第70話[チン黙]
とりあえず落ち着きを取り戻した俺と彼女は向かい合って正座をして座る。
「あの……、粗末な物を見せてしまい申し訳ありませんでした」
「いえ、私の方こそ急に現れてしまい申し訳ないです」
その後、沈黙が続く。
うっ、気まずい。
チンを見られただけに沈黙ってか、やかましいわ。
などとノリツッコミを言おうと思ったが、人見知りの俺がそんな恥ずかしい事を言える訳も無く、更に沈黙が続いていく。
この人は幽霊なのだろうか?
見た感じメニの様に姿が薄い。
この世界で転生して俺は霊感でも手に入れたのか?
何でこうも幽霊を見てしまうのだろうか。
しかもトイレしている時に……。
はあ、早く消えてくれないかな。
俺は居心地の悪さに耐えながら、そんな事を考えていると目の前の幽霊が俺に話しかけて来た。
「あの、私のお父……、いえトランラッタ国の王様を許してあげて下さい」
「はあ、別に怒ってはいませんが……」
「ホントですか」
明るい笑顔の彼女に俺は頷いて応えた。
「良かったです」
「いつもお父様が……、あっ、トランラッタ……」
「別に言い直さなくていいですよ」
先程からお父様と言っているけど彼女はこの国のお姫様なのかな?
まだ若いのに病気か何かで死んでしまったのだろうか?
そんな事を考えながら、俺は彼女の話しに耳を傾けた。
どうやら彼女の話しを聞くには昔はこんなに厳しく無かったそうだ。
リヘロの件も被害者が納得するのなら罪に問われる事は無いらしい。
仮に罪になっても、両手を切断する様な極刑にはならない事も教えてくれた。
「ならどうして王様はリヘロを許してくれないんだ?」
「それは……」
彼女は暗い表情を浮かべながら過去について語り始めるのだった。
第70話 完




