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第20話[帰宅]

努力は必ず報われる。

その言葉を信じて日々の特訓を頑張ろうと決意したが……。

フッ、数日も経たずに腕立て伏せを百二十もこなしてしまうとは自分の才能が恐ろしい。

などとジョーダンを言ってはみたものの、限界だった百回を超えた事は素直に嬉しい。

目標の五百まではまだまだだが、俄然やる気が湧いて来た。


「凄いよタッくん」

「やっぱりタッくんは勇者だね」


そう言って笑顔を向けて話すセツコに俺は一言いいたい。

あの、重りをつけて腕立てしながら言うの止めて貰っていいですか?

何か隣で凄い数こなされて、切ないんですけど。

俺が「い〜ち」って言っている間にセツコは「五、六、七……」だもん、かなり辛かったわ。

そんな事を考えていると、兵士が慌てて俺達の所へやって来た。


「大変です勇者様」


息を切らす兵士に何があったのか尋ねると、兵士は顔を青くしながらキョウギクが逃げた事を話し始めた。


昨夜、見張りの兵士達が何者かに眠らされ、そしてその何者かがキョウギクの牢屋の鍵を開け、キョウギクを牢屋から逃したらしい。

お姫様はキョウギクを世話していた兵士達の仕業だと言い出し、その者を処刑すると、今騒ぎ立てているらしく、何とかその場を収める様、俺の力を借りに来たのだとか……。

取り敢えず俺は皆んなを集め、お姫様の所へ向かう事にする。


「これは勇者様、お仲間を引き連れて私に何か御用ですか?」


「ええ、お姫様が兵士を処刑すると聞いて駆けつて来ました」


「そうですか、勇者様も処刑をご覧になりたいと?」

「そういう事ですか?」


いや、全然違うけど。

つか人が死ぬ所何て見たくないよ。


「いや、まだ兵士がやったと言う証拠も無いですし、少し早計ではと思いまして……」


俺の意見にルリ姉とサナが賛同してくれる。


「そうね」

「まだシグラも見つかって無いものね」


「ええ、シグラがやったと考えるのが普通かと……」


そんな二人の言葉にお姫様が反論する。


「兵士を眠らせる程の技を持っているのなら、あの時の戦いで何故それを使わなかったのですか?」


確かにお姫様の言う通りだが、シグラもシグラで相手を見て戦っていたんじゃないかな。

眠らせるのもレベルの低い相手にしか通用しないとか?

あの様子じゃ、魔王軍幹部は俺が弱い事に気づいて無いみたいだったし、余計な魔力を消費したく無かったとか、そんな感じじゃないだろうか。

そんな事を考えながら、俺はお姫様に意見した。


「勇者には効かないと思い使わなかったとか?」


「そんな話し、信じられるとでも?」


お姫様の鋭い眼差し、俺は思わず目を逸らしてしまった。

そんな中、セツコがお姫様に話しかける。


「まあまあ、キョウギクならまたセッちゃんがやっつけてあげるから」

「だからセッちゃんに免じて許してあげて」


笑顔のセツコ。

そうだ。

そもそもキョウギクを捕まえたのは俺達のお陰だ。

まあ、主にキョウギクを弱らせたジャガルのお陰だけど……。

それなのにお姫様に、とやかく言われたくない。

そう思い反論しようとした時だった。


「許すか馬鹿」


お姫様のその言葉で俺は黙り込んでしまう。

そんな中、セツコがお城の床めがけ拳を振り下ろした。


「フン」


床に大きな穴を開け、セツコはお姫様に言う。


「許してくれるよね?」


お姫様の顔が青くなっていく。

流石セツコだ。

王族相手でも脅しにかかる何て……。

そんな時だった。

背後から大きな笑い声が聞こえ、二人の男女が玉座に上がる。


「これは中々、勇ましい娘さんじゃな」

「それより我が娘よ帰って早々、処刑と聞いて肝が冷えたぞ」


「本当ですわ」

「王代行とは言え、あなたは一国の姫」

「処刑何て事、勝手に行える訳、無いじゃないですか」


「お父様、お母様……」


お姫様から王冠を奪い、それを冠る王様。

そして今回の処刑騒動を収めてくれた。


「兵士達には苦労と不安をかけてしまったな」

「本当に申し訳ない」


「いえそんな……、頭をお上げください」


「勇者殿、留守中に魔物達から我が国を守って下さり感謝します」

「どうかお礼がしたいので、我が部屋に来て頂けないでしょうか」

「勇者殿のお仲間さん達もどうぞ此方へ」


こうして俺達は王様の部屋へ向かう事となった。


第20話 完

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