第25話[称号]
俺はネロット大食いチャンピオンに三つ首の龍の牙を渡し、剣を作ってくれる様に頼んだ。
言い方は悪いかもしれないが、正直生きているかどうか分からない人を捜すより、今確実に剣を作ってくれる人に渡した方がいい。
行って居なかったじゃ、また此処まで戻らないといけないしな。
「確かに預かったぜ」
「三日後には必ず出来ているから取りに来な」
「それと銀貨五十枚も用意しとけよ」
三日後か、王様に挨拶して、適当に観光でもして過ごそうかな。
そんな事を考えながら、俺達はお城に向かった。
王様と話しをし、晩御飯をご馳走になり、俺達はそのまま宿屋へ帰って体を休めた。
翌日、俺はセツコにネロット大食いチャンピオンの所に行こうと誘われる。
「ねぇ、行こうよ〜」
「行っても邪魔になるだけだろ」
何故だかわからないけど、どうやらセツコはネロット大食いチャンピオンに懐いているようだった。
「ヤダッ、行きたい」
はぁ、こうなってしまっては行くまで五月蝿いだろう。
仕方ない、剣作りがどんな物か見学するのも良いかもしれないな。
少しだけセツコに付き合うか。
そう思い、俺とセツコはネロット大食いチャンピオンの所へ向かった。
「見学?」
「別にいいが、大して面白くないぞ」
「面白くなくてもいいんです」
「お邪魔じゃなければ少し見学させて頂けませんか?」
「ああ、あんたらがそれで良いのなら、私は別に構わないよ」
こうして俺達はネロット大食いチャンピオンの仕事を見学させて貰う事になった。
そう言えば彼女の名前は何て言うんだ?
気になり、作業中の彼女に名前を尋ねてみる事に。
「私の名前はキミだよ」
キミさんって言うのか。
覚えやすいな。
「そういや、刀を持った寿司屋の店主みたいな髪型の人間が多く居る島国に行った事はあるか?」
「いえ、無いですけど……」
「そうか、ならいいや」
もしかして、兄弟子の安否が気になっているのかな?
それにしても、刀を持った寿司屋の店主みたいな髪型の人間が多く居る島国ねぇ、まんま日本じゃないか。
江戸時代辺りかな?
まあ、此処は異世界で過去の世界じゃないから日本と違う所があるのだろうけど、侍は素直に会ってみたい。
「あの、次の目的地にそこへ向かおうと思うのですが……」
「本当か?」
彼女は作業を止めて、とびきりの笑顔を向けて来た。
「ええ、野蛮な人が居なければ……」
辻斬りとか居るなら考え物だもんな……。
「大丈夫だ」
「寿司屋の店主も兄弟子も言っていたが、あの国の人間は比較的に温厚だ」
へぇ、そうなんだ。
「なら大丈夫ですね」
「兄弟子さんに早く帰って来いと伝えておきますね」
キミさんは顔を赤くし、作業を再開する。
「別に、そんな待って何か……」
分かりやすい性格しているな。
まあ、いいや。
取り敢えず生きていたら伝えて置くか。
「そうだ、お礼って訳じゃないがお前にネロット大食いチャンピオンの称号をくれてやるよ」
えっ、要らないです。
「いいなタッくん」
「セッちゃんも何か称号が欲しいよ」
なら俺のネロット大食いチャンピオンの称号をあげるよ。
つか、称号より剣代を値下げしてくれる方が凄くありがたいのだが……。
「セッちゃんだっけか?」
「お前には国一番の美少女の称号をくれてやる」
「本当?」
「セッちゃん嬉しい」
非公式で国一番の美少女を名乗れば只の痛い奴じゃねーか。
後でセツコにその称号を名乗るのを止めさせねば……。
俺はそんな事を考えながら溜め息を吐くのだった。
第25話 完




