表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/311

第46話[ヤクモ・ジュウベイという男前編]

やるしか無い。

そう覚悟を決めた時だった。

不気味な市松人形が、俺達に話し合いで解決する様、提案してきた。


「話し合いで解決?」


「そうじゃ、我らはそなたらにこれ以上攻撃はせん」

「じゃから、そなたらも引き下がってくれぬか?」


何を言っているんだよ。

こっちはルリ姉達が固まって動けないんだぞ。

せめてルリ姉達を元に戻して貰わないと。

そう思い、俺は市松人形にルリ姉達を元に戻す様に頼んだ。

だが……。


「それはできん」

「個別に呪いを解く事は出来ぬのじゃ」

「そなたの仲間の呪いを解いてしまっては、この国の人間達も元に戻ってしまう」

「それだけは絶対に出来ぬ」


そんな……。


「すまぬな、まさか異国の人間が此処に来るとは思わなんだのでな」

「我らも生きるので必死なのじゃよ」


「そんなんで引き下がれる訳無いじゃないかよ」

「生きるので必死?」

「だったら俺が二人の生きる場所を提供してやる」

「だから……」


「先程も言ったが、呪いを解けばこの国の人間達も元に戻ってしまう」

「すまぬが、我はこの国の人間を信用する事は出来ぬのじゃ」

「特にそこの殿様と奥方はな」


何故そこまで信用できないんだ。

俺の問いに市松人形は過去の話しをし始めた。

まだ、肉体があった時の話しを……。


ヤクモ・ジュウベイは変人で有名だった。

彼の家には蜘蛛やゴキブリ、ヤモリやネズミなどが住み着き、誰も彼の家に近づこうとはしなかった。


「ジュウベイ、いい加減、部屋の虫達を駆除したらどうだ?」


「何を馬鹿な事を、皆んな一生懸命生きてんだい」

「可哀想じゃないか」


「可哀想って、この前、金玉を噛まれたから殺したって言ってたじゃないか」


「やられたらやり返す、俺に危害を加えなきゃ、皆んな家族みたいなもんさ」


そう笑いながら、ジュウベイは団子屋の茶を啜っていた。

そんなある日、ジュウベイの自宅に一人の少年が現れた。

弱りきった犬を持ち寄り、この子を助けてくれとお願いする。

少年の頼みに頭を悩ませるジュウベイ。

からくり技師として名を馳せてはいるが、医者じゃ無い。

只、犬を助ける方法はある。

魂を別の物に移動させる装置を作っていたからだ。


(駄目だ)

(体が人形になったら、この犬は悲しむだろう)

「分かった、俺に任せてくれ」


ジュウベイは山奥の作業場に犬を連れて行き、三日三晩、寝ずに看病した。

その甲斐もあって、犬は一命を取り留めるのであった。


「ジュウベイ、ありがとう」

「これお礼」


「馬鹿野郎、ガキから金何か取れるか」

「その金で菓子でも買いな」


そう言うとジュウベイは自宅に帰り、今まで眠れなかった分の睡眠を取るのであった。


第46話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ