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第42話[謎の男]

千年も前の話し、とある大きな山に三つ首の龍が現れた。

口から出される炎は山の木々を燃やし、村人に酒を要求しては、そのつまみと称して人間を食う恐ろしい化け物だった。

そんな恐ろしい化け物を倒すべく、国一番の剣豪が化け物退治に名乗り出るも、結果は食われて終わり、今度は数で勝負と言わんばかりに大勢で攻め行ったのだが、吐かれる炎で皆、焼死してしもうた。

倒す術が見つからず、頭を悩ませていた私の祖先でしたが、一人の若者が化け物退治に名乗り出たのです。


「お殿様、どうか私に極上な酒と絶世の美女を授けて下さらぬか」


「何を戯言を……」


そう不満を漏らす祖先に対し、若者は必ず倒して見せますと言い切りおった。

名刀じゃ無く名酒。

高価な鎧では無く美女。

そんな物であの化け物を殺せるなら苦労せんわい。

そう思い、酒と女を盗み去るのでは無いかと疑う祖先に若者はこう言ったのだとか。


「私には両親と妹が居ります」

「倒せなかった暁には両親と妹の首をどうぞ跳ねて下さい」


そうまでして見せる男の覚悟に恐れ入り、祖先は若者が言う様にとびきり美味い酒ととびきり綺麗な女を用意したとか。

此処まで聞いて、タッティーナは思った。

この男、かなりのクズなのでは無いかと……。


「まあ、大体は分かりました」

「酒に酔わせて、首を斬り落としたんでしょ?」


「いや、残念ながらそうではありません」

「記録では三つ首の龍は酒にとても強く、酔い潰れた事が無いと書かれています」


「えっ、じゃあどうやって……」


俺はお姫様の話しを最後まで聞く事にした。


男は朝から飲み歩き、昼過ぎから夜にかけて眠ると、晩御飯を食べて賭博場で深夜まで過ごしたと連れ回された美女が語っておりました。

そして、夜道。

たいまつを持ち、三つ首の龍の住む山に向かうと、男は物腰弱く、三つ首の龍に話しかけたと言う。


「これはこれは流石三つ首の龍の旦那、お顔立ちが凛々しゅうございます」


「何だお前は?」


「へへっ、三つ首の龍の旦那の強さに憧れる、しがない村人でございます」

「ささっ、旦那に美味い酒と美女の踊りをご用意しております」

「どうぞ楽しんで下せぇ」


そう言うと男は盃に酒を並々注ぐと、女に踊る様に指示を出した。

美女の踊りに夢中になりながら、三つ首の龍は酒を飲み始める。

男も三つ首の龍と酒を飲み始める事、一時間。

三つ首の龍は急に血を吐き出し、倒れ始めた。


「貴様、何をした?」


「へへっ、流石は名酒、毒の味も感じさせないってか」

「美女と踊るダンスのお陰で毒のまわりも早くなるってもんよ」


男は三つ首の龍が死ぬのを待ち、戦利品に三つ首の龍の牙を切り持ち帰ると、我が祖先に大量の報酬を要求しおった。


「お嬢さん、付き合わせて悪かったな」

「この報酬の半分はお前さんのだ」

「受け取ってくれ」


男はそう言うと何処へ消えて行ったらしい。

全てを聞き終え、どうにも納得出来ない事がある。

毒殺って……、誰も試さなかったのか?

俺の言葉を聞いて、お姫様も首を傾げていた。


「何分千年前の事ですので……」


「ちなみに今回、毒殺は試されましたか?」


「はい、残念ながら五つ首の龍には毒に耐性があるみたいです」


成る程、ならば俺達は正攻法で行くしか無いな。

大丈夫、セツコやジャガル、ルリ姉も居るし、サナの錬金術の道具だってある。

問題無く倒せるだろう。

そう考えていると、お姫様が戦の前の腹ごしらえと言う事でご飯をご馳走してくれた。


第42話 完

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