第33話[優勝は誰の手に?]
ああ、空が青い。
俺の心は豪雨だというのに……。
それにしても鳥の声がよく聞こえるなぁ。
そりゃそうか、誰の歓声も聞こえないんだから。
そんな事を考えていると、セツコ達の声援が聞こえてきた。
「超絶カッコいい、タッくんイェーイ」
「キャー、タッティーナ可愛すぎてお姉ちゃん鼻血が止まらないわー」
「タッくんさんカッコいいですよー」
「お兄ちゃんが一番カッコいい」
「タッティーナさんが一番です」
セツコ、ルリ姉、サナ、ルタ、ソルティナさん。
皆んなありがとう。
感謝の意を表す為に俺は五人に手を振った。
「キャー、タッくん最高、愛してる」
「私も愛してるわ」
「私だって愛してます」
「ルタもお兄ちゃんの事、大好きだよ」
「私もタッティーナさんの事が大好きです」
この時、五人の盛り上がりを近くで見ていた観客達が、ざわつき始めた。
こんな美少女達に愛していると言わせる何て、彼は一体何者なんだ。
やがて、そのざわつきが会場全体にまで広がり、そして観客の一人がこう呟いた。
「よく見るとあの子、カッコよくない?」
その呟きに賛同する者が現れ、いつしか会場はタッティーナへのラブコールで揺れていた。
「どうやらあの子、会場を食って見せる程の怪物だったようね」
「フフフ、いいわ」
「私、ああいう子大好きよ」
「ちょっとお手洗いに行ってくるわね」
審査員のオネェはそう言うと席を立った。
「いや、お見事です」
「それでは次、行ってみましょうか」
「続いては前回優勝者の……」
俺は舞台裏へと帰って行く。
良かった。
何か知らんが、声援を貰えて本当に良かった。
そう思っていると、俺の隣を横切る人物に思わず視線を奪われてしまった。
全身青と緑で色付けし、目の周りは黒く墨を塗っていて、まるで黒い涙を流しているかの様に墨が垂れていた。
「いや……、ゆう……、したくない」
何言っているのか上手く聞き取れなかったが、あれで優勝できるのか?
悲鳴が起きるんじゃないか?
案の定、彼が舞台に立つと観客席から悲鳴が巻き起こった。
そして、コンテストは終わり、結果発表を待つ事に。
コンテストの集計は観客の投票と審査員の得点で順位が決まるらしい。
そして集計が終わり、順位発表の為に参加者全員が舞台に上がる事に。
皆んなが手を合わせ祈っている中、司会者が三位から順位発表を始める。
「三位、タイシさん、得点は百七十五点です」
「予想以上に観客票が集まりませんでしたね〜、いや〜残念」
タイシ君は三位か。
あれだけ黄色い声援を受けていたけど、観客票はジャガルに殆ど行ったのかな?
「続いて二位の発表です、二位は得点を二百二十二点獲得したジャガルさん」
「観客、審査員共に良い点を獲得したけど一位には及ばず、ですが最高の美男子でしたよ」
ジャガルが二位。
じゃあ一位は?
「そして映えある一位はタッティーナさん」
「得点は二百五十点です」
「審査員の得点は全員一致の満点、それに加え観客票も獲得し、見事優勝を果たしました」
「おめでとうございます」
「よっしゃあああぁぁぁ」
俺の隣で体が青緑の男性が叫び出す。
あの、優勝したの俺なんですけど?
喜び、ダンスを踊り出す青緑はスタッフに捕まり、強制的に舞台から下されて行った。
「気を取り直してタッティーナさん、今のお気持ちは?」
「嬉しいです」
「ありがとうございます」
「他に何かありますか?」
あっ、そうだ。
着物について聞いておこう。
そう思い、着物を着ている女性が居る国を知らないかと尋ねてみた。
すると審査員のオネェが反応し口を開いた。
「あの国の事なら知っているわ」
「そうね、優勝賞品や賞状、トロフィー何かも渡したいから一度私の家に来て貰うわ」
こうして俺はオネェの家に行く事になった。
第33話 完




