第3部第1話[光の騎士]
サルナミア王国の王様から話しを聞いて、俺達は大陸を移動して、光の騎士が住むシトスフレア王国に向かっていた。
噂では魔物の攻撃を無効化するというチート能力を持っているとか。
くぅ〜、羨ましいぜ。
俺もそんな能力があったらどれだけ活躍した事か。
「はわわ、もう魔王を倒しちゃったの?」
「流石タッくん、セッちゃん達、活躍出来なかったよ〜」
「だろ?」
何て言って優越感に浸ったりして調子に乗りたかったぜ。
そんな妄想を抱きながら、俺達はシトスフレア王国に着いた。
宿を取り、早速王様に挨拶しに向かうのだが……。
「よくぞ参られた勇者とその仲間達よ」
玉座に座るお姫様を見て、嫌な予感がして来た。
過去、玉座にお姫様が座っている中で何か良い事があっただろうか。
何かロクな目にしか遭ってない様な気がする。
「さて勇者よ」
「早速だが、我が国が誇る騎士ソルティナを仲間に加えてはくれんか」
えっ、我が国が誇るってまさか光の騎士の事?
凄い、光の騎士が仲間に加わってくれるなら鬼に金棒じゃねーか。
「ソルティナ、前へ」
「はい、勇者様お初にお目にかかります」
「私の名はソルティナ・マクランドと申します」
「どうかお見知り置きを」
そう言って高そうな鎧を着た少女が現れた。
彼女が光の騎士なのか?
何か想像していた人と違うなぁ。
屈強な熟練の騎士を想像してたんだけど、まあいいや。
早速彼女を仲間に加えようと声をかけようとした時だった。
周りがザワつき始め、何だか嫌な予感がして来た。
そして一人の渋いオジ様の騎士がお姫様に意見する。
「姫、お言葉ですがソルティナはまだ未熟」
「勇者様達の足手纏いになります」
「バッカそんな事、今言うでない」
あっ、何だか凄く嫌な予感がして来た。
「あの、ソルティナさんは光の騎士何ですよね?」
「噂では魔物の攻撃を無効化できるとか……」
「無効化できてもなぁ」
「アレだと意味がないっていうか……」
兵士達のヒソヒソ話しが俺の耳に聞こえてくる。
アレって何?
何かあるの?
「ええい黙らんか馬鹿共が、勇者よ良く聞くがいい」
「ソルティナは光の騎士じゃ、魔物の攻撃を無効化する最強の騎士じゃ」
「姫様、私の事をそんな風に思ってくださっていたなんて……」
「普段は無能と言って罵っていたのに……、アレは愛情の裏返しだったのですね」
「なっ……、そうじゃ、面と向かって褒めるのは照れ臭いからのう」
すっごい棒読みだったんですけど……。
えっ、何?
このソルティナさんには何かあるの?
俺はそう思い、ジャガルに頼んでソルティナさんと手合わせする様に頼んだ。
すると……。
「馬鹿者、こんな所で戦ったら危ないじゃろが」
お姫様に怒鳴られた。
「ご心配無くお姫様、全力で戦いはしないので危険はないかと」
「何を言う、ソルティナを馬鹿にするなよ」
「ソルティナはなぁ……、あっ……」
咄嗟に口を塞ぐお姫様。
そんなお姫様を見て何かあるのだと俺達は確信した。
お姫様も観念したのか、彼女が究極のドジっ子だと俺達に話し始めた。
ソルティナは光に包まれて産まれて来た。
彼女を取り上げた助産師の話しでは眩しくて赤ん坊の姿が見えなかったと言っておった。
そんな彼女も一歳になり立って歩く様になって、二歳で言葉が話せる様になり、三歳で剣を振るう様になったとか。
そんな彼女を見て、我が国は光の騎士だと言って持ち上げ可愛がっていた。
だが、彼女の逸話ばかり目がいってしまい肝心な事を私達は見逃していた。
彼女は食事の際食べ物をよく落とし、洗い物をすれば皿をよく割っていた。
他にも買い物に行けばよく転び、買い忘れも多く、部屋の掃除をすれば逆に部屋を汚す。
彼女はドジっ子だったのだ。
そんな彼女が騎士団に入団し、魔物を狩っていたある日の事、魔物の攻撃が彼女に通じないと分かったと同時に彼女の攻撃も魔物に通じない事が分かったのだ。
「魔物に通じないとは?」
「厳密に言えば当たらないと言った方がいいか」
ソルティナはいざ攻撃に移ると、持ち前のドジっ子が災いしてか、彼女の攻撃が全部味方に当たってしまうのだ。
「攻撃が味方に当たる?」
お姫様はそれ以上、何も言わなかった。
その代わりに「気になるなら仲間にしてみんか?」と言って勧めてきやがった。
「いや、大丈夫です」
そう言って断ると……。
「そうですよね」
「私何か居ても迷惑ですよね」
「あっ、すみません」
「何だか泣けてきて……」
えっ……。
「ごめんなさい」
「役立たずの私が悪いのに……」
心が痛む。
お願いだから泣かないで、ああもう仕方ない。
「彼女を仲間に加えます」
「誠か、でかしたぞソルティナ」
「はい、ありがとうございます勇者様」
涙を拭い笑う彼女を見て俺は安堵する。
まあ何はともあれ、彼女が笑ってくれるのならそれでいいよ。
どうせ俺も役立たずだし……。
第1話 完




