第65話[結婚]
気を失ったタッティーナの元にルリとルタが駆け寄り抱きしめる。
そんな中、騎士団長は鼻血を垂らしながら、片膝をついて頭を下げた。
「勇者様のお姉様、無礼を働き申し訳ありませんでした」
そう言うと騎士団長は近場にいる兵士にタッティーナの治療を頼むが、ルリはそれを断った。
「私が……、治すからいい」
「そうですか」
「ではせめて人形でも……」
「誰か直せる者はいませんか?」
騎士団長の問いに魔導騎士の一人が手を上げた。
「ではお願いします」
「はい」
「それとお詫びと言ってはアレですがその少女の件、私からも陛下にお願いしてみます」
そう言うと騎士団長は仲間を連れて去って行った。
目を覚ますとルリ姉とルタの顔があった。
心配させて申し訳ないと思いながらも正直、泣きたいのはこっちの方だった。
俺の赤奈ちゃんフィギュアが……。
そう思っているとサナが赤奈ちゃんフィギュアを渡してくれた。
綺麗に直っている。
どうやら騎士団長が仲間に直すように命じてくれたみたいだ。
他にもリヘロの件を王様に頼んでくれるみたいだし、良かった良かった。
「あの、タッくんさん」
「あれだけされて怒ってないんですか?」
「んっ、ああ別に怒ってないよ」
「赤奈ちゃんは綺麗に直ったし、リヘロの件も話してくれるんだろ?」
「ならもういいさ、いつまでも腹を立てても仕方ないしな」
「はあ、そうですか……」
いや〜、それにしても凄いな魔法。
完全に直ってるよ。
まるで新品みたいだ。
俺が嬉しそうに赤奈ちゃんフィギュアを眺めているとセツコが顔を赤くしてやって来た。
「タッくん、セッちゃんの為にありがとう」
んっ、何が?
「セッちゃんの仇を取る為にそんなボロボロになるまで……」
どうやらセツコは何か誤解をしている様だ。
「セッちゃん、タッくんの愛を感じたよ」
このまま誤解を解こうとも思ったが、セツコに「またまたぁ〜、タッくんの恥ずかしがり屋さん」などと馬鹿にされるのが安易に想像できた為、俺は適当な返事をしてその場を流す事にした。
すると……。
「タッくん愛してるよ〜」
「ちょっ、危ない」
俺は慌てて避け、セツコを交わす。
「ちょっとセッちゃん、お触り禁止」
「ブー、両想いなのに」
俺は返答に困り、ルリ姉に助けを求めた。
ルリ姉は溜め息を吐くと、セツコの所へ向かい適当な嘘をつく。
「いいセッちゃん、結婚前の女性が必要以上に男の人に触れては駄目なのよ」
「どうして?」
「男性の魔力に触れ続けると男になってしまうからよ」
それを聞いたセツコの顔が一瞬で青ざめる。
「ハハハ、そんなの嘘だよ」
「だって結婚してたら良い何て訳分かんないもの」
「そんな事無いわ、結婚はいわゆる儀式」
「神様にこれからこの人と人生を共にする誓いと同時に触れても男にならない加護を授かるの」
「だから式は教会であげるでしょ」
ルリ姉の適当な嘘に騙されたセツコは俺にこう言って来た。
「今すぐ結婚しよう」
へっ?
「今すぐ結婚するんだよタッくん」
無茶言うなよ。
まさかこんな返しが来るとは思わなかったのか、ルリ姉も混乱し始めた。
セツコのピュアさがルリ姉の嘘を上回る瞬間だった……。
「セッちゃんさん落ち着いて下さい」
「十五じゃまだ結婚できませんよ」
「どうして?」
「肉体が神様の加護に耐えきれないからです」
「そうなんだ」
サナのフォローのお陰で何とかセツコの暴走を止める事ができた。
さて、このまま進んで王様にでも会いに行くとしますか。
「ちょっとお客さん」
「はい?」
「馬車の修理費は頂けるんでしょうか?」
「あの騒動で馬まで逃げてしまって困ってるんですよ」
「……」
第65話 完




