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第75話[責任]

「可哀想に、こんな姿になっても神を敬う心を持っているのか」


僧侶が現れてからは少女は大人しく、俺達を襲う事もしなかった。

僧侶の言葉の意味、彼女はこんな姿になる前の記憶を持っているのか?

だから神に近い僧侶に縋っているのだろうか……。

そういえば、この洞窟には僧侶が作った物がある。

現に万能薬だってあった。

だから彼女はこの洞窟を住処にしているのか?

救われたいから……。


「さて、勇者様」

「僕は彼女の中にある悪しき血を浄化する事ができる」

「僕の先祖が作ったその秘薬を使い、彼女を助けるのも良いだろう」

「だけど君に彼女を本当の意味で救う事はできるのかい?」


彼女は罪人だ。

魔物の血を抜いてもそれは変わらない。


「大切な娘を殺されて怒りに震える王様を君は説得する事ができるのかい?」


それは……。

思わず彼から目を逸らす。

ただ救いたいから救うじゃ駄目なんだ。

それじゃ誰も救えない。

そして、俺は王様を説得する事ができない。

結局、俺は勇者でありながら何もできない無能なんだと思い知らされる。


「どうやら出来ないみたいだね」

「ならばいっその事、彼女をこの場で殺そう」

「苦しみを与えず、安らかに眠れる様に僕の手で……」


「待って下さい」


不意にお姫様が叫んだ。

だがお姫様の言葉は僧侶に届いていないらしく、俺は慌ててお姫様の言葉を代弁する。


「私がお父様を説得します」

「ですから彼女を殺さないで下さい」


「そうか、この洞窟には僕の先祖が作った別れの雫があるんだったね」

「それにしても……、自分を殺した人間を救おうだなんて変わっている」

「さあ、今から彼女の中にある悪しき血を浄化させる」

「本当に彼女を救いたいのなら、浄化された後直ぐにその秘薬を飲ませてくれ」


僧侶はそう言うと少女の頭に手を置いた。

俺達は少女の側でスタンバイし「今だ」の合図と共に彼女に秘薬を飲ませ、回復するのを待った。

彼女の体のアザは綺麗に消えていく。

だが彼女は目を覚まそうとしなかった。


「時期に目覚めるだろう」

「本当は先祖が残した遺産を回収するつもりで来たのだが……」


彼は大きな溜息を吐くと続けてこう言った。


「これも神のお導きかな?」

「君達に先祖が残した遺産をあげるよ」

「僕は他の遺産が無いか探し回らないといけないので、そろそろ失礼するね」


そう言うと僧侶は去って行った。

そしてアルバも別れの雫を俺達に渡すと海賊のお宝を盗み、去って行った。


「何ですコレ?」


俺はサナ達に事情を説明し、別れの雫について話した。

幽霊を信じないサナだったが、ルリ姉の説得もあり、少女が目覚めたらもう一度お城へ向かう事にする。


「それよりジャガルとルタは?」


「流石に大人数で向かう訳には行きませんからお留守番をして貰ってます」


そうか。

なら早く合流しないとな。

そんな事を考えながら俺達は少女を宿屋へ運ぶのだった。


第75話 完



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