第19話[デート]
「タッくん、スライムから助けてあげたんだからデートしよ」
朝から何言ってんだコイツ。
俺はそう思い、部屋のドアを閉めようと思ったが、止めた。
どうせ、そのバッグには脅し用のダイヤが入っているんだろ。
第一、部屋で暴れられたら嫁に傷がつくかもしれん。
ここは平和的にデートして、さっさと帰ろう。
「いいの?」
「やったぁ、タッくん大好き」
「あっ、抱きつかないでね」
「体が拒否反応起こして倒れちゃうから」
「セッちゃんもデートできなくなるの嫌だよね?」
「うん、分かった」
よし、これでいい。
はぁ、行きたくないデートに行ってきます赤奈ちゃん。
時間的にどこも開いてない。
全く、何で朝なんだよ。
せめて昼飯食った後で来いよ。
「タッくん、見てみて、お魚さんだよ」
「そうだね」
「美味しそうだね」
「あっ、牛さんだ」
「草食べるかな?」
「そうだね」
「美味しそうだね」
「えへへ、可愛いセッちゃんだよ」
「そうだね」
「不味そうだね」
何故か殴られた。
人間何て食べられないんだから美味しそう何て言わないだろ。
全く、セツコは良く分からん奴だ。
「えへへ、どっちの服がいいかな?」
「セッちゃんは女の子らしいから、そっちのピンクの奴がいいよ」
こういうのは大抵褒めとけばいいだろう。
ましてやセッちゃんはお馬鹿さんなんだから。
「女の子らしい……、も〜、タッくんったら」
「でも、こっちの青いのもいいな〜」
「どれどれ、ん〜、確かに青も素敵だね」
「よし、そっちは俺が買ってあげるよ」
まあ、母さんがくれた金なんだけどね。
セツコも満足しているみたいだし、昼飯食って帰るか。
こうして俺はデートを早急に終わらせ、嫁との時間を確保した。
「はぁ〜、やっぱり赤奈ちゃんは可愛いなぁ〜」
第19話 完