第34話[血の気が引く]
俺はオネェの家に優勝賞品のマントを取りに来ていた。
「そのマントは如何なるブレス攻撃や魔法も無効化する事が出来るわ」
それは凄い。
だけど俺に装備出来るのかな?
三つ首の龍の牙の件もあるしな。
必ず俺が装備出来るとは限らないだろう。
そんな事を考えていると、オネェの部屋の鍵が閉まる音が聞こえて来た。
嫌な予感がして振り返ってみると、そこには鼻息を荒げるオネェの姿があった。
「勇者って言ってもまだ子供ね、男の家にホイホイ着いて来ちゃうのだから」
いや、何言ってんの?
「ああ、今回の美少女コンテストもスッゴク良かったわ〜」
「トイレで三回もハッスルしちゃった」
トイレってジャガルとタイシ君、そして俺の時か。
あれハッスルしにトイレ行ってたの?
つか、何とかして逃げないと……。
「三回もハッスルしたなら十分ですよね」
「それじゃ失礼します」
「何言ってんの?」
「帰すわけないじゃない」
オネェに壁ドンされ、道を遮られてしまう。
「と言っても、私も鬼じゃない」
鬼畜だけどな。
「ジャガルって子とタイシって子があなたの身代わりになるのなら、あなたは見逃して上げても良いわ」
プラス外道も追加だな。
「馬鹿にすんなよ」
「そんな事、出来る訳ねーだろ」
「うーん、良いわ」
「男らしくて素敵よ」
くそっ、今思えば前回の大会の優勝者が俺の優勝を喜んだのも、体中変なペイントして出場したのも、全てコイツが原因だったのか。
そりゃそうだよな。
優勝したらコイツに何されるか分からないもんな。
きっと大会に出る様、コイツに脅されていたんだろ。
毎回、街の住人から出た優勝者が次のコンテストに参加しないと、何かと怪しまれてしまうからな。
コイツとしても、それは避けたい筈だ。
俺はその事をオネェに話した。
すると、オネェは不気味に笑いだし、こう答えた。
「大体合っているわ」
「街の人間にこの事を知られると後々厄介だからね」
「だから気をつけているの」
「只、街の人間から出た優勝者は我慢できなくなった時にしか食わないわ」
「毎回食っていたらバレてしまうものね」
くそっ、このゲス野郎。
俺は剣を抜き、オネェに斬りかかった。
するとオネェは人差し指と中指で俺の斬撃を止め、剣の刃を軽々しく折りやがった。
それを見て血の気が引いていくのが分かる。
「あっ、失礼しました」
俺は急いで扉の前に行き、必死になって鍵が掛かった扉を叩く。
「セッちゃん、助けて」
「タッくんがピンチだよ」
「ああ、可愛らしいお尻」
「もう息子がハッスルしているわ」
違う、お前のはモンスターや。
「早く助けてセッちゃん」
「無駄よ」
「誰も来ないわ」
ヤバい、童貞なのに尻穴は卒業とかマジで勘弁して欲しい。
そう思った時だった。
乱暴に扉が壊されて、俺はその衝撃で床に尻餅をついてしまう。
だけどそれでも良い。
セッちゃんが助けに来てくれたのだから……。
そう思っていたが、現れたのはセツコでは無かった。
「よお、勇者」
「また会ったな」
俺は現れた人物を見て、再び血の気が引いていくのだった。
第34話 完




