第49話[大好き]
ジュウベイさんの話しを聞いて、俺は刀を手に立ち尽くしていた。
この国の人達を信頼できないのは分かった。
でも、だからってこのままでいい訳が無いだろう。
「頼むよ」
「ジャガルは国を出てまで俺について来てくれた」
「セツコやサナは子供からの付き合いで、ルリ姉とルタは俺の大切な家族なんだ」
このままこの国に置いてけぼり何て出来る訳無いだろう。
俺の悲しむ顔を見てか、メディーが動き出す。
身振り手振りでジュウベイさんに何かを伝えている。
「ウッウッ」
「メディー、元に戻せと言うのか?」
「ウッ」
伝わったのが嬉しいのか、メディーは満面の笑みで頷いていた。
ジュウベイさんは溜め息を吐くと、市松人形の胸から一匹の蛇を出した。
「これはメディーの髪の蛇、我がからくり仕掛けで力を増すように改造した物だ」
「この蛇をその刀で斬るといい」
「さすれば呪いは解かれるだろう」
「ありがとうございます」
「メディーもありがとうな」
「ウッ」
ジュウベイさんが話していた通り、本当に優しい子何だな。
俺は刀で一匹の蛇を斬った。
するとジュウベイさんの言った通り、ルリ姉達の呪いが解かれて行く。
だが、俺はこの時何も理解していなかった。
呪いを解くとどうなるかを……。
「出たな化け物、皆、弓を放て」
お殿様の合図と共にジュウベイさんとメディーに向かって矢が放たれる。
俺は咄嗟に二人を庇い、背中に矢が刺さる。
「逃げて」
俺はジュウベイさん達にそう言うと、お殿様に向かって止めろと叫ぶ。
「何奴、化け物の仲間か?」
「構わん、奴もろとも討ち取ってくれる」
再び弓矢が放たれる。
その間、お殿様は市松人形を斬り、奥方様はメディーを魔法で燃やしていた。
更に矢で体を貫かれ、メディーはジュウベイさんの所まで歩くと、市松人形に覆い被さる様に倒れた。
「ジュウベイ……、ダイ……スキ」
そう言い残し、息を引き取るメディー。
俺はそれを見て、涙が止まらなかった。
俺の所為だ。
もっと考えて呪いを解くべきだったんだ。
洞窟からお殿様達を運び、それから呪いを解いても遅くは無かった。
「タッティーナ、今治療をするから」
俺はルリ姉の回復魔法を受けながら、自分を責めるのを止めなかった。
「此奴らも魔物の仲間、皆の者、囲め」
「タッくんに怪我を……、セッちゃん許さないよ」
「まさか君と意見が合う何てな、友を傷つけた罪、お前達に償って貰いますよ」
ああ、セツコとジャガルがお殿様達と戦うつもりなのか。
でもいいよ。
そんな事しなくていい。
俺は二人に戦うのを止める様に言うと、立ち上がった。
もう傷は完治している。
それに早くこの場から離れないと……。
本来、ここにはマグマがある筈だ。
それが今は無い。
恐らくジュウベイさんがからくりの道具を使い、止めていたのだろう。
そのジュウベイさんが亡くなった今、どうなるかは分からない。
その事をルリ姉達に話し、俺達は山を後にした。
第49話 完




