第22話[藁人形]
悲劇は突然やって来た。
あの優しかった両親と姉が突然、俺の部屋にやって来たのだ。
「タッティーナいい加減にし……、おエェぇ」
父さんどうだ、俺の部屋は臭かろう。
「幾らセッちゃんの大切な……、おエェぇ」
母さん、誤解だよ。
セツコの大切な贈り物何かじゃないよ。
「タッティーナ、流石にコレはちょっと……」
「周りから異臭のする家だと言われ白い目で見られているし……」
おや?
ルリ姉は平気なんだね。
そうか魔法で嗅覚をシャットダウンしているんだね。
ハハハ、本当に魔法って便利だな。
俺はこの地獄の部屋で寝起きしているって言うのに……。
つか、セツコもセツコだ。
藁人形の件、セツコの両親がキツく言ってただろ。
なのにあの馬鹿は「パパとママには内緒だよ」とか言って懲りずに持って来やがる。
全てはあの馬鹿が悪い。
「駄目だ、もう我慢ならん」
「タッティーナ、悪いがこの藁人形燃やしてしまうぞ」
「駄目だよお父さん」
「俺、呪われて死んじゃうよ」
「何が呪いだ」
「そんなのある訳無いだろう」
「そうよタッティーナ、呪いなんてある訳無いわ」
いや父さん母さん、そうは言ってもですね……。
「大丈夫よタッティーナ」
「お姉ちゃんが呪いから守ってあげるわ」
ルリ姉、どうやって呪いから守るんだよ。
父は半ば強引に藁人形を部屋から持ち出して、庭に置き火をつける。
すごい勢いで燃える数十体の藁人形達……。
大丈夫だよな?
何も起きないよな?
その頃、タッティーナ宅の近所の広場では子供が魔法で遊んでいた。
「喰らえ、火炎玉」
「なんの、バリア」
バリアに弾かれた火炎玉は綺麗に弧を描き、タッティーナの頭上に落ちていく。
全身火だるまになる息子を見て、タッティーナの両親は顔を青くし、恐怖からか尻餅をついていた。
「水の精霊私に力を、ウォルナァペペルター」
ルリ姉の水魔法のおかげで俺は命拾いした。
ルリ姉の治癒魔法を受け、回復した俺はセツコの家へ乗り込んだ。
全身びしょ濡れで服は焦げて所々穴が空いている。
そんな俺の格好を見て、セツコの両親が心配し声をかけて来る中、俺はセツコに土下座した。
「勘弁して下さい」
「もう藁人形を贈らないで下さい」
「本当に勘弁して下さい」
俺の涙ながらの訴えに、セツコの両親は鬼の様な形相をし、セツコを怒鳴りつけていた。
そんなセツコの両親が神様の様に見えてしまう。
後日、セツコの両親は俺の家に謝りに来て、セツコが藁人形を持って来る事は無くなった。
第22話 完