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第9話[皆んなからの愛され者]

時は少し遡り、避難所では勇者達が負傷した兵士達の看病をしていた。


「あああああ、すみません薬を溢してしまいました」


「ああ、大丈夫です」

「また作りますから」


そう言ってタイシ君はお城に向かう身支度を済ませる。

何でもお城には薬を作る環境が整っているらしく、酒場を避難所にしたこの場所で作るより遥かに効率よく薬が作れるらしい。


「私のせいで薬が足りなくなったのですか?」


「いえ、予想以上に負傷者が多くて、元から足らなかったんで心配しなくて大丈夫ですよ」


そう言ってタイシ君は涙目のソルティナさんを慰めて、俺に「後は任せるね」と言って避難所から出て行った。

よし任された以上、頑張らないとな。

分からない事があれば助っ人に来ている神父様やシスターに聞けばいいし、出来る事を頑張りますか。

そう気合いを入れていると、ソルティナさんは負傷した兵士にタライの水をぶっかけていた。

ソルティナさんが必死に兵士に謝る中、俺は慌てて乾いたタオルを用意して兵士の体を拭いていく。

そんな中、水をかけられた兵士は笑い出しソルティナさんに話しかけた。


「相変わらずだな」


兵士のその言葉に周りの兵士達も笑いながら文句を言い始めた。


「全く、ソルティナのせいでゆっくり休めやしない」


「確かにな」

「つか負傷者に水をかけるとか最高に笑えるぜ」


「ううう、すみません〜」


そう言って再び涙目になるソルティナさんだったが、別に兵士達は彼女を責めている訳では無いと俺は感じていた。

それどころか、空気が明るくなった様に感じる。

皆んなソルティナさんの事が大好きなんだな。

そんな時だった。

避難所の奥から小さな子供達が現れた。


「あー、ソルちゃんが居る」


子供達がソルティナさんに抱きつく中、俺は何故此処に子供達が居るのか神父様に尋ねていた。


「実はこの子達は親と逸れた迷子達でして……」

「お城には避難しようと国民達が押し寄せていますし、落ち着くまで此方で預かろうと思いまして」


成る程、だから此処に子供達が……。

それにしてもソルティナさん、凄い人気だな。

子供達皆んな、懐いてるよ。


「勇者様、ソルティナをどうか頼みます」

「あいつはドジだから色々と迷惑をかけると思いますが、根は真面目で優しい良い子なんです」


そう言って兵士は笑いながら、ソルティナさんについて少し話しをしてくれた。

困っている人が居たら見過ごせない。

そういった性格からか、ソルティナさんはよく困っている人のお手伝いをしているらしい。

でも結果は最悪で、ドジって色々な人に迷惑をかけているらしい。

それでも一生懸命なのは国民達に伝わり、彼女は国民に大人気だとか。


「あいつは我が国の誇りです」

「皆んなに光を与えてくれる」

「正真正銘、光の騎士なんです」

「只、戦闘面では命の危険があるので、誰一人彼女とは組みたがらないんですがね……」


分かる。

俺も何度か殺されかけた。

そんな事を思っていると、一人の重傷患者が目を覚まし叫び始めた。

子供達は怯え、ソルティナさんにしがみつく。


「早く逃げないと……」

「早く逃げないと殺されちまう」


布団から這いつくばって逃げる兵士を見て、明るかった空気が一気に凍りついた。


「おい落ち着け、戦場には勇者様の仲間達が居る」

「この目で見てきたが、凄かったんだぞ勇者様の仲間……」


兵士の言葉を遮る様に重傷患者の兵士が叫ぶ。


「地下の下水道がお前の言う戦場なのか?」


下水道ってまさか、魔物達が下水道から攻めて来ているって事か?


「ああ、奴が来る」

「奴が来る前に逃げないと……」


体を動かす度に痛むだろうに、それを気にもせず何とか逃げようとする彼の姿を見てルタが怯え、俺にしがみつく。

俺はそんなルタの頭を撫でながら、一体誰が来るんだと内心怯えていた。

そんな時だった。

酒場の扉が開けれて、数匹の魔物を引き連れた得体の知れない魔物が俺達の前に現れた。


第9話 完

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