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第44話[五つ首の龍]

「勇者殿、もしあの龍を退治するのなら、どうかこの刀をお使い下さい」


そう言って渡される一本の刀。

シュウサイはこれが徹夜で完成させた魂の籠った一振りだと勇者に語った。


「お殿様や奥方様にはよくして貰いました」

「どうか、二人の仇を……」


俺は刀を受け取り、五つ首の龍を討伐すべく山へと向かった。

この刀で龍を倒せるといいんだけど……。

山頂に着くと大きな頭が五つ、そして体が一つの龍の魔物が居た。

俺達の存在に気付くと、龍は五つの頭を下げて、唇を舌で舐め回しながら、それぞれの頭達が女性陣に話しかけていく。


「美味そうな女だな」

「食べちまうぞ〜」


「何か気持ち悪い、えいっ」


セツコの拳が龍の頭を捉える。

するとセツコに続いて、ルリ姉とサナも動いた。

ルリ姉は龍の口の中に氷を作り出し、それが剣山の様に尖り、龍の下顎と上顎から氷柱の様な物が飛び出していく。

そしてサナは大きく開かれた龍の口に錬金術で作った爆弾を放り投げ、それが口の中で爆発する。

早くも五つの頭の内、三つも戦闘不能になってしまい呆気に取られるが、すぐに我に返り、俺はシュウサイさんから託された刀を抜いた。


「覚悟しろよ」


俺は刀を強く握り、龍に向かって行く。

大丈夫、やれる。

シュウサイさんが魂を込めて打ったこの刀なら……。

そう思い、龍の頭目掛け刀を振り下ろした時だった。


「待ってくれ、止めてくれ」


龍が命乞いを始めた。


「誤解なんだ」

「本当は俺達は弱いんだ」


「その図体で何言ってんだよ」


怪しい。

コイツら俺達を騙して生き伸びようとしているのか?


「本当何だ」

「住処を追われ、仕方なく此処で暮らしているんだ」


「何が住処だよ」

「お殿様と奥方様を食って、兵士達も襲った癖に……」


そうだよ。

弱ければお殿様に斬られて終わりじゃないか。

何で生きてんだよ。

コイツがこうして生きているのが何よりの証拠じゃないか。


「ああ、あの二人なら、まだ火口の中に居ると思う」

「我らが可哀想だと言って、火口に向かったからな」

「それに兵士達は脅したら戦わずに逃げて行ったんだ」

「決して襲ってなどおらん」


えっ、そうなの?

つか火口の中って、マグマはどうしたのさ?

疑問に思って尋ねてみると……。


「さあ、分からない」

「恐らく火口の中に居る魔物がマグマをどうにかしたと思うけど……」


俺達は互いに顔を見合わせ、困惑していた。

この龍の言う事を信じていいものか?

確かに火口から見ると、マグマは完全に引いていて、無い様だけど……。


「お願いだ」

「奴を倒してくれたら、我らは大人しく元の住処に帰るから」

「だから頼む」


仕方ない、火口に降りてみるか。

こうして俺達は火口の底に居る魔物と戦う事となった。


第44話 完

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