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第51話[救い]

いつもの様に先祖の遺産を回収する旅をしていたある日の事、僕はとある村に立ち寄ったんだ。

その村では疫病が蔓延していて、道を歩けば腐敗した死体が転がっていた。

家の中から聞こえて来るのは咳をする音のみで、誰も村を歩いている姿は無かった。

そんな中、遺体に紛れて一人の少年と出会った。

彼に食べ物と水を与え様とするが、彼は酷く衰弱しており、それらを食べる力も無かった。

そんな彼が声を絞り出す様にして、この村の人達を助けてくれる様に僕に懇願する。

だが、僕には薬の知識も無く、この村の人達の病気を治す事は不可能だった。

だから僕は別の意味でこの村の人達を救う事にしたんだ。


「別の意味って?」


「苦しみを与えず楽に殺してあげる」

「それが僕の出した答えさ」


どの村人も最大で一か月位しか生きられないだろう。

一か月間、病気で苦しむ位なら楽に殺してあげるべきだ。

僕はそう考えたんだ。


「人によっては死ぬ間際にありがとうと言ってくれる者も居た」

「だけどね、今でも時々思うんだ」

「僕は間違っていたと……」

「あのまま、何もせずに村を出て行くべきだったと思うんだ」


僧侶の手が震えている。

フードを深く被っていて表情は分からないが、恐らく苦痛の表情を浮かべているのだろう。


「勇者様はメデューサ達を守ったのだろう?」

「迫り来る矢からその体で……」


「でも守りきれなかった」


「それでも勇者様は守ろうとした」

「二人を生かそうとしたんだ」

「誇っていい」

「僕は人の命を奪って救おうとしたのだから、勇者様は僕何かより大分立派さ」


そう言うと僧侶は俺に指輪を見せて来た。


「先祖の遺産も回収したし、僕は帰るよ」

「二人の死を悲しむのは大いに結構だが、自分を責めるのだけは止めなよ」

「勇者様は何も間違った事をしていないのだから……」


僧侶は片手を上げて去って行く。

何も間違った事をしていないか。

何だか僧侶と話せて心が楽になった気がする。

そう思うとルリ姉達と直ぐにでも会いたくなった。

きっと皆んな心配している。

そう思って山を降りて行くとジャガルが慌てて俺の所へ駆けつけて来た。


「タッティーナ、今すぐこの国を出ますよ」

「荷物は全てまとめてあります」


「急にどうしたの?」


「あの馬鹿がお殿様を三発殴ったのです」


あの馬鹿って……、セツコの事?

走りながらジャガルから詳しく話しを聞くと、メディー達を殺した事は間違いでは無いとお殿様がセツコ達に言ったらしく、それにセツコが激怒したらしい。


「ソルティナから話しを聞いていたので、あの馬鹿の気持ちも分からない事も無いのですが……、まさか殿様を殴るとは……」


いや、ジャガルも国王に喧嘩売ったりしてたからね。

そんな事を思いながらも、何だかスカッとした気分だった。


「タッくんを傷つけ、悲しませ、おまけにメディーちゃん達の事を悪く言う何て、セッちゃん許さないよ」


そう言ってセツコはお殿様を殴ったらしい。

だから三発なのか。

俺を矢で傷つけた分と悲しませた分。

そしてメディー達の分。


「あっ、タッくんやっと来た」


俺は兵士達と戦うセツコ達と合流し、船に乗り込んだ。

放たれる矢も、ルリ姉の魔法やサナの錬金術の道具の前では無意味。

そして俺はセツコにお礼を言うのだった。


「ありがとうセッちゃん」


メディーとジュウベイさんの事を想ってくれて本当にありがとう。

セツコは何でお礼を言われたのか理解していない様子だったけど、俺に笑顔を見せてこう言ってくれた。


「何かよく分かんないけど、タッくんが元気ならそれで良いよ」


第51話 完

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