に振り、自分の顔を指差した。


「成る程、やはり独学だったのか」


そうじゃないと言いたいが、喋れないロキは床で血の文字を書き、チェロとの意思疎通を計った。


「私の顔を見てどう思うか」


そう読み上げるとチェロはロキの顔をまじまじと見つめる。


「特に何とも……、いや良く見ると芸術家の顔をしているな」

「君はこの街の住人達の誰よりも素晴らしい芸術家の顔をしているよ」


チェロが何を言っているのか理解出来なかったロキだが、彼の芸術家の顔をしていると言う言葉を聞いて、思わず涙を流してしまう。

大好きな両親と同じ芸術家……。

こんな醜い僕が……。


「おっと、すまない」

「僕を殺すのだろう」

「さあ、好きに殺してくれ、僕を君の作品の一つにしてくれ」


どんな殺し方でも受け入れるつもりのチェロにロキは首を横に振り応えた。


「殺さないのかい?」

「だったら僕を君の助手にしてくれ」

「僕にこれから作る君の作品の全てを見せてくれよ」


こうしてロキはチェロと行動を共にする様になった。

数年の月日を得て、彼を知り、彼の過去を知ったチェロはロキにこの国を滅ぼそうと話しを持ちかける。


「君を貶した愚かな街の住人達を……、それを野放しにした国王を、僕達で殺すんだ」


差し出されるチェロの手を握り、ロキはこの国を滅ぼす為に立ち上がる。

自分を貶した人間達の顔なら覚えている。

最愛の両親を殺した強盗達の顔も覚えている。

この国の王は両親を殺した強盗犯達を捜そうともしなかった。


「さあ、共に行こう」

「我が友、ロキ」


チェロの言葉に力強く頷くとロキは刃物を持ち、チェロは時計塔へ向かい、演奏をした。

こうして街の住人達はチェロの奏でる音楽を聴き、踊り出し、ロキは踊る住人達を次々と殺して行くのだった。


第59話 完

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